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『MiSide : ミサイド』感想:美少女ゲームの中に入り込むという妄想展開から始まる、ガチガチのサイコホラー。メタ、オマージュ、なんでもありの傑作恐怖体験(ネタバレ注意)

ゲーム内の要素について一部ネタバレしていますので、ご注意ください。




ヤンデレどころの騒ぎじゃない。
明確に殺しにくる、美少女ヒロイン。
そんな事実は露知らず、ゲームの中に入り込んでしまった主人公。
美少女との甘い生活かと思いきや、グロ、ゴア描写に『P.T.』オマージュ、SCP-173的な恐怖がスマホゲームという世界をベースに襲い掛かってくる。
ポップなビジュアルからは想像できないくらいの恐怖がそこに。
ホラーが苦手でも思わず唸る完成度。

『MiSide : ミサイド』、傑作です。


よくある、「普通のアドベンチャーゲームだと思ったらちょっと怖い演出があってドキッとするゲーム」だと思っていたんです。
いわゆる、ドキドキ文芸部的な。
怖いというより、鬱小説のような。
全然違ったんですよね。
ガッチガチにプレイヤーに恐怖をぶつけてくるゲームでした。

ゲームは一人称視点。
プレイヤーはゲーム内の部屋や、その他様々なマップを歩いて回り、物を調べたり、ヒロイン「ミタ」と話したりしていき、物語が展開していくという仕組みです。

最初は平和なスマホゲーム。
この時点では一人称視点ではなく、2次元、平面的なゲームプレイです。
タスクをこなして、お金を手に入れ、家具をふやすというスマホゲームをプレイします。

一方で、物を探していたらオーブンの中からチェーンソーが出てきたり、洗面台から包丁が出てきたりと不穏な空気は漂い始めています。

そしてそのまま何日間もそのスマホゲームを続ける中で、「ミタ」から好意を持たれ、気づくとなんとそのゲームの中の世界に入ってしまう主人公。

ここから一人称視点となり、2次元で見ていた世界を3次元で体験するとともに、ミタとの甘い生活が始まります…。が、それは一瞬で壊れます。
ミタとは料理を作ったり、テレビを見たりしたあとで、2人でカードゲームをすることに。

すると突如、クローゼットの中から音が。

何の音か確かめようとした瞬間。

いよいよ「ホラー」ゲームが始まります。



「ホラー」要素

本当に、可愛いキャラに騙されて、ちょっとヤンデレなキャラとのドキドキ生活かな~くらいの気持ちでプレイしてはいけません。過去に戻って自分に忠告したいです。

ガチでホラーを研究してきたな、というか、ホラーっぽい作りじゃなくホラーそのものを作ってきたゲームだ、と気づくまでに時間はかかりませんでした。

急に誰も触れていないドアがバタンと大きな音を立てて閉まる(びっくりする)、遠目から見ると首を吊った人型が見える(怖い)、鏡には自分の背後から迫ってくる恐ろしい人の姿が見える(振り返っても誰もいない)、ドアが勝手にバタバタ開いたり閉まったりする(ビビる)、流血描写、キャラクターが包丁を持って迫ってくる…。

とにかく嫌な描写のオンパレード。逆に言うとあまりJホラー的なじめっとした恐怖は割合として少ないかもしれません。
まあ全体的に嫌な雰囲気、恐怖は常にあるんですが…。

これ、いわゆる「スマホゲームの中の世界」という設定だからこそのリアリティというものがあると思うんですよね。

ゲームを進めていくとわかるんですが、このゲームの物語はアプリゲーム(ゲーム開発)という仕組みが設定の土台として存在することがわかります。ゲームだからこそ通用する物語というか。

それもあり、「起こることすべてがゲームの中の要素」と捉えることができます。これはつまり、「ゲームの世界だからこそ何が起こってもおかしくない」と言い換えることができます。

現実世界では急にドアがバタバタ動くことはありません。そこに何らかの因果関係がない限り。人が急に現れることもありません。
しかし、スマホゲームならありえます。フィクションの世界なので。

