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光る家の前で、私は深呼吸をした

クリスマス帽子のまま、帰り道

保育園の発表会の帰りに被せてもらったサンタ帽子。子どもはそれをまだ気に入っていて、帰り道も取らないと言いました。私はコートの前をぎゅっと閉め、片腕に子どもを抱え、もう片方の手でスマホを握ります。

通知は冷たい音を立てて増えていくのに、こちらの体力は増えません。

職場では「急ぎだから」と言われ、急いだら急いだで「雑」と言われました。定時で帰ろうとすると、笑って「母親って大変だね」と言われます。優しい言葉みたいな顔をして、責任だけが増える合図。

シングルであっても、ワーママであっても、理不尽はいつも同じ形をしています。こちらの事情を理由に、こちらの価値まで縮めてくる。

あの家は、別世界の灯りをしていた

帰り道、いつもより一本だけ遠回りすると、坂の上に大きな家が見えました。

雪が静かに降って、屋根の輪郭に沿ってイルミネーションが瞬き、玄関にはリース。庭のツリーは宝石みたいに光って、窓の中はあたたかい色で満ちています。どこかで花火が上がって、夜空が一瞬だけ明るくなる。

子どもが私の肩で身じろぎして、窓の光に目を向けました。

「きれい」

その一言が、今日一日のささくれをそっと撫でました。

私は、門の外。よその家。招かれていない場所。なのに、そこに立っているだけで、胸の奥が少しだけほどけていくのが分かりました。


#ハルマガメイト / #PolloAI

“一時の避難”としての憧れ

その家の中には、きっとココアