カミナシ、設備領域で事業をはじめます 〜「見込みなし」からの再チャレンジ
こんにちは、カミナシの河内です。
先日、カミナシとして初めての設備領域の新製品「カミナシ設備保全」をリリースしました。この半年で新製品のリリースは3つ目となります。
今回のnoteでは、カミナシが設備領域で事業を立ち上げる背景と、新規事業を立ち上げる中で得た学び、リアルな苦悩や葛藤を書いていきます。
カミナシ全体のアップデートは、CEO諸岡がこちらに詳しくまとめています!
カミナシ 設備保全とは
カミナシ 設備保全は、設備ごとにデータベースを構築し、「設備のメンテナンス業務」をデジタル化するプロダクトです。
一見地味にみえますが外を見渡せば、世の中は設備だらけです。
ホテルや工場や倉庫など設備を持つすべての現場が対象になり得る超巨大なマーケットにエントリーしています。

少し想像してみてください。身の回りにある設備が止まると、我々の生活はどうなるでしょうか。きっと、満足な生活は送れなくなると思います。
そんな設備が壊れないように日々メンテナンスしている方々が私たちのユーザーです。
カミナシ設備保全は、現場で設備を支える方々の働き方をテクノロジーの力で、飛躍的に良くすることを目指しています。
実際にグローバルではユニコーン企業となるスタートアップも出始めており、成長機会も大きい領域です。
設備を取り巻く現場の課題
日本の設備を取り巻く環境は、厳しい状況にあります。
①アナログで非効率な業務
設備メンテナンス業務は、紙や何種類ものExcelでバラバラに管理されており、非常にアナログで非効率です。またデータが残っていないことも多く、設備情報がブラックボックス化しているのが現状です。
②設備の老朽化
バブル崩壊やリーマンショック以降、設備投資が縮小した影響で、20年以上稼働する老朽化した設備が増加。その結果、設備トラブルが頻発し、対応に追われる現場が多くなっています。
③技術者の高齢化
技術者の高齢化も深刻です。
特に設備保全部門では60代の社員の割合が高く、熟練技術者が定年退職していく一方で、新しい人材が育ちにくい構造になっています。
ある技術者の方からは「メンテナンスの技術や知識を引き継ぐには、5年以上かかる」と聞きました。技術伝承にも大きな課題が残ります。

なぜカミナシが設備領域に取り組むのか?
「機械」と「人」が協調する世界
よく「機械が現場の仕事を奪うのでは?」と不安の声を聞きます。
しかし、社会全体で人手不足が進む中では、単純なルーティンワークは機械に任せ、人は機械を使いこなす側へシフトすることが理想です。
このとき重要なのは、「機械 vs 人」ではなく、「機械 with 人」という協調関係を築くことです。機械が単なるコスト削減の手段ではなく、「ノンデスクワーカーの才能を解き放つツール」になれば、人材不足の課題にも対応できるでしょう。
そのため、現場の働き方をデジタルで変えることを目指しているカミナシが、この領域に取り組むことは必然でした。
既存ユーザーからの声
主力事業であるカミナシ レポートは設備点検帳票の記録のためにご利用いただくことも多く、「一緒に設備の管理もできないか?」という声をいただくことがありました。
カミナシの製品間でシームレスな体験を提供することで、15,000以上の現場で使われている顧客基盤を活かしたバンドル販売を加速させることが期待できると考えました。
事業立ち上げのリアル
ここまで読んでくださった方は、この事業がここまで順調に立ち上がってきたように感じられたかと思います。でも、実際には全然そんなこともありませんでした。
ここからはB面として、事業立ち上げのリアルな苦悩や葛藤を書いていきます。
検証失敗からのスタート
設備領域の事業は数年前に私が起案した内容を元に、CEO諸岡が顧客ヒアリングを行い、この領域での事業立ち上げの検証を行っていました。しかし、結論はこの領域は見込みなし。
22年頃に、新規事業の種探してのため、諸岡が設備保全領域のヒアリングや課題探索をやり、『結論、この領域は見込みが薄いと!』と結論付けた。
その後、この事業案は立ち消えになり、しばらく社内で話題にすら上がることがありませんでした。私自身も当時管掌領域が拡がっているタイミングで、マインドシェアを割くことはできませんでした。
その後、転機になったのはアメリカ・サンフランシスコで行われたイベント SaaStrにCEO諸岡、CTO原と3人で参加したことです。
当時はマルチプロダクト化をテーマにしたセッションが多く、毎日大量の情報を浴びては夜な夜な3人で部屋に集まって議論し、カミナシの事業戦略の勝ち筋を模索していきました。

