大人になってもう一度「数学」にトライする
「数学」と聞くとどんなイメージを持つでしょうか?
私の場合、高校数学でつまづいた記憶がよみがえります。毎日のように宿題で問題集をたくさん解かねばならず、あっという間に追いつかなくなり、提出期限前に慌てて解答を写していました。
そんな調子なので成績も当然悪く、進級ギリギリの成績を取り続け、大学受験では早めの段階で数学を手放しました。
そんな私ですが、社会人を経て理系の大学院に入学したことがきっかけで、高校数学をやり直して大学数学を独学、さらには大学院数学に体当たり。
その結果、今では「数学、楽しい……!」と思えています。
大人になってから数学を学び直すのって、思ったよりずっと良いなと思ったので、学び直している感想と、私の場合の学び直し方を書いてみました✍️
数学を学び直してみてどう思ったか?
おもしろい!奥が深い!学べることがいくらでもある!
数学を学び直した結果、今の私が数学に対して思っていることです。
ただの公式だと思っていた一つの式を使うことで、現実の事象を説明できる。一つの事象を理解する術を知ることで、別の事象も数学で認識できるようになる。
学べば学ぶほど、こんなに奥が深い学問だったんだ、と驚かされますし、その奥深さに魅了されます。
世界を見る視点を一つ増やしてもらったような、そんな気分です。
数学が楽しいと思える未来があるなんて、高校生の頃は想像もしていなかったな……!
なんで楽しいと思えるようになったのかを考えてみたところ、勉強の目的がテストや成績ではなく、「自分が理解すること」に変化したからだな、と思いました。
数学の学習は、以下の3つの段階に分けられるようです。
1. 数学用語・記号の定義と、それが表す概念(意味)を学ぶ
2. 学んだ概念に関する定理とその証明を理解する
3. 証明した定理を使って問題を解く
3段階の内容は、高校数学でも大学数学でも同じ。しかし受験勉強が想定されている高校数学は3に重点が置かれています。だから大量の問題集を解かされて、数学への苦手意識が育ちやすいんでしょうね。
でも!大学数学は主に1と2を扱います。講義を受けている場合はテストのために問題を解く必要があるかもしれませんが、それでも高校数学より「理解すること」に重きを置かれています。
問題集をたくさん解くよりも、目の前の数式をどうやって理解するかに時間を使えるようになったおかげで、数学の奥深さとおもしろさに触れることができました。
どうやって学び直したか
私は高校で数学IA・IIBまで履修したので、そこから大学院数学に進むためには、数学IIICと大学基礎数学が必要でした。
この話をすると「どうやって勉強したんですか?」と聞いていただくことが多いのですが、私の場合は必要な範囲を独学でキャッチアップしています。
数学関連の大人向け講座を提供しているスクールもいくつかあるので、そういったスクールを探してみるのもいいと思います。
私も一時期だけオンラインの個別指導を使用しましたが、うまく活用できなかったため、必要な範囲を独学するという方法に戻しました。
ということで、以下では独学での数学の勉強方法を書きます✍️
【最重要】まずは自分の地図をつくる
全体をざっくり知る
私がスタート地点で困ったのが、「数学を勉強するといっても、どんな順番でどういう内容を勉強していけばいいんか……?」ということでした。
そんな状態で数学の分野名を見ても、「微分を勉強したかったら微分方程式の動画を見ればいい?」と思う有様でした。微分積分の微分と、微分方程式は別の分野だと後から知った。完全に迷子。
迷子に必要なのは地図です。地図を見ながら、数学という学問にはどういう分野があるのかをまずはざっくり知りましょう。
古賀真輝さんが公開されている「数学の世界地図」がおすすめです。広大な数学世界のなかで、どんな分野があって、どの分野がどのように関係しあっているのか、概観を知ることができます。

地図に関する動画と書籍も出ており、地図とセットで数学世界を歩いていく相棒になってくれます。私は後からこの地図のことを知り、数学の勉強を始める前に知りたかったー!と切実に思いました。
書籍を読むと、例えば私の学びたい分野であるコンピュータサイエンスと数学との接点は、最後の章である「応用数学」の一部だとわかります。
