十角館の殺人ってやっぱり面白い―読者を静かに追い詰める、孤島ミステリの極致―
今回は小説の紹介です。
本日紹介するのは、
新本格派作品であり、
新本格ムーブメントを起こした一作。
綾辻行人先生(著)
十角館の殺人です。

少し前に
fuluで実写ドラマ化が成されて話題となりました。

実は今作が発売されたのはなんと1987年。
現在(2026年)から遡ること
約39年前の作品なんです。
なのに今もなお語り継がれる館シリーズの第一作目。
その所以はやはり「あの一行」ではないでしょうか。
今回は既にご存じの方もそうでない方にも向けて
一切ネタバレ無しでご紹介していきたいと思います。
概要

舞台
物語の中心となるのは、
外界から完全に隔絶された小島、角島。
そこに建つ奇妙な建築物「十角館」で、
大学のミステリ研究会のメンバー達が合宿を始める。
電波は届かない。
船が来るのは数日後。
そして島には彼ら以外に誰もいない——はずだった。
登場人物と関係者、設定
ミステリ研究会のメンバー達は海外ミステリ作家の名前をコードネームとして名乗る。
孤島(角島)
・ポウ(実在作家名:エドガー・アラン・ポー)
・カー(実在作家名:ジョン・ディクスン・カー)
・エラリー(実在作家名:エラリー・クイーン)
・ヴァン(実在作家名:S・S・ヴァン・ダイン)
・アガサ(実在作家名:アガサ・クリスティ)
・オルツィ(実在作家名:バロネス・オルツィ)
・ルルウ(実在作家名:ガストン・ルルー)
本土
・島田 潔(しまだ きよし)
・江南 孝明(かわみなみ たかあき)
・守須 恭一(もりす きょういち)
・中村 紅次郎(なかむら こうじろう)
・吉川 政子(よしかわ まさこ)
・島田 修(しまだ おさむ)
関係者
・中村 青司(なかむら せいじ)
・中村 和枝(なかむら かずえ)
・中村 千織(なかむら ちおり)
・北村(きたむら)
・吉川 誠一(よしかわ せいいち)
物語構成
「島パート」と「本土パート」が交互に進む。
孤島では不可解な出来事が連鎖し、
本土ではとある人物が過去の事件を手がかりに真相へ迫っていく。
館シリーズ第一作目へ入館
綾辻行人先生は本作だけでなく、
「〇〇館の殺人」として
現在9作品の館作品を書かれています。

また、現在は第10作品目になる
「双子館の殺人」を執筆中です。
十角館の殺人はその第1作品目というわけです。
その記念すべき最初の館の扉を開いて入館です。
☆
読む前の印象
私は元々読書や活字というものが苦手でした。
それこそ本なんて漫画しか読まない人でした。
それもあって今作は読み始めるまで時間がかかりました。
だって読書って疲れるし飽きるし、
そもそもじっとしていられない。
それが本作を読む前の私の本音でした。
☆☆
なぜ読もうと思った?
綾辻行人先生は館シリーズの他に
アニメ化と実写映画化された
Anotherを書かれています。
きっかけはその作品でした。
ものの見事に、してやられるほどに面白かったです。
そこで他の作品も読んでみたいと思ってこの作品を手に取りました。
☆☆☆
読むまでの葛藤
当時までまともに読書をしたことがない、
読んでもライトノベルだけ。
そんな人にとってミステリ作品という
固い印象の作品の表紙をめくるのは気が進まず、
最初の1ページを読むのにも心の準備が足りなく、
そのスタートラインに立つまでが長かったです。
読むのは明日にしよう
今は読む時ではない
というように
活字と向き合うことに対して
抵抗感と壁の高さを感じていました。
しかし、とあるきっかけにより
やっと読む決意が固まって入館を果たしました。
とあるきっかけ
それはまたのnoteで書くことにします。
☆☆☆☆
実際に読んでみて
なぜ自分は今まで読んでいなかったのだろう。
どうして読むのを渋っていたのだろう。
読了後に感じた見事さと
「あの1行」の凄まじさをこの身に感じ、
過去の自分がいかにもったいない葛藤をしていたのかということを痛感しました。
その衝撃はまさに稲妻に打たれたかのようで、
脳から全身へ駆け巡る衝撃の閃光を
今も忘れることが出来ません。
当時はその「あの1行」から先はイッキ読みでした。
そのせいで次の日は見事に寝不足でした。
読了後の感想

「見事すぎて言葉が出ない」
これが直後の感想でした。
そしてこの余韻は次の日まで続き、
私の脳内に強く刻まれました。
登場人物の動かし方、
巧みな文章構成、
全てを一気に回収してひっくり返すどんでん返し。
圧巻とはまさにこのことだと
この時に初めて感じました。
これがミステリ作品。
これが館シリーズ。
これが読書の面白さ。
今まで感じていたライトノベル以外の読書への抵抗やミステリ作品という固いイメージが払拭され、
「次が読みたい」に変わりました。
そうして私は次の館へ入館することを決め、
躊躇っていたミステリ作品の読書が
好きになりました。
面白い作品は人の価値観を大きく変える。
そんなことを経験した一作でした。
以降も館シリーズを読み進めて行くわけですが、
他の館についてはまた別の機会に。
読んで感じた魅力と刺さる人