そんな中、私の頭の中に浮かんでいたのは立ち消えになってしまった設備領域での新規プロダクトでした。
「もう1回やってみれば?」
私の考えを察したのか、そんな時CEO諸岡からもらった一言が背中を押してくれました。
しかし、一度は見込みなしという結論が下された事業です。何の根拠もない中、再検証をする意思決定にはハードルもありました。
他にも様々な案がある中で、経営としては当然優先順位を付けないといけません。「イメージを持てない」などの意見も当然あがりました。想像通り、マイナスからのスタートです。
葛藤と覚悟
少し時を遡ると、2020年にカミナシに入社して以来、空白になっているポジションを埋める形で兼務組織が増えてしまい、直近1年強は組織マネジメントやコーポレート、資金調達などに追われていました。お恥ずかしながら直接的に事業側の仕事にはほとんどの時間を使えていない状況。
この頃は、とにかく何かがこぼれ落ちないようにするのに精一杯で精神的にはきつかったのを覚えています。
そんなタイミングでVP of Administrationの信原や、CFOの吉田が続々と入社を決めてくれ、CROに着任した宮城にビジネス部門の管掌をお任せできたことで、少しずつ兼務組織が解消されはじめ、新しい事業に取り組める環境もできつつありました。
「よし、久しぶりに事業サイドに時間が割ける。」
そんな喜びもありましたが、既存事業も足元の目標達成に向けて、みんなギリギリの戦いをしています。
内心では、こんな葛藤もありました。
「自分は新規事業に時間を使っていて良いのだろうか」
「優秀な社員も増えた中、個人としてどこまでインパクトを残せるのか」
「新規事業は誰かに任せて、間接的にマネジメントする方が良いのでは」
「もしかすると、これは自分のエゴではないのか」
それでも、この事業がカミナシのプロダクト戦略の中で重要な役割を担うという直感があったこと。
そして、自分自身が現場の一次情報を持ち、経営チームと同期しながらプロダクトをリードすることが一度失敗をした事業を軌道に乗せる唯一の方法だと考えました。
そして、既存事業が必死に戦っている中、新規事業にリソースを割くからには、失敗はできない。必ずこの事業を立ち上げる。自分の心の中で退路を断ち、覚悟を決めてDAY1がはじまりました。
スケールしないことをしよう。
兼務でお手伝い的に関わってくれるメンバー2-3人と一緒にプロジェクトがスタートしました。
最初にはじめたことは、とにかく見込み顧客に会いにいくことです。大昔の記憶を呼び起こしながら、リストにメールを送り、新規でコールをはじめました。
「突然のご連絡失礼します。カミナシの河内と申しまして…」と、ドアノックをするところからのスタートです。