自分が学びたい分野と数学との具体的な接点を知っておくと、勉強しやすくなるはずです。
自分に必要な範囲を知る
広大な数学世界の地図を把握したら、次は自分の地図をつくっていきます。
やっておいたほうがいいことでいえば、無限にある。「やっておいたほうがいい」ではなく「これをやるべき」を選んでいきましょう。
そのために役に立つのが、各大学が公開している大学数学のシラバスです。理系の大学生がどういう順番で数学を勉強していくのかが書いてあります。
このように、シラバスを踏まえてまとめてくださっている図もあります。

いろいろ見ていくと、私に必要なのは理系の大学1〜2年生が共通して学ぶ、いわゆる「大学基礎数学」のみだとわかりました。
どの分野を「大学基礎数学」に含めるのかは学校によって微妙に異なるようですが、以下の2つが大学基礎数学における超重要な分野であることは共通しているかと思います。
線形代数
微分積分学
これに加えて、数学の世界地図を踏まえると、私が専門にしようとしている領域と関わりがありそうなのは「解析学」と「応用数学」、特に以下の分野だとわかります(確率・統計は大学基礎数学に含まれる、とも言えそう)。
解析学
確率論
フーリエ解析
応用数学
統計学
※ 実際には微分方程式などの他の分野も関わってくるのですが、いったん置いておきます。
このあたりを知る前は「大学4年間の数学を……自力で……??」と思っていましたが、実際には大学生が1〜2年かけて勉強する上記の分野を独学すればいいとわかりました。これが見えただけでもだいぶホッとした。
このように、数学の世界地図とシラバスを見比べることで、自分にはどの分野が必要で、どういう順番に勉強していけばいいのか、おおまかに理解できます。これを自分の地図にして、勉強をスタートさせましょう!
迷子に必要なのは地図!
この記事で一番言いたかったのはこの一言です。
以下は数学の各分野について何を使って勉強したかという話なので、勉強方法の一例としてご活用ください。
1. 高校数学のおさらい
高校数学はざっと復習しておきたいですが、ここを完璧にしようとすると、なかなか前に進まないまま挫折してしまう可能性が高まります。
少なくとも私は、高校数学をきちんと一周しようと思って、何度も挫折しました。ここから学んだのは、高校数学の範囲に関しては以下の戦術で挑むのがいいのでは、ということです。
まずはざっと一周振り返って、記憶のインデックスをつくる
あとは勉強しながら、忘れている箇所に随時戻って復習する
1のための本は書店にたくさん並んでいますが、私は『高校数学の基礎が150分でわかる本』を使いました。
あとは黄チャートを数学IA・IIB・IIICの3冊揃えて手元に置いておき、わからなくなったら黄チャートを見返していました。黄チャートを1から進めようとすると膨大すぎて心が折れるので、辞書代わりの使い方がおすすめです。
2.大学基礎数学
線形代数
大学数学の始まりといえば線形代数!
線形代数入門(全14回)
ヨビノリ先生のおかげで大学院入試を突破できたといっても過言ではない。
微分積分学
ここだけはヨビノリ連続講座がない……!ということで、他のYouTube講座も探してみたのですが、合計時間が長すぎて動画でのインプットはあきらめました。
マセマシリーズ 微分積分
https://books.mathema.jp/categories/20?book_type=BOOK
大学院の講義を受けていると、微分積分は目的ではなく、他の分野でも問題を解くための手段だと実感します。
例えば私が受講したのは確率過程の講義でしたが、その問題を解くために「偏微分」や「合成関数の微分」がたくさん登場するので、わからなくなったらその都度確認しました。
そのときに役に立ったのが、マセマシリーズです。私はマセマの『大学基礎数学 微分積分』を手元に置きながら大学院のテスト勉強を進め、得意ではない分野を見つけたらマセマに戻って補強を図っていました。
今は私が使っていたものより新しいシリーズが出ているようです。他の単元もいろいろあります。
Mathway
https://www.mathway.com/ja/Calculus
