MY Sweet Olive Family~第1章③
【第1章】 女勇者Atashi召喚
(第3話)「汚部屋ダンジョン突入!」
同じ家に暮らしているはずなのに、言葉を交わさない母と妹の鬱子。
妹はふたり。鬱子(うつこ)と、もうひとり。
女帝デビ子。
まあ、その話はまた今度。
便宜上“鬱子”って呼んでるけど、もちろん本名じゃない。念のため。
家庭内別居。
家族と同居しているのに、孤独を深めひとりぼっちになっていく母。
母は、きれい好きではないけれど料理が上手で働き者だった。
アタシは台所で母が作る料理の手際の良さを見るたびに、
ちょっとした職人みたいだなと思っていたし、
そんな母を誇らしく感じていた。
鬱子にとっての母は、
学校から帰るといつも畳の上になにも引かず手まくらで寝てた
『だらしない』ひとだった。
アタシにとっての母は、
常に動いていて何かを作り出す人だった。
その母の部屋は、もうどこか別の世界みたいだった。
【汚部屋(おべや)】ダンジョン。
そう、はっきり心の中で言葉にした瞬間、
何かがストンと腹に落ち覚悟が決まった。
戦闘能力ゼロの女勇者Atashi、
初めての汚部屋断捨離という名のクエストに突入する。
こんな部屋片づけろって無理ゲーじゃない?
同行者なし、魔法もなし、武器もなし。
いや、あるか、薄っぺらな根性くらいは。
雨戸がずっと閉じっぱなしで、昼でも電気をつけないと何も見えない。
この部屋は、光ごと閉じ込められていた。
迫りくる大量の紙袋とダンボール。
紙袋って物を入れて持ち運ぶためのものだよね?
でも、この空間では重なり天井を目指してそびえ立ってる。
段ボールの中には、さらに段ボール、その中にもまた段ボール。
開けても開けても空っぽの箱、箱、箱。
可愛くないマトリョーシカだこと。
足の踏み場もないじゃん。
おっと、獣道発見?
おそるおそる一歩踏み出した途端、足を取られて少しよろめいた。
倒れるかと思って慌てて手をついたのは、仏壇の前の経机だった。
「なっ?」
ざらっとした感触が手のひらに伝わってきた。
経机には埃と線香の煙が何層にも重なっている。
手を離しても、ざらついた感覚が消えず、指先を何度も擦り合わせた。
🎮この物語は全5章予定の家族クエストです💫
汚部屋、段ボール、そして母の影
──女勇者Atashiの冒険はまだまだ続く。(たぶん)
また覗きに来てくださると嬉しいです🌕
🔖【次回予告】母の部屋は、祈りの迷宮だった。
次回、第4話「祈りに囚われた汚部屋」
ストック癖、仏壇、線香の匂い。
汚部屋の奥でAtashiは、
“母が閉じ込められた理由”のかけらを拾いはじめる──。
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