木蓮と家人
家人は冬の間、鳥たちへ餌を分け与えるのが習慣だった。
そうしていたら鳥は春にも訪れるようになり、椿の枝に巣を作るようになった。
椿は鳥の襲来と巣作りを迷惑そうにしているが、私はそんな庭を上から見ていることが嫌じゃなかった。
私の名は木蓮。
この庭でいちばん大きな樹木。
鳥たちにも木々にも、花にも、家人は優しかった。
庭の手入れも毎日していた。庭には穏やかな時間が流れていた。
けれど家人は歳をとっていった。
縁側で立ち上がるとき、ゆっくり起き上がるようになった。
庭に降りてこない日が、少しずつ増えていった。
そうこうしているうち、途中からそのひと——庭師が入るようになった。
最初は少し警戒した。
だけど庭師は温かく、手慣れていた。
家人が縁側でその人にお茶を出して、共に飲んでいた。
言葉少なかったけど、二人は笑っていた。
木漏れ日に揺られながら、花と鳥は光と共に踊っていた。
庭師の腕は確かだった。
だけど、家人のように毎日ここに来られるわけではない。以前に比べて、断続があった。
私は剪定してもらって、生きやすくなった。
周りを見る余力が生まれた。
これから雨が降る。
風が強くなる季節だと、年輪が知っている。
雨の日の庭、縁側が泥濘むことも。
だから、枝を広げることにした。
私の下に生きる草木を、雨や風から護るために。
折られずに、大きな花を咲かせられるように。
この庭を守ろうと思った。
家人のことも守りたかった。
家人と、庭師と、ここに生きるすべて、
庭に流れる時間を、私はいつの間にか気に入っていたらしい。
ーー私は家人に守られて、今ここに在る。
だから今度は私が守る。
落ちた花は腐葉土に。
張った根は、庭を頑丈に。
あなたが守った花が、
鳥が、
光が、
老いていくあなたの、
希望として残るように。
白く厚い花びらが、風と共に宙を舞う。
眩しい日差しを浴びて光る花びらが、庭の土に濡れ光っていた。
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