孤独を感じる人、寄り添いたい人
超ベテラン女性職員の孤独
時代の流れは時として残酷なまでに人を孤独な気持ちにさせます。
同じ部署のメンバーに、入社から一貫して総務畑で働いてきた超ベテランの女性職員の先輩がいます。
男女平等の概念がまだ全く定着していなかった時代から、長年総務畑一本で働き続けてきた先輩女性職員が昨年秋に60歳を迎えました。彼女は定年再雇用員として新たな立場での働き方や大きく下がった賃金に対し、モヤっとした感情を抱えていました。
わたしは彼女と仲が良い。
面倒見がとてもよく、わたしが出向社員として着任した際に、この部署でのいろいろなことを丁寧に教えてくれたのも彼女でした。
明るく、前向きで、常に相手の立場に寄り添った対応をするスタンスは、多忙な部署のムードメーカとして周囲を明るく照らし、他部署の職員からの信頼も厚い。
そんな彼女ではありますが、PC周りや新しい法制度改正への順応度という点においては本人も苦手意識を抱えており、わたしが比較的得意とする分野と彼女の苦手な分野は補完しあえる関係にあり、その逆もまたしかりなのでした。
そんなこともあり、お互いに頼り頼られる関係が自然と構築されていったのでした。
会社としての客観的な評価としては、実務に明るい側面は高く評価されている反面、業務が属人化してしまっていることから、そのスキルや業務手順の承継が課題として、上司からは抱えている業務の洗い出しと業務手順のマニュアル化を指示されていました。
両者のやりとりを、第三者目線で客観的にみているわたし視点からは、両者それぞれの立場で問題を抱えているように見えました。
【上司側の問題点】
・長年にわたり業務をまかせっきりにし、彼女の抱える業務を把握していない。
・指示しっぱなしで、具体的な作業期限の提示や進捗管理を行っておらず、長年にわたり事実上放置している。
【女性職員側の問題点】
・業務の洗い出しと手順のマニュアル化について、「どうやればよいかわからない」し、「催促もされない」ことから放置している。
こういった問題は、会社の規模の大小を問わず、ありがちな問題なのかもしれません。
定年再雇用という立場になり、彼女の心境に変化が起きていました。
”私が退職したら、この業務、だれが引き継ぐんだろう?”
孤独や不安に寄り添いたいと感じる出向社員
業務の属人化によるブラックボックス化は、どんな会社にとっても大きなリスク要因です。
組織として、そのような状態の解消に向けた具体的な取り組みを行うことは重要かつ比較的優先度の高いタスクであるというのがわたしの認識です。
また、そんな状態に対し、不安と危機感を覚えている彼女の感情を考えたとき、だれかが寄り添い、サポートをおこなわないと、メンタルへの悪影響やモチベーションの低下を招き、リスクが顕在化する危険性が高まります。
誰もやらないし、やりたくない。
ならやるしかないでしょ!
まずは、彼女の感じている孤独感や不安感に対して、じっくり話を聞く機会を設け、共感し、サポートする意思を示すことから始めました。
幸いとても良好な関係が築けていたこともあり、素直な気持ちを打ち明けてくれました。
抱えている業務の洗い出しやマニュアル化をこちらで引き取り一気に処理してしまうのが手っ取り早く、また、双方の負担やかかる時間のコストの最小化の観点からは最適解なのかもしれません。
ですが、彼女はやる気がないのではなく、やり方がわからないことに悩んでいるのです。
そうであるならば、
「わたしの実務経験の浅さから、チェックのポイントがいまいちわからず困っているので助けてほしい」
ことを伝え、普段使用しているというチェックリストを開示してもらい、そのチェックリストを業務フローに沿って「わたし用にアレンジしてほしい」とヘルプを求めるアプローチを行いました。
元来面倒見のよい彼女ですので、困っている人がいれば助けてあげたいという心理が働きます。
出来栄えとしては50点くらいかもしれませんが、彼女が自分の手で業務フローをマニュアル化する作業をはじめて実行にうつせたという事実はとても大きく、また、誰かの役に立てるという思いは、抱えていた孤独感をやわらげ、同時に属人化している業務を共有できるんだという事実を実感することで不安を和らげる効果が表れはじめました。
ここまでくればあとはもう簡単な作業です。
わたしが当該業務を行うにあたり、そのチェックリストに沿って作業を行うと、
「この辺がよくわかりません」
「これは具体的にはどんな資料と照合すればよいのでしょうか」
そういった問いを重ねることでチェックリストの精緻化はあっという間に進みました。
この作業をまた別の業務に関して同様な手順で繰り返し行っていくだけです。
少し遠回りではありますが、この際そこは大した問題ではありません。
彼女の孤独感や不安感を解消しつつ、いわゆる現役時代のように誰かの役に立っているという実感はモチベーションの立て直しに非常に有効でした。
彼女が抱えていた属人化業務のチェックリスト化が半分ほど完了したタイミングで、わたしの意図や感じていたことを打ち明けると、案外早めの段階でわたしの意図に気が付いていたとのことでした。
上司から見えている世界は、彼女がなぜか急にやる気をだし、自発的に属人化業務の解消に動き出したように見えているようです。
これはしめしめですね。
思いのほか意図したとおりに物事が進んでいく様は、わたし自身の評価につながらずとも、とても爽快な気持ちが得られます。
決してスマートなやり方ではないのかもしれませんが、長年少しも動かなかったことが着実に成果を見せているというのは組織にとってもメリットであり、わたしなりにはこれでよいのだとおもっています。
皆さんは、身の回りで孤立している仲間はいませんか?
ほんの少し手を差し伸べることで孤立から抜け出すきっかけを作ることはきっと可能なはずです。
大切な仲間を孤独なまま放置せずに、皆さんなりのやり方で寄り添ってみてはいかがでしょうか?
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