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雪で飛行機の出発が遅延。そのとき機内は

先日は羽田と新千歳空港の往復便の乗務。私はチーフパーサーを務めておりました。

その日の新千歳の天候は雪。
欠航便が出るような大雪ではありませんでしたが、国内屈指の充実度を誇る冬季用設備がフル稼働しており、北海道という強大な大自然のただ中にありながら国内第5位の利用者数を実現している圧巻のウィンター・オペレーションが展開されていました。

雪で白く煙る新千歳に着陸して往路便の運航を終え、羽田への復路便の出発準備を進めていたところで、コックピットから出てきた機長から連絡がありました。

「EDCTがかかった。指定時刻は11:35。カンパニーからボーディング開始を10:45とするよう指示がきている」

EDCT(Expected Departure Clearance Time)とは航空管制からの「貴機は○時○分に離陸せよ」という、特定の航空機の離陸時刻を指定する指示です。航空路の混雑に対処するためなどに行われます。

EDCTがかかった理由は、おそらくRwy01Lの除雪作業が開始されたためかと思いました。新千歳空港は2本の滑走路があり片方を離陸、片方を着陸に使うのですが、1本の滑走路に除雪が入ると残りの1本で離着陸を同時に行うことになるため、上空を飛んでいる着陸機や、空港にいる離陸機が混雑してしまいます。

本来では、
搭乗開始は10:00
出発予定時刻は10:20
離陸予定時刻は10:40

しかしEDCTにより、
搭乗開始が10:45
出発予定時刻が11:05
離陸予定時刻が11:35

この時点で大幅な遅延が確定してしまいました。

すぐにドアの近くにおられた機側担当のGSさんに状況を報告します。GSさんは無線でゲート担当さんなどにコンタクトしながら対応に入られます。その後もお客様への周知内容などについて、都度GSさんとブリーフィングを行っていきます。

ほどなくして機長より
「EDCTが変わった。新たな指定時刻は11:25。カンパニーからはボーディングを10:35から始めるよう指示がきた」
との報告。

これで遅延を減らせると思いきや、続けて機長から相談がありました。

「出発時にデアイシングが必要だが、防雪効果の持続時間が限られているうえ、雪が強まると持続時間も短くなる。持続時間内に離陸できないと駐機場へ引き返さなければならない。デアイシング完了から離陸時刻までを短くし、確実に離陸するためにボーディングは10:45から始めたい」

デアイシングとは、飛行機に防雪・防氷用の特殊な液体を散布する作業のことです。

デアイシングには、散布した液体の効果が持続する見込み時間「ホールドオーバー・タイム」というものがあります。効果が切れると再び飛行機に雪がつもってしまい、離陸できずに駐機場への引き返し(GTB)になります。

カンパニーの指示どおりに10:35に搭乗開始し、10:55にデアイシングを完了して出発し、11:25に離陸する場合、デアイシングから離陸までは約30分です。

しかしこの間に雪が急速に強まったり、空港混雑で滑走路手前で待たされ離陸が11:25より遅れたりする可能性もあります。その間に効力が切れたら離陸できません。機長はボーディングを遅らせ、デアイシングから離陸までを約20分とすることで、GTBのリスクを少しでも減らすためのマネジメントを行ったわけですね。

私は実際、デアイシングして出発したものの雪が強くて主翼に積雪してしまいGTBしたあげく欠航となった経験があるので、この意思決定には大いに納得です。

その時のエピソードはこちら。


私の経験も踏まえて機長の提案について再びGSさんと相談し、OKをいただきました。「遅延」と「GTB」が天秤にかかったら、GSさんとしても「遅延の方がマシ」となるのではと思います。ゲートで搭乗を待っているお客様の反応が心配だったのですが、いまのところ声は上がっていないとの事でした。窓から見える一面の雪景色や、周囲の飛行機も軒並み遅延してたのも幸いだったのかもしれません。

10:45にお客様の搭乗開始。
ここからは我々の仕事です。お客様の搭乗が完了し、デアイシングを終えてスポットを出発します。誘導路も積雪しているため慎重なタクシーでRwy01Rへ向かいます。窓の外は真っ白。窓を見ると、白く煙る景色のなか横に見えるRwy01Lでは何台もの作業車が黄色いランプを点滅させながら除雪を行っています。

Rwy01の手前に到着。ここでパイロットがコックピットからキャビンに出て目視で主翼をチェックし、積雪がないかどうか最終確認を行います。雪が積もってみたらアウトです。緊張の一瞬。前回はこれでGTBが決定してしまいましたが、今回はどうか?

問題なし!!

滑走路に進入し、停止状態でエンジンを一定推力で数秒間回して暖気したのちパーキングブレーキOFF。スタンディング・テイクオフ。無事に離陸し、遅延は挽回できなかったものの羽田へのフライトを完遂できたのでした。

雪の中、デアイシングや貨物搭載などをしてくださったグラハンさんや、お客様の搭乗までゲートに立ってくださっていたGSさんに心から感謝です。

今日も新千歳は荒れているようです。
安全第一。今日も持ち場で、がんばりましょう。

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