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黒狼の鎖【一話】

【あらすじ】

刹那の国の端にある下町から永遠の国にある隣町の親戚の家に仕事を手伝いにいくことになった15歳の少女、ルナ。家は鍛治職人の家系で親戚も鍛治職人をしている。その旅に義理の兄のクロもついていくといい、2人で旅に出ることになった。
クロは見た目は3歳、中身は18歳の少年。赤ん坊の時から体に鎖状の痣がバッテンのようにクロスした形で刻まれている。2人での旅の途中、豹のお面をつけたツナギの何者かに執拗に狙われてしまう。
白豹の目的は、クロの暗殺。クロは永遠の国の不老不死の象徴、黒狼の生まれ変わりであり、彼の痣はクロの本当の姿の封印だった。

【ジャンル:和風バトルアクション】

【クロの生い立ち】
クロはルナが生まれる3年前に両親が赤子のクロを草むらで見つけ、我が子として育てていた。ルナが生まれた年にクロの成長は止まってしまい、以降身体の成長は見られず、精神面での成長のみにとどまってしまった。3歳の見た目ではあるが、実家の鍛冶屋で作った短刀を遊び道具にしており、腕前は一流。1人でなんでもできるし、動きは俊敏で町の闘技大会の大人の部で優勝するほどの実力者。知能にも遅れのない。

【神獣の幼体としての黒狼】
幼い体に大きすぎる力のため器が成長するまでロックがかかった状態で幼体の姿のままを保ち続けていた。本来の姿にもなれず、力を発揮できないクロ。彼の封印を解く鍵を作れるの義理妹のルナだけだった。

【黒狼としての役目】
黒狼の役割は1人の王を決めること。王を不老不死にすることで、世の安定を図ること。
不老不死を狙うもの、王を決められると都合の悪いものたちから命を狙われる。

【義理妹ルナの役割】
黒狼として神獣の狼の姿になるために月の光と同じオーラを持つルナの力が必要だったため、ルナはクロとともに神獣たちの住む天の国へ修行へ向かう。月影は以前、黒狼の親友だった。(恋愛ではない、親愛)

【修行】
2人の力の覚醒のため修行をつける白豹。ルナは月影の使えた力を、クロは黒狼として完全な神獣化する力をコントロールする修行を行う。それぞれの神獣たちと会い、金狐の封印の解き方を探し、白豹、金狐、黒狼は赤獅子の元へ向かう。
黒狼は時間を、白豹は空間を、金狐は自然を、赤獅子は願いを司っている。

【赤獅子の目的】
人間の自分勝手な願いばかりにうんざりしていて、人間嫌いに。自分の代替わりのために弱くなりつつ力の保持のため、黒狼の不老不死の力が欲しい。
目的として自らが王となり、人に神獣の力を分け与え、半獣化させることで祈りの養分補給として家畜化し、神獣が住みやすい国づくりを行う。神獣4人のための世界に世界を作り替えようとしている。人間よりも神獣が大切と言う考え方。
赤獅子があまりにも多くの時を生きたため、人の欲にやられて、精神的な疾患を抱えた状態。

【赤獅子の目的の阻止】
赤獅子は黒狼にとって魂の親のような存在。しかし、赤獅子は、我が子のような神獣たちがいれば人間など力が保てるくらいいればどうでもいいので、世界を神獣の暮らしやすいように作り替えようとしている。
他3人の神獣は人の営みを愛おしいと思っているので壊したくない。

【黒狼の過去の誤ち】
神獣として、人間に祈られなければ存在できない特性上、人はいなくてはならない。だったら皆を不老不死にすればいいと数代前の黒狼が人間を不老不死化させ、死なないために争いが絶えない国になって人間の精神が耐えられずに無気力になり、祈りが減少。力が弱まる事態が発生した。不老不死の力を解除して、不老不死から解放したのち、代替わり。かつてこの国の人々が不老不死だったことから永遠の国と呼ばれるようになった。