もしかするとインサイドセールスチームにアポ獲得をお願いしたり、既存顧客にお願いしてヒアリングをすることもできたかもしれません。
でもこの時は、楽をせずに泥臭いことを徹底すると決めていました。PMF前の鉄則「スケールしないことをしよう」です。
誰かにやってもらうのではなく自分でコールしてみる。既存顧客だけにヒアリングをして、市場を分かった気にならない。そうやって、市場の解像度を上げていきました。
そして、この時は営業資料がプロダクトであり、MVPです。
想像だらけの営業資料を作ってお客様にあてて、また営業資料を作り直すという作業を資料のバージョンが分からなくなるまで繰り返し、コンセプトを磨いていきました。
(今見てもひどい内容ですが、Version 1の資料は的外れなものでした)
流れが変わった日
戦略の輪郭が見えてきたタイミングで、専任メンバーがアサインされました。
そんな時、初代PMとして初期立ち上げを推進してくれた@96kemu96 が、ハウスリストに企画概要を簡単にまとめたメールを配信しました。もし興味を持ってくれたら、ショートミーティングをお願いしたいと記載した内容です。
このメールが流れを変えることになります。配信対象者のうち約5%から「話を聞きたい」という返信をいただき、カレンダーは一夜にして大量の商談で埋まりました。そこから、お客様とひたすら商談をする毎日がはじまります。
※ちなみに、当然ながら経営としての仕事や他担当組織もあったので、両立は大変でした。しばらくやりたくない・・・
この時には、具体的な要件検討にも入っていたため、チームで立てた仮説を画面モックに落とし商談でのヒアリングで検証を繰り返していきました。

徐々にソリューションも磨き込まれ、
「書いてあることがすべて自社の課題そのままです」
「これはうちのために考えたプロダクトですか?」
「いつ出ますか?早く使いたいです」
こんなポジティブな反応も増えてきました。チームにも手応えが出始めます。
"現場ドリブン"なサービス開発
その後、正式に開発が決定し、β版の開発に向けて動き始めます。
エンジニアチームの人数が増えたり、初代PMが産休に入り二代目PM @migii000に引き継ぎがあったことから全員のドメイン理解を上げることに注力しました。
やったことは、「全員がユーザーの一次情報に触れて、共通言語を作ること」です。
「A社の運用はこうなっていて、こういう課題があって、わかりづらいですかね?え〜っと」と特定の誰かが説明をするよりも、チーム全員が共通言語となる一次情報を持っておけば「あそこで一緒に見た、あの課題の件なんだけど」と話せば、一発でイメージを共有できます。
そのために、エンジニア, デザイナー, PMなどものづくりに関わるメンバー全員で、全国行脚をして現場に生の課題を確認してまわりました。
展示会にもエンジニアやデザイナーが参加し、直接プロダクトのデモを行ってお客様の反応に一喜一憂しました。
まさにカミナシのバリューでもある「現場ドリブン」なサービス開発です。

現場で浴び続けた一次情報をもとに、ドメインモデリングを実施。
全員が高い解像度でユーザーを理解し、職能横断で共通言語を話せる強いチームができてきました。
その結果、驚くほど爆速で自律的なサービス開発を進められています。(いま私は開発にほとんど関わっていません)

ついに正式リリース
そして、25年2月3日に正式リリースを迎えることができました。リリース前の段階からお申し込みを多数いただいており、順調なスタートを切れています。
ここ半年で進んだマルチプロダクト化により、カミナシ設備保全の売上も含め新規受注のバンドル販売率は70%を超えています。
当初の狙い通り、カミナシ設備保全はプロダクトポートフォリオ全体における重要な存在になりつつあります。

最後に
振り返ってみるとこの1年弱で200社近い企業様にヒアリングを重ね、毎週のように現場訪問をしてきました。

その中で感じたのが、設備メンテナンスの仕事は「安定稼働して当たり前で、何かあったら責められる」仕事だということです。
設備を支える高い専門性を持った技術者の方々が、日々故障に追われて疲弊する毎日を送っています。少し寂しそうな顔で「私たちの仕事は日の当たらない仕事だから」と自嘲気味にお話される方の顔は今でも忘れられません。
そんな現場の働き方をテクノロジーを通じて変え、ノンデスクワーカーの方々が報われる世界を作っていきたいです。
ここまで「事業立ち上げ」というテーマでnoteを書きましたが、正式リリースしたばかりで、まだまだこの事業は立ち上がっていません!笑
ただ、これから日本中の現場にある設備をデータベース化し、周辺事業をどんどん拡張していくプラットフォームへと進化させていく夢はあります。
一緒に作りたいという方・興味があるという方は、ぜひ一度お話させてください!
今回は以上です。
定期的にカミナシやSaaSスタートアップに関する発信をしているので、よろしければフォローしてください。
Twitter:@yusuke_kawauchi
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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