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【とんま村の物語】🌻第15話 解説:地域通貨型ベーシックインカムの全体像ー生活のためのお金を、すべての個人へ毎月届ける

🍃物語本文

第15話:「はじめてのベーシックインカム~毎月くばられる、暮らしのためのお金~


はじめに

第15話では、とんま村に、新しいお金「ぷるり〜ん」が登場しました。

では、もし、このようなお金が現実の社会にあったら、暮らしはどう変わるのでしょうか。

たとえば、月のはじめ。

生活のために使えるお金が、自分のもとへ届く。

今月の食費をどう削るか。
交通費をどこまで抑えるか。
家族のケアを、あと何日先送りするか。

毎月、同じ不安だけで一日が埋まらなくなる。

少し先のことを考えられる。
家族との時間を持てる。
学び直せる。
小さな挑戦を始められる。

生活の安心が、自由な選択を支える。

多段階ベーシックインカム(Multi-layered Basic Income、MBI)は、そのために、お金の入口から社会を組み替える構想です。

その最も基本となる層を、この記事では、
**ベーシックインカムで配られる複数の地域通貨(L1)**と呼びます。

安心して暮らすためのお金を、すべての個人へ毎月届ける。

そのお金を、地域の暮らしにつなぎ、地域の中で循環させる。

生きるためのお金の入口を、社会の中に新しく置きます。


第15話から第17話までの解説と、番外編

ここから、第15話、第16話、第17話の解説では、この仕組みを三回に分けて見ていきます。

桃の介:
毎月お金が届くなら、普通の給付金と同じですか?

ゆん吉:
既存の円を集めて配り直すだけではない。
生活のためのお金を、新しい地域通貨として毎月届ける。
そこが出発点だ。


多段階ベーシックインカム(MBI)の全体像

個人へお金を届けるだけでは、地域間の偏在は残る。
国内の偏在を整えても、為替、資源価格、基軸通貨、資本移動の影響は残り、異なる国家間での富の偏在の問題は解決しない。

私は日本だけでなく世界の全ての人が安心できる仕組みを考えたい。
それが多段階ベーシックインカムMulti-layered Basic Income、MBI)の発想の根本であり、そのためにMBIは三つの層を構想しています。

  1. 生活者の足元を支える(layer1、L1と言います)

  2. 地域間の偏在をならす(layer2、L2)

  3. 国家間の偏在と、国際通貨秩序のショックを補完する(layer3、L3)

個人、地域、世界を、一つの地図の上でつなぎごうとするものです。

<今回の記事の地図>


第1章 L1(個人へ毎月給付する生活基盤マネー)の全体像

1-1. 北海道に住む人は、月のはじめに、10万ドサンコが届く?

少し、具体的に想像してください。

北海道で暮らしているとします。

月のはじめ。
給与や年金が、いつものように円で入る。

そのうえで、北海道の中で使える、もう一つのお金が届く。

ここでは、この地域通貨を、仮に 「ドサンコ」 と呼びます。

大人であれば、毎月のはじめに10万ドサンコ。
1ドサンコ=1円相当です。

ドサンコは、北海道で暮らす人が、安心して生活するために受け取るお金です。

所得の高い人も、低い人も。
働いている人も、子育て中の人も。
介護をしている人も、いま少し立ち止まっている人も。

一人ひとりへ、毎月届きます。

地域通貨として給付される、ベーシックインカムです。

近所の店で、食材や日用品を買う。
地域のバスに乗る。
持病の薬を、我慢せずにもらいに行く。
すり減った子どもの靴を新調する。
離れて暮らす親の見守りサービスを頼む。

