透析患者さんのかゆみ、6つの本当|透析看護師20年が見てきた現場
※この記事は、透析療法を受けておられる方、ご家族、医療スタッフを対象に書いています。
※体質や合併症は人それぞれ違います。最終的な判断は、必ず主治医にご相談ください。
■ 「先生には言ってないんですけど」というかゆみ
「先生には言ってないんですけど、夜中、かゆくて。」
透析室で、こんな声をたくさん聞いてきました。
たくさん、と言うより、もう数えきれないくらいです。
血圧の心配や、検査値のお話のあとで、
ぽつりと打ち明けられる「かゆみ」。
地味な悩みだから、と。
そんなことで先生の時間を取るのは申し訳ないから、と。
でも、かゆみは、地味じゃありません。
夜眠れない、傷ができる、薬を変えてもおさまらない。
透析患者さんの暮らしを、静かに削っていく症状です。
今日は、その「かゆみ」について、
看護師20年の現場で見てきた本当を、6つに分けて書きます。
■ ① かゆみの原因は、ひとつじゃない
透析患者さんのかゆみは、原因がひとつではありません。
私が現場で見てきたかぎりでも、少なくとも5つの要素が絡みます。
→ リンとカルシウムのバランス(検査値が高いと出やすい)
→ 皮膚の乾燥(透析の方は皮膚バリアが弱くなりがち)
→ 透析療法そのもの(体に溜まる中分子量物質の影響)
→ 神経の過敏化(オピオイドのバランスが関わると言われています)
→ お薬の副作用(リン吸着薬、降圧薬など人によって)
ひとつの原因を治しても、別の原因が残っていれば、
かゆみはおさまりません。
だからこそ、自分のかゆみが「どこから来ているか」を
知っておくことが、とても大事になります。
■ ② 伝えても、届かないことがあるんです
リンの値が高くなると、かゆみが起きやすくなることがあります。
リン吸着薬は、それを防ぐために食事と一緒にのむお薬です。
食直前、食事中、食直後のいずれかが、効果のあるタイミングです。
「ちゃんと飲んでくださいね」と、
私も透析室で何度もお伝えしてきました。
でも、ある日気づきました。
リン値が高いと指摘されたことに、
反発を感じてお薬をやめてしまう人。
かゆみとリン値が関係していると、
そもそも知らないままの人。
そして、何度も聞き飽きてしまった人。
患者さんには、それぞれの理由があります。
責められたくなかったり、
自分のことは自分で決めたかったり、
ただ、もう聞きたくない日があったり。
私たち看護師も、人間です。
3回、4回と同じ話を続けるのは、
こちらも気持ちが削れていきます。
週3回、4時間ずつ、何年もお会いする方とは、
関係を悪くしたくない気持ちもありました。
「言いたかったのに、言えなかった」
そんな日が、私にもたくさんありました。
だから、今日この記事に書いておきます。
リン値が下がると、かゆみが軽くなることがあります。
かゆみで眠れない夜が続いているなら、
リン吸着薬の飲み方を、もう一度だけ確認してみてください。
責めるためではありません。
「もう聞き飽きた」と感じていても、
今日のあなたが少し楽になるなら、それで十分なんです。
■ ③ 患者さんがやっている、自分なりの工夫:見てきた5つ、一長一短
私が透析室で見てきた、患者さんが
自分でなんとかしようとしてる工夫を、そのまま書きます。
責めるためではありません。
「あ、自分もやってる」と思った時、
ちょっとだけ知っておいてほしいから。
【1つめ】まごのてを、ガーゼを巻かずに使う
届かないところに届く知恵です。
ただ、皮膚を傷つけやすく、
搔き傷から感染することがあります。
ガーゼやハンカチを巻くと、優しくなります。
【2つめ】オーバーテーブルに体を擦りつける
両手が透析中で自由にならない時の、現場の知恵です。
ただ、摩擦が強く、皮膚を傷めることがあります。
【3つめ】穿刺部の周りを、指先で掻く
一番つらいところに届いてしまう動作です。
ただ、穿刺部は感染リスクが特に高い場所です。
看護師に声をかけてもらえると、別の方法を一緒に考えられます。
【4つめ】夏は、保冷剤を当てる
冷やすと、一瞬かゆみがおさまることがあります。
ただ、シャント側を急に冷やすのは控えてください。