【結末】
ルナの力で神獣化した黒狼が赤獅子を倒し、皆でもう頑張らなくていいと赤獅子の最後を見届ける。黒狼が王のいない国を願ったため、誰か1人が独裁的に収める国ではなく、皆で話し合い、決めていく国づくりが行われるようになる。ルナとクロは魂の兄妹として、家族として力を合わせて人間の世界を守った。代替わりをした小さな赤獅子に俺たちが過去に戻ったら、この旅の記憶を消してほしいと赤獅子に頼み、黒狼の時間の力で家出をした時間に戻り、2人は永遠の国に帰る。手紙を見つけるも描いた記憶もないのでゴミ箱に捨てる。何もなかったように刀鍛冶の手伝いを一週間して、刹那の国に帰り、両親と再会する。「ただいま」という2人の笑顔で終わる「いってらっしゃい」から「ただいま」までの物語。
神獣たちはそれぞれが空間、自然、時間、願いを司りながら、白豹と金狐は代替わりした赤獅子を育て、黒狼は人間クロとして生きる道を選ぶ。


「第一話 旅立ち」

「いってらっしゃい」
刹那の国の商人街、刀鍛冶を営む小さな店前で、私はリュックを背負い、旅立ちに胸を躍らせていた。
「忘れ物はない?」
心配する母親にそう答え、笑顔を見せる。
「大丈夫だよ。準備万端!でも、本当にクロも一緒に行くの?」
小さな体に不釣り合いな大きなリュックを広げ、中に旅に必要なものを詰めているクロ。
「おう、お前1人じゃ心配だからな」
当たり前のようにそういうクロに呆れつつ、1人での旅立ちはちょっぴり不安だった。
私は1人じゃないことに少し安心して、クロの荷造りを待った。
「できたぞ!」
そう言われて振り向くと、そこには背中から大きくはみ出したリュックを背負う幼児の姿があった。
「そんなにいる?」
「何かあった時、足りないより足りた方がいいだろ」
「まぁ、クロがいいならいいけど」
それじゃあと私もリュックを背負い、店の外に出た。
「じゃあ、行ってきます」
「行ってきます」
2人して両親にそう挨拶をする。
「えぇ、気をつけてね」
「ルナのこと頼んだぞ」
「おう!」
私たちは両親に手を振りながら永遠の国を目指して出発した。
「なぁ、あれ美味しそうだな」
「焼き鳥?」
「そう」
クロはそう言うと屋台の方へ駆けて行った。
「おっちゃん、モモと皮とつくね5つずつくれ」
ぴょんぴょんと飛び跳ねながら首から下げたがま口財布の中から出したお金を渡そうとするも、おじさんにクロの声は聞こえていないようだった。
「おい、おっちゃん!」
クロは完全に店主のおじさんの死角に入っていてなかなか気がついてもらえない。
クロが私の方に振り向き目で何かを訴えてくる。
「はいはい」
私がクロを抱き上げると、クロは
「おっちゃん、モモと皮とつくね5つずつくれ」
と言った。
「お、坊主。姉ちゃんとおつかいか?偉いなぁ」
とおじさんはクロの頭を撫でてそう言った。
「俺がお兄ちゃんだけどな」
そう言ったクロにおじさんは
「そう言いたいお年頃かい?」
と笑って焼き鳥を焼いてくれた。出来上がった焼き鳥を受け取り、食べ歩きをしながら駅に向かった。
「ほら、お前の分」
と、クロは私に焼き鳥を一種類ずつくれた。
食べ終えた焼き鳥は駅のホームのゴミ箱に捨て、私たちは切符を買うことにした。国境付近の街まで汽車に乗り、刹那の国の最端の街で降りて、関所を通り、国境を越える。
「俺って大人料金?」
クロが料金表を見ながらそう言うものだから
「これって場所をどれだけ取るかっていう体のサイズなんじゃないの?クロは3歳サイズなんだから、子ども料金でいいと思うよ」
と私が答えると、
「なんかムカつくな」
と顔を顰めてそう言った。私は大人一枚と子ども一枚の切符を買って、汽車に乗り込んだ。
汽車の中は混雑していて空いている席がなかった。最端の町までは数時間かかる。何としても座りたい私はくまなく車両を探して回った。
すると一席だけ空席があった。私が網棚に荷物を置くと、クロも私に荷物を渡し網棚に置くように言った。