食料、日用品、交通、医療、介護、見守り、生活支援。

地域で暮らすために必要な、さまざまな場面で使います。

スマートフォンを使う人は、アプリで支払う。

操作が難しい人は、クレジットカードのように、かざすだけで支払える物理カードを使う。

必要に応じて、地域の窓口でも支援を受けられる。

円で営んでいる今の暮らしに、毎月10万ドサンコ分の余白が加わります。

今日は、帰りに温かいものを買って帰ろう。
週末は、子どもと少し遠くまで出かけよう。
親の見守りサービスも、今月から頼んでみよう。

足元の安心があるからこそ、自分の時間と選択肢を取り戻せます。

桃の介:
働いている人も、所得が高い人も、みんな受け取るんですね。

ゆん吉:
生活の床は、誰にとっても必要だからね。地域で暮らす一人ひとりへ届ける。


1-2. 自分が使ったドサンコが、地域の誰かの仕事になる

仮に近所の食料品店で、5,000ドサンコ分の買い物をしたとする。

店は、そのドサンコで、地域の生産者から野菜や加工品を仕入れる。

生産者は、配送事業者へ支払う。

配送事業者は、車両の修理や、事務所の清掃に使う。[1]

自分が使ったお金が、店へ渡る。
店から、生産者へ渡る。
その先で、配送、修理、清掃を担う人へ渡る。

地域の中を、次の仕事へ、次の仕事へとつながっていく。

地域事業者は、商品やサービスを届ける側であると同時に、ほかの地域事業者の商品やサービスを使う側でもあります。

一人の買い物が、近所の店を支える。
地域の生産者を支える。
物流、修理、清掃、見守り、ケアといった仕事につながる。

暮らしを支えるために届いたお金が、地域に必要な仕事を育てていく。

誰かの安心が、別の誰かの働く場所になる。

ただし、すべての取引を地域の中だけで完結させることはできません。

地域外から仕入れる商品もある。
円で支払う経費もある。

店は、地域で使える分を次の支払いへ回し、必要な分を円へ換える。

地域の中でお金を回しながら、現実の商売も続けられるようにする。

桃の介:
店は、受け取ったドサンコをどうするんですか?

ゆん吉:
次の仕入れや支払いに使う。円が必要な分は円へ換える。店も、受け取る側であると同時に、使う側なんだ。


1-3. 円とドサンコを、重ねて使う

円を置き換えるのではありません。

円で営んでいる今の経済に、地域の中で回る新しい循環を重ねます。

桃の介:
給料や年金でもらう円は、家賃や税金の支払いで、すぐに消えてしまう人も多いですよね。

ゆん吉:
そうだね。だから、日々の食費やケアに使えるドサンコを、別の入口から届ける。既存の支払いに吸い込まれず、「今月を暮らすためのお金」が足元に残る。二つを重ねる意味は、そこにもあるんだ。


第2章 地域の暮らしを捉えられる単位で発行する

2-1. 全国一律でも、市区町村ごとでもない単位で実現できないか?

では、なぜ北海道という単位で発行するのでしょうか。

なぜ、市区町村ごとでも、全国一律でもないのでしょうか。

全国一律の通貨にすると、地域に届いたお金が、大都市、大企業、全国チェーン、巨大ECへ集まりやすい。

一方、市区町村ごとに細かく分けると、日常の生活圏や商圏を分断してしまいます。

住んでいる市と、働く市が異なる。
隣の市の病院へ通う。
複数の市町村をまたいで、買い物や通学をする。

暮らしは、行政区域の中だけで完結していません。

そこで、この論考では、その中間に 広域圏 を置きます。

全国一律より、地域の暮らしに近い。
市区町村より、生活圏と経済圏を広く捉えられる。

その中間単位として、広域圏を置きます。

桃の介:
全国共通にした方が、簡単ではありませんか?

ゆん吉:
簡単だけど、地域へ届けたお金が、また大都市や大企業へ集まりやすい。それでは、今の構造を繰り返してしまう。


2-2. ひとまず、全国を9つ程度の広域圏に分ける

ここでは、生活圏、商流、物流、地域経済のまとまりを踏まえ、全国をひとまず 9 つ程度の広域圏に分ける私案を置きます。

北海道のように、都道府県と広域圏が重なる地域もある。

関西のように、複数の府県を束ねる地域もある。

重要なのは、行政区分を機械的に当てはめることではありません。

地域通貨が、どこで使われ、どこへ流れ、どの程度地域の中で循環しているのか。

その実態を捉え、次の運営へ反映できる単位で管理することです。

桃の介:
圏域をまたいで引っ越したり、境界の近くで隣の地域の通貨を使いたくなったりしたら、どうするんですか?

