映画「戦場のメリークリスマス」相互理解の実現
映画「オッペンハイマー」を観て、監督・脚本家のクリストファー・ノーランに興味を持ちました。氏が影響された映画の一つに大島渚監督の「戦場のメリークリスマス」があることを知り、Amazon Prime Videoで見返しました。1983年公開。
あらすじ
場面は1942年第二次世界大戦最中のジャワ島にある日本軍俘虜収容所。俘虜約600名収容の規模を有する。
ハラ軍曹(ビートたけし)は、俘虜を直接監督する立場にあり、ヨノイ大尉(坂本龍一)は俘虜収容所の所長を務める。
俘虜のロレンス中佐(トム・コンティ)は、日本語が出来、通訳を担っている。大人数を擁する収容所では様々な事件が発生、日本の軍律や俘虜収容所所長の裁量で、処罰していた。ビックスリー俘虜長は、ジュネーヴで採択された「俘虜の待遇に関する条約」したがって俘虜を扱う様、再三に渡りヨノイ大尉に要請するが、ヨノイの収容所ではもっぱら武士道の精神と仕来りで処置が行われていた。
ある日「軍人の中の軍人」と称されたジャック・セリアズ少佐(デヴィット・ボウイ)が俘虜として収容された。ジャックはヨノイ大尉に目をかけられるが、俘虜仲間の尊厳と命を守る為、反抗的行為にでていく。
遂に、ジャックは生き埋めの刑に処され命が絶たれる。
4年後の1946年、明日は処刑という時に、ハラ軍曹は、ロレンス中佐と再会を果たし、二人は在りし日の「メリー・クリスマス」のことに思いを馳せる。
思い出に残る場面
ヨノイ大尉がジャックに容易ならざる胸のざわめきを感じる場面
ヨノイ大尉は、バタビア(現:ジャカルタ)で開催された軍律審判に参与する。日本軍に投降したジャック・セリアズ少佐の判決は、ヨノイ大尉の意見もあり、死刑を免れ、俘虜としてヨノイ大尉の元に収容されることになった。ヨノイ大尉はジャックに武士道的精神と情愛に似た容易ならざる胸のざわめきを感じたこともあり、ジャックの体力回復に最善を尽くす様、所員に指示する。ヨノイを演じる坂本龍一は、ヨノイの複雑な心理状態を見事に演じてみせた。
ハラ軍曹がロレンスを独房から解放する場面
受信機を隠し持っていたとしてロレンス中佐は処刑される危機にあった。ハラ軍曹は別の俘虜が密かに持ち込んだことを発見、ハラは自らの間違いを認め、ロレンスを危機から救った。ハラが名誉よりも公平を重んじた場面。ハラの友情にも似たロレンスへの思いがそうさせた。ハラを演じるビートたけしは滲み出るハラの優しさを大変味わい深く演じた。
ジャックがビックスリー俘虜長の命を救う場面
ジャック(デヴィット・ボウイ)は、俘虜長がヨノイ大尉(坂本龍一)に処刑されるのを見るに見かね、自ら身を挺してヨノイ大尉の前に立ちはだかり、遂にはヨノイの両頬にキスをするという大胆な行動をとる。その刹那にヨノイ大尉は自己嫌悪と混迷に陥り神経発作を起こして卒倒する。坂本龍一は、ヨノイが卒倒に至る迄の短い時間に凝縮され緊迫極まった状況を高い演技力で表現し観る者を感動させた。
ハラ軍曹がロレンスと再会を果たす場面
明日は、ハラ軍曹の処刑日。ロレンスは自分が軍事裁判の責任者であれば、今にでもハラ軍曹を釈放したいと言う。ハラ軍曹は、その言葉をありがたく受け、自分は死ぬ準備ができていると返す。一方でハラは、なぜ自分がこんな目にあうのか理不尽であるとも言う。ハラは、俘虜収容所で友情を結んだロレンスと再会できたことで、清々しい気持ちで明日の処刑を迎えることができた。ロレンスは、ヨノイ大尉が処刑されるに際してジャック・セリアズ少佐の遺髪を日本の神社に奉納する様言付けられことをハラに明かした。ヨノイは、ジャックに仲間の為に身を捧げて戦う武士道の姿を見た様であり尊敬を表したかったのだと思われる。
最後に
ジャック・セリアズ少佐の英国におけるパブリックスクール時代の様子が写しだされる。ジャックは人望もあり成績優秀で寮長を務めていたが、入寮してきた愛する弟を陰湿な虐めから守ってやらなかったことを悔いている。ジャックは弟に心の底から謝罪したい思っているが俘虜の身でありそれが叶わいことを大いに悔いてる。日本軍の俘虜に対する扱いも、英国パブリックスクールに膾炙する陰湿な虐めも、「弱者に対する強者の驕り」であり、何ら変わらない。
ヨノイ大尉は、あるときロレンスに自分は1936年2月26日に発生した陸軍青年将校によるクーデターに直接関与できなかったこと、沢山の同僚が処刑されたことを大変無念に思うことを吐露した。ヨノイ大尉は軍の状況に不満を持っていること、ただ自身は自分が置かれた立場で生きていかざる得ないことを仄めかした。
本映画は、俘虜収容所という舞台で様々な事情と悲哀を持つ人々の生き様を対比の形で示しました。
ジャック・セリアズ少佐とヨノイ大尉、ロレンス中佐とハラ軍曹、英国人俘虜と日本軍人、西洋と東洋、騎士道と武士道を対比して複雑な心理描写を行い、最後には、相互理解を実現させる。
人間の本質を突く映画で、良く考えさせられてました。
それではまた