問題集で微分積分まわりの展開がわからなかったときに使えるのが、Mathway。問題集で省略されている部分を1行ずつ展開してくれます。
微分積分以外にも代数学や三角関数などいろいろな分野がカバーされていて、大学院の数学系の講義を受けているときは課金していました。
数学の文法を知る
ここはプラスアルファですが、数学独自の文法(言葉の扱い方や概念)をざっくり把握しておくと、数学を勉強しやすくなると感じています。英語と同じですね。
数学の文法と言えそうなのが、数学基礎論に含まれる「集合論」です。数学を勉強し始めた当初はなぜ文法だと言われるのか理解できなかったのですが、勉強していくと確かに集合を前提として話が展開されていく場面が多々あります。
集合論そのものはとても抽象的ですが、集合で使われる記号や言葉の意味を知っておくと、他の分野の数学書を読みやすくなるはず。
大学数学ほんとうに必要なのは「集合」
3.自分に必要な範囲の数学
全体像
理系大学生が勉強する数学全般を知りたかったり、どの範囲が必要なのか明確に決まっていなかったりする場合は、『編入数学徹底研究』に進むのがいいと思います。
編入数学徹底研究
『編入数学徹底研究』は大学編入を目指す人向けの数学の参考書で、理系大学生が勉強する大学基礎数学の範囲が網羅されています。例題から解説しているスタイルで、章末問題付き。
上記の「大学数学基礎」で取り上げた線形代数と微分積分学だけでなく、「解析学」に含まれる複素解析、フーリエ解析、ラプラス変換など、工学系の学生が学ぶ数学の分野が含まれています。
この本に出てくるトピックは、私が所属している大学院の情報系の授業でも前提として出てくるものばかりで、大学数学のエッセンスが凝縮されている一冊と言えそうです。持っておいて損はない。
フーリエ解析
大学院数学でたくさん登場したのが、フーリエ解析です。例えば音を解析するためにフーリエ変換が使われています。
【全5講】フーリエ解析入門
世界は波でできているんだ、って学びました🏄♂️
【視覚的に理解する】フーリエ変換
フーリエ変換はビジュアル化が必須。
統計学
私の場合は研究でも統計を使うので、現在進行形で勉強中の分野です。
そしてどんな発展的な手法を使うときも基礎理解が重要になるので、ヨビノリ先生の推定・検定入門講座をベースにするのがおすすめ。
推定・検定入門(全9講)
ヨビノリで学んだことを研究にも活かしています。
書籍だと私の場合は以下が分かりやすかったです。
完全独習 統計学入門
ディープラーニングを学びたい場合
AIに使われる数学を最短距離で理解したい場合、以下の2冊がおすすめです。
人工知能プログラミングのための数学がわかる本
中学数学からざっっっっと振り返れるので、中学・高校数学を振り返りたい方と、大学数学のどのあたりが人工知能プログラミングに必要とされるのかを知りたい方にもおすすめ。
コンパクトにまとまっているので、まずは読み切ることを目指せます。
最短コースでわかる ディープラーニングの数学
機械学習とディープラーニングの理解に必要な数学のみがピックアップされていて、解説が充実しています。数学の問題はありませんが、コラムも含めて理解しやすいです。
学んだ理論を踏まえてディープラーニングの実践に活かせる構成になっています。
数学の勉強も含め、学習全体のロードマップが知りたいという方は、以下のサイトでチェックできます。
人工知能を学ぶためのロードマップ
参考になるサイト
予備校のノリで学ぶ「大学の数学・物理」
ヨビノリ動画はすでに紹介してきていますが、「この分野は動画あるのかな?」と思ったときは公式サイトの「Video」をチェックするのがおすすめです。勉強におすすめの書籍も紹介されています。
木村すらいむさんのサイト「趣味の大学数学」
独学で数学を学ぶ方法を発信されている木村さんのブログは、大学数学を楽しく学んでいきたい人にとって心強い存在です。大学数学のロードマップや各分野の概要、おすすめ参考書までなんでも揃っています。
大人になってからの勉強は、自分のペースで好きなように進められるので、本来のおもしろさを見つけやすいと感じています。
数学に後ろ髪を引かれている方に、今回の記事が少しでも役に立ったらうれしいです!
私も大学院の講義はひと段落しましたが、時間を見つけて数学の世界の旅を続けていこうと思います🗺️