保冷剤は、必ずタオルに包んで使ってください。
【5つめ】マットレスパッドに背中を擦りつける(背中モジモジ)
両手では届かない背中に、効果的な工夫です。
ただ、長く続けると皮膚を傷めることがあります。
ここで、ひとつ大事なことを書いておきます。
透析中の4時間は、見られている時間です。
看護師の目が届くので、少々の工夫でも気づいてもらえます。
でも、ご自宅では、24時間。
両手が自由に使えて、行動範囲も広い。
工夫の効果も、皮膚への影響も、ずっと大きくなります。
一長一短ある。
それを知った上で、自分に合う方法を選んでください。
■ ④ 保湿は、薬より先に始められる
かゆみのお薬は、主治医の処方が必要です。
でも、保湿は、今日から自分で始められます。
→ お風呂上がりの5分以内に、保湿剤を塗る
(皮膚が乾く前に塗ると、水分が逃げません)
→ ヒルドイドやワセリンなど、
ドラッグストアで買える保湿剤でも十分です
→ ただし、皮膚に湿疹や傷がある時は、
市販品ではなく主治医に相談してください
「お薬は出てないけど、かゆいんです」
そんな時こそ、まず保湿を試してみてください。
それだけで、夜のかゆみが少し軽くなる方を、
たくさん見てきました。
■ ⑤ 透析中のかゆみは、看護師に伝えていい
透析の最中、急にかゆみが強くなる方がいます。
透析療法そのものや、回路に流れるお薬が原因のこともあります。
「我慢しなくちゃ」と思って、
4時間ずっと我慢される方をたくさん見てきました。
でも、透析中のかゆみは、
看護師に伝えていただいて大丈夫です。
→ 抗ヒスタミン剤の点滴に切り替えてもらえる施設もあると聞きます
(私が勤めていた現場では使った経験はないのですが、対応してくださる施設もあるそうです)
→ 透析回路の調整で軽くなることがある
→ 患部に冷たいタオルを当ててくれる施設もある
「先生に言うほどでもない」と思っても、
看護師には伝えてください。
それが私たちの仕事です。
■ ⑥ 眠れない夜が続く時は、必ず主治医に話す
かゆみで眠れない夜が、3日続いたら。
主治医に、必ず伝えてください。
→ 検査値(リン、カルシウム、PTHなど)の見直し
→ お薬の調整(かゆみ止め、保湿剤、夜用の塗り薬)
→ 透析条件の見直し(透析膜の変更で軽くなることもあります)
主治医は、言われないと気づけない時があります。
看護師は、伝えても先生に届かない時があります。
だから、あなた自身の言葉で、
「眠れないほど、かゆいんです」と伝えてください。
それは、わがままじゃありません。
透析を長く続けていくための、大切なケアです。
■ かゆみを、ひとりで抱え込まないで
痒みと、くすぐられること。
人は、この2つを我慢できないと、よく言います。
私もそう思います。
だから、夜中にかゆくて眠れない方の気持ちは、
本当によくわかります。
かゆみは、誰にも気づいてもらえないまま、
あなたの夜を削っていきます。
でも、ひとりで抱え込まないでください。
リン吸着薬の飲み方を見直すこと。
お風呂上がりに保湿すること。
透析中、看護師に声をかけること。
眠れない夜が続いたら、主治医に伝えること。
ぜんぶ、自分のために選べることです。
■ あなたが選べるように
この記事は、透析療法を受けておられる方、ご家族、
そして透析に関わる医療スタッフのために書きました。
ここに書いたことは、私が現場で見てきた本当の話です。
医学的に絶対の答えではありません。
最終的な判断は、必ず主治医にご相談ください。
ただ、ひとつだけ伝えたかったことがあります。
「もう聞き飽きた」と思っても、
「今さら聞けない」と思っても、
あなたが今夜、少しでも楽に眠れる方法は、必ずあります。
かゆみを、ひとりで抱え込まないでください。
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今日も、ぼちぼちいきます。
ゆるら|透析の看護を20年すこし
リウマチとうつと共に暮らしながら、
やさしい言葉とアプリと歌を作っています。
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