だからこそ怖いんです。
現実なら「ありえない」、つまり「発生するはずがないので恐れる必要がない」ことも、主人公が迷い込んだスマホゲームの中では「ありえる」かもしれない。「何が起こってもおかしくないのでどんなことが起こるかと心がビビってしまう」という気持ちが生まれてしまうのではないかと思います。

多くのホラーゲームは、様々な設定のもと、「現実世界」をベースにしています。だからこそ「現実世界+設定」でありえそうなことが土台となっています。
ところがこのゲームは、そもそも「ゲームの中の世界」だからこそ、「現実世界でありえそうなことしかおこらない」という前提が薄れるのです。

そのため、「現実世界で起こりえないこと」が起こっても、自然と脳がそれを普通のこと(ありえること)と認識してしまっていました。
もしかすると、ここのせいでより深く恐怖を感じていたかもしれません。

何より、全体的にビジュアルがゲームっぽいのです。
包丁や家具、小物に人物、全て…例えばバイオハザードシリーズとは比べ物にならないくらいゲームっぽい、ポップでおもちゃっぽい。
つまりフィクション、アニメっぽいのです。

可能性としては、ここも恐怖体験に寄与していたかもしれません。
リアルではないからこその「非現実感」、非現実感だからこその「なんでもあり感」。
とにかく、何が起こるかわからない、そして何が起こってもそういうものだと認識してしまっていたのが、今思えば恐怖を底上げしていたなと思いました。

さらに言えば、冒頭で書いた通り「ガチ」のホラーであることは間違いありません。
特に、他のゲーム等からのオマージュがそれを物語っています。
特徴的だったのが『P.T.』オマージュの仕掛け。

特定の短い廊下を何度も何度もループし、そしてループするたびに少しずつ変化する演出に、本当に怖さを覚えました。
また、SCP-173的な仕掛け、つまり「目で見ていれば動かないが、目を離した隙に近づいて襲ってくる」という敵から逃げるというエリアも恐怖でした。この仕掛けは、バイオハザード8でも同じようなシーンがありましたね。(DLCだったかな?)

SCPまたはバイオ、もしくはその他この仕組みを使った恐怖演出をもとに今回実装された仕掛けだと思います。つまるところ、やはり「ガチ」で恐怖演出を研究し配置しているのだと思いました。
もはや、ホラーが苦手なのに手を出してしまった、このゲームを甘く見すぎていた自分を愚かに思いました。



「怖い」部分だけじゃない、全ての質が高いゲーム

当然、ホラー部分の演出が素晴らしいだけではなく、それ以外の細かなところも手を抜いていません。
豊富なミニゲームはもちろん、日本語訳も問題なし、何より日本語フルボイスが素晴らしい。声優さんの演技も恐怖をさらに掻き立てます。

スマホゲーム、ゲーム開発が土台となっているストーリーは納得感がありますし、ただただ謎な空間や演出を体験するのではないところ、軸が通っているところは没入感を増しています。

アプリゲームを舞台としている以上、ある意味「メタ」的な演出もあり、また容赦ないグロ・ゴア表現もあり(そこだけはゲーム・アニメ的な見た目のためリアルより多少は緩和されていると思いますが)、ホラーとして一級品です。

何より一番怖いのは人間…。いや、このゲームにおいては「ゲームアプリの中のキャラクター」なのですが、先ほど書いた通りの日本語訳および日本語ボイスの影響もあり「人間の怖さ」、ある意味「人間という理性のある生き物だからこそ理性を超えている状態の恐ろしさ」を体験できました。
とにかく、ヤンデレどころの騒ぎじゃありませんでした。



終わりに

ちょっと心が抉られるのかなというような程度の軽い気持ちで触れてしまったのが最後、底なし沼のような恐怖に引きずり込まれた作品でした。
しかしそこに雑さはなく(多少のバグはあるようですが)、むしろ高品質さを感じられる作り。ホラーは苦手ですが、それ以上によくできたゲームとしての好印象が残ります。

私はクリアまで4時間半ほど。長いゲームではありませんが、しかしテンポよく様々なホラー体験、不思議な体験ができるゲームですので、ホラー好きな方はもちろん、メタ的なゲームや新進気鋭のゲームが好きな方はぜひ遊んでみてほしいです。

圧倒的好評に全くの異論なし。傑作でした。



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