作品に関しての魅力や求めるものは
人それぞれだと思います。
そんな中で私が感じた魅力と刺さる人を考えました。
魅力
1.フェアプレイ精神に基づく伏線の美しさ
ミステリ作品において、こんなルールがあります。
・ノックスの十戒
・チャンドラーの九命題
・ヴァン・ダインの二十則
過去に提示された
ミステリ作品を作る上での決まり事です。
読む中でこれらを遵守する方もいれば、
特に気にしないという方もいると思います。
しかし、やはりフェアプレイは大事だと思います。
今作は特にフェアプレイがしっかりとされています。
それこそ派手なトリックを成立させるため、
終わりと印象が良ければいいという
後出しのような反則はありません。
解決のための材料は全て提示されている。
あとはどうやって解くのか。
読者が自力で解こうと思えば解けるものになっています。
それこそがまさにフェアプレイで、
だからこそそこを重視する方に刺さると思います。
また、伏線も漏れなく回収しています。
もちろん強引さはなく自然的にされるもので、
まさに芸術のように華麗でした。
☆
2.クローズドサークルによる緊張感
孤島と本土という形で物語が展開されているため
何かが起きている孤島は
完全にクローズドサークルと化しています。
外界から遮断されて絶対に逃げられない。
犯人はこの中にいると確定される。
じわじわと進んでいく展開に緊張が止まらない。
外からの横やりや新たな登場人物がいないため、
じっくりと推理出来ます。
そしてページをめくる感触を手や指先に感じ、
刻々と進む展開に息を飲むのもまた
魅力の一つです。
☆☆
3.どんでん返し
たった一文で世界が反転する衝撃と、
全てを理解した時に感じる「やられた」という感情。
悔しいけれど清々しい、
思わず「お見事」と言いたくなる作品です。
そこに反則はありません。
あるのは巧みな仕掛けと読み手だけです。
全てが一瞬でひっくり返る衝撃もまた魅力です。
凄まじいとはこのことだと感じるでしょう。
どんな人に刺さる?
1.本格ミステリが好き
トリックや謎解き、頭脳派名探偵の活躍が主軸。
それが本格ミステリ作品です。
今作にも驚きのトリックや聡明な名探偵がおり
明らかになっていく事柄を頼りに推理を進めていきます。
全てを解き明かし、
最後には謎解きで犯人を追い詰める。
そんな作品が好きな方に刺さると思います。
☆
2.王道設定が好き
今作は「島×館×連続殺人」という王道展開の作品です。
王道がゆえに作品に入りやすく
初期理解をしやすいのもありがたいところです。
だからこそ作品の雰囲気や展開に没入しやすく、
複雑な設定が無くてシンプルなので作品に集中出来ます。
王道って聞くと
使用され尽くした展開とトリックで萎える
なんて思う方もいると思いますが、
今作はそうではありません。
間違いなく衝撃を受ける展開が待っています。
ですので、王道ではあるけれど王道すぎない。
そんな新しい王道を好む方にも刺さると思います。
☆☆
3.予想外が好き
ミステリ作品を読む多くの方は
自分でも推理をしながら楽しまれると思います。
そこで答えにたどり着いてしまうと嬉しいけれど
どこか物足りない。
そんな経験はないでしょうか。
まずそもそもとして今作での推理は難しいです。
なので物足りなさはないと思います。
次に、きっと誰もが推理を外すでしょう。
かくいう私も外し、最後はしてやられました。
予想外の推理と真相。
今まであった物足りなさが消える作品です。
よって、そのようなことに期待される方にも刺さると思います。
小説と映像作品どっちから入るのがオススメ?

あくまで私の意見ですが、
本作は小説から入ってください。
そして「あの1行」の凄まじさを経験してほしいです。
fuluの映像化作品ももちろん面白いですが、
文章で感じる衝撃と映像での衝撃は別物です。
私はもちろん小説から入りましたが、
それで正解だと確信しました。
なぜなら、映像化したことでどのように表現されるのかだったり小説との差を感じながら二重で楽しむことが出来たからです。
確かに活字の小説は抵抗があるでしょう。
先に書いた通り私もそうでした。
しかし、有名な「あの1行」。
今作は真髄を理解してこそだと思うので
是非とも小説から入ることを強くおすすめします。
また、今作は小説とドラマ作品だけでなく
漫画版もあります。
それでもやはり始まりは小説からが良いと思います。
さいごに

十角館の殺人は刊行されて39年。
そんな年月が経っても色褪せない、
むしろ日に日にその魅力が上がり続けています。
映像化不可能を言われた今作。
それが時を超え、満を持して映像化が決まった。
その時は嬉しさはもちろん、
「どうやって?」という気持ちもありました。
それほどまでに小説としての完成度が高く、
小説ならではの技法がふんだんに使われています。
しかし、それを可能にした技術は多くの人に反響を与えました。
よって今作はこの先もミステリ作品において
「新本格派ミステリ」として語り継がれ、
評価が上がり続けるでしょう。
既にではありますが、
まさに不朽の名作になるに違いありません。
そんな十角館の殺人
是非とも小説から入館ください。
それが今作をより楽しむ順路であり、
館見取り図に示された解なのです。
そして退館した時にはその衝撃を胸に
次の館へ足を運んでいただけたら
このシリーズはより面白くなっていきます。
☆
今回の書籍紹介noteは以上となります。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
これからもミステリ作品やライトノベル、
漫画やその他ジャンルに至るまで紹介していきますので、今後ともよろしくお願いします。
それではまた次回お会いしましょう。
ありがとうございました。