2人分の荷物を網棚に上げて、私は窓側に一つ空いた席に座った。
「おい、ずるいぞ」
クロがそう言ったので、仕方なく
「じゃあ膝の上に乗る?私座りたいんだもん」
というと、クロは
「嫌だ」
と言った。その時車両が動き始め、クロは揺れに踏ん張れずに、コロコロと転がって行ってしまった。
「ほら、危ないんじゃない?」
私がそう言って、クロを抱き上げると、
「仕方ねぇ」
と言って私に抱かれたまま、座席まで運ばれ、膝の上で大人しくしていた。
「おい、起きろ。着いたぞ」
クロに頬をペチペチと叩かれて目を覚ますと、辺りはすっかり暗くなっていた。
私たちは網棚から荷物を下ろし、駅に降りた。
今は午後7時半。関所は午後8時に閉まるので、私たちは急いで関所に向かった。
「おい、今日はここで一泊した方がいいんじゃねぇか?」
「今日中に関所渡っときたいの!明日からメンテナンス工事で関所空いてないらしいから」
「まじか」
2人で懸命に関所まで走り、通行手形をみせる。なんとか関所を通り、門をくぐる。
門の向こうは整備されていない道が続いていて、鬱蒼とした森の中という印象。さっきまでの町の雰囲気と門を挟んで景色がまるで違った。
「おい、この辺泊まれるとこねぇぞ」
「でも、関所って明日から閉まっちゃうし、今日渡るしかなかったんだもん」
「お前それほんとに明日から閉まるのか?」
「ほんとだよ!私チラシ持ってるもん」
リュックの中に詰め込んだ閉鎖のお知らせの紙を取り出して、クロに見せる。
「お前なぁ、明日から夜間閉鎖になるだけじゃねぇか。夕方5時までは門は普通に空いてるの!よく読んどけ!」
とチラシを読んだクロにそう叱られ、小さく書かれた文字を指差して見せられた。見せられたチラシをよく読むと、小さな文字で
「メンテナンス工事のため、夜間閉鎖に伴い午後5時以降の門の開場を封鎖いたします。朝9時から午後5時までは平常通り開場しています」
と書いてあった。
「えー!ほんとだ。なんだ、じゃあ今日中に渡らなくてもよかったじゃん。戻ろうよ」
「俺らが門を渡ったのは7時58分。門はもうとっくに閉まってるよ」
「え、じゃあ野宿?」
「そうなるな」
「え?ここで…?」
私たちは薄暗く不気味な森を進み野宿できそうな場所を探すことになった。
少し歩いた場所に川があり、そのほとりにテントの張れそうなひらけた場所があった。
「俺がこんなこともあろうかとキャンプ道具持ってきててよかったな」
とクロが恩着せがましくそう言いながらテントを張っている間、私はその辺の枝を集め、マッチで火をつけた。
「お腹すいた。」
「お前食糧は?」
「持ってきてないよ。だって食堂で食べようと思ってたんだもん」
「おいおい、準備万端なんじゃなかったのかよ」
そう言ってクロは自分のリュックからカップラーメンを二つ取り出して渡してくれた。
私たちはお湯を沸かし、カップラーメンを作って食べた。
カップラーメンを食べ終わった時、クロが回収してゴミ袋に入れた。
ゴミ袋まで持ってきてたんだと、この小さな背中の頼もしさに驚く。
ガサガサガサガサ。
後ろから物音が聞こえ、振り返ると、白いツナギに白豹のお面をつけた男が立っていた。
「おい、ルナ。お前は逃げろ」
クロは私にそう言うと
「走れ」
と叫んだ。私は走って森に隠れ、姿勢を低くしてクロを見つめた。
男の手には刃物を持っており、まっすぐにクロを目掛けて走ってきた。
クロはくるっとかわして手首を手刀で弾き、刃物を落とし、首に抱きついてゴキっと首を回して気絶させた。
するといつのまにか、先ほどのやつと同じ格好をした男がクロの背後に音もなく現れ立っていた。
クロの着ていた服を刃物で切り裂き、痣をみて
「これが印か」
と言った。


二話

三話

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