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楽天AI誕生、データ主権戦略で米IT大手に挑戦状

日刊AIゆたさん新聞


【主要面】楽天AI事業参入、「楽天経済圏」強化で差別化図る

楽天グループが人工知能(AI)事業への本格参入を発表した。2025年を皮切りに、電子商取引や金融サービスなど既存事業で蓄積した顧客データを活用したAIソリューションの開発を加速する。グーグルやアマゾンなど先行する米IT大手との差別化を図り、「楽天経済圏」の競争力強化を目指す。

「AIの民主化」で日本のAI大国化を目指す

楽天グループ常務執行役員の小林裕介氏によると、楽天はこれまでEC、フィンテック、モバイル分野で民主化を進めてきたが、現在は「AIの民主化」を目指している。これは事業者だけでなく一般ユーザーも含めてAIを利用し、自分でも使える環境を作ることを意味する。

独自調査によると、AIを活用している中小企業は約16%に留まっており、日本のAI活用はまだ進んでいない。楽天は「AIを使うことが目的ではなく、ビジネス成長や効率化の手段としてAIをどう活用するか」のイメージ浸透を課題として認識している。

データ主権で競合と差別化

楽天AIの特徴は、楽天エコシステム内の膨大な顧客データを自社管理下で活用する点にある。従来の汎用AI技術とは異なり、以下の統合データ分析を実現する:

  • 楽天市場:購買履歴、商品評価、検索パターン

  • 楽天銀行:金融取引データ、資産状況、決済パターン

  • 楽天モバイル:通信パターン、位置情報、アプリ利用状況

  • 楽天証券:投資行動、リスク許容度、市場関心度

外部AIサービスに依存せず、顧客データの主権を維持しながらAI技術を活用することで、プライバシー保護と競争優位性を両立する戦略だ。

具体的なAI活用で大幅な効率化を実現

楽天は既に各事業でAI活用を本格化させている:

楽天市場では、商品画像の背景自動生成や商品説明文の自動作成により店舗運営を支援し、約60%の出店店舗が利用経験を持つ。セマンティック検索の導入により検索ヒット率が最大98.5%に向上した。

楽天トラベルでは、コンシェルジュのようにユーザーの曖昧な要望から最適な宿泊施設を提案する機能を試験導入。将来的には周辺観光情報も組み合わせたトータルな旅行プラン提案を目指す。

社内活用では、社員専用AIツール「Rakutenians」を1万3000人以上が利用し、1万6000以上のカスタムAIが業務特化型として運用されている。開発工程でのAI活用により最大80%の工数削減を実現した事例もある。

「トリプル20」目標で2倍の利益創出へ

楽天は「トリプル20」という明確な目標を設定している。マーケティング効率、オペレーション効率、クライアント効率(取引先店舗など)の3つの領域でそれぞれ20%の改善を目指す。AI活用により、2025年には2024年の2倍の利益創出を目標としている。

経産省支援でAI開発加速

楽天は経済産業省および国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による生成AIの開発力強化プロジェクト「GENIAC(Generative AI Accelerator Challenge)」の第3期公募に採択された。2025年8月より「長期記憶メカニズムと対話型学習を融合した最先端の生成AI基盤モデルの研究開発」を開始する。

OpenAIとの協業と独自LLM開発の両輪戦略

楽天は2023年にOpenAI社と協業を開始し、最新技術の活用とフィードバックを行っている。同時に、最新技術のキャッチアップと社内開発力向上、そして日本のAI業界を盛り上げる目的で独自LLMの開発も進めており、オープンソース化も視野に入れている。

資金源は「セルフファンディング」で確保

AI事業への投資資金について、楽天は2024年度に「セルフファンディング」を実現している。19四半期連続の赤字が続く中でも、以下の資金源により投資資金を確保:

  • インターネットサービス:楽天市場などeコマース事業からの安定収益

  • 金融事業:楽天カード、楽天銀行、楽天証券からのキャッシュフロー

  • 楽天モバイル独自調達:2024年8月にセール・アンド・リースバックで1,700億円を調達

通信キャリア各社もAI投資加速

楽天のAI参入は、国内通信業界全体のAI競争激化の象徴でもある。主要キャリア3社の投資状況は以下の通り:

ソフトバンク(最積極的):1,700億円(2023-2025年度)を投資し、1兆パラメーター超の国産LLM開発を目指す。OpenAIとの提携によりAIエージェント事業も本格化。

KDDI(計算基盤重視):1,000億円(4年間)を投じて大規模計算基盤を整備。ELYZAとの提携により国内最高性能LLM開発を推進。

NTTドコモ(実用重視):NTTグループのLLM「tsuzumi」を活用し、20種のAIエージェントによる業界別ソリューションを展開。

楽天の参入により、「ソフトバンク・KDDI・ドコモ・楽天」の4社によるAI開発競争が本格化する。

「Rakuten AI Optimism」で戦略を発信

楽天は2025年7月30日から8月1日までパシフィコ横浜で「Rakuten AI Optimism」を開催する。三木谷社長の基調講演、楽天グループのAI関連ビジネスのアップデート、著名人によるセッション、楽天が開発したAIサービスや機能を体験できる展示ブースなどが予定されている。

【記者の視点】
楽天のAI戦略で最も興味深いのは「AIの民主化」というコンセプトです。技術的優位性よりも「誰でも使えるAI」を重視する姿勢は、楽天らしいアプローチと言えます。社内で1万6000以上のカスタムAIが運用されているという事実は、AI活用の実用性と浸透度の高さを示しています。経産省支援により計算リソースの負担が軽減されることで、「AIの民主化」戦略がより現実的になるでしょう。

【編集長の目線】
楽天AI戦略の本質は「技術のデモクラタイゼーション(民主化)」にあります。OpenAIとの協業と独自LLM開発という両輪戦略、そして「トリプル20」という具体的な数値目標は、楽天のAI戦略が単なる技術投資ではなく、事業成長に直結する戦略的取り組みであることを示しています。「2025年に2024年の2倍の利益創出」という野心的な目標は、AI活用による生産性革命への強い意志を表しており、日本企業のAI活用のベンチマークとなる可能性があります。

【主な情報源】

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