ゆん吉:
地域ごとの通貨を置けば、圏域をまたぐ取引や、地域間の円の偏りも生まれる。だからMBIには、地域間の偏在をならす層も必要になる。まずは、一番足元にある地域通貨の仕組みから見ていこう。


2-3. 四つの運営主体が連携し、地域通貨を動かす

地域通貨は、発行するだけでは動きません。

生活者が使える形にする。
地域事業者が受け取れるようにする。
必要な場合には円へ換えられるようにする。
実際の利用状況を確認し、運営へ反映する。

そのために、四つの運営主体が連携します。

生活者と地域事業者は、この仕組みを実際に使います。

地域通貨を、生活のためのベーシックインカムとして機能させるには、使われ方を確認しながら改善を重ねる必要があります。

確認するのは、たとえば次のような情報です。

個人が、いつ、どこで、何を買ったのかを公開する必要はありません。

確認するのは、地域全体の流れを把握するために必要な、集計・匿名化された情報です。

特に重要なのは、地域内循環と地域外への流出を、セットで見ることです。

地域金融機関と決済事業者が、日々の決済、事業者間取引、円への換金等を通じて、資金の流れを把握する。

地方公共団体が、数字だけでは見えない使いにくさや、地域ごとの課題を把握する。

広域公共主体が、それらの情報を統合し、次の運営へ反映する。

発行する。
使う。
地域の中で回す。
実績を確認する。
次の運営へ反映する。

この循環を重ねながら、複数の地域通貨(L1)を育てていきます。

桃の介:
配った後も、調整を続けるんですね。

ゆん吉:
生活のために使われているか。地域の中で回っているか。物価に無理が出ていないか。実績を見ながら運営を改善していく。


おわりに

複数の地域通貨(L1)は、安心して暮らすためのお金を、すべての個人へ毎月届けます。

円で営んでいる今の経済に、地域で回る新しい循環を重ねる。

その循環を、全国一律でも、市区町村ごとでもなく、生活圏と経済圏を捉えられる広域圏で管理する。

広域公共主体、地方公共団体、地域金融機関、決済事業者・IT事業者が連携し、生活者と地域事業者が実際に使う。

利用実績を確認しながら、地域の暮らしを支え、地域の仕事につながるお金へ育てていく。

今回は、複数の地域通貨(L1)が、暮らしの中でどのように見えるのかを描きました。

ただし、実際に動かすためには、さらに具体的な条件を置く必要があります。

地域通貨を、使われずに眠るお金にしないためには、どうするのか。
事業者が必要とする円への換金を、どのように支えるのか。
地域通貨の価値を、どのように守るのか。
発行量、物価、供給力を、どのように確認するのか。

次回は、条件付き換金、時限性、公共還流、物価・供給力の調整を中心に、地域通貨を循環させる条件を具体的に設計します。


参考文献

  • Basic Income Earth Network(BIEN), “About Basic Income.”

  • Francese, Maura and Delphine Prady(2018), “Universal Basic Income: Debate and Impact Assessment,” IMF Working Paper, WP/18/273.

  • 山森亮(2009)『ベーシック・インカム入門――無条件給付の基本所得を考える』光文社新書。

  • 西部忠 編著(2013)『地域通貨』ミネルヴァ書房。

  • 中村良平(2020)「地域における循環型経済と地域経済構造分析」独立行政法人経済産業研究所(RIETI)。

  • 内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局(2018)「地域経済循環分析について」。

  • 春日部市・かすかべ未来研究所(2024)『デジタル地域通貨の活用に関する調査研究 最終報告書』。

  • 飯田市(2023)『デジタル地域通貨研究結果報告書』。

  • トチツーカ「土地の通貨で地域を活性化、デジタル地域通貨アプリ」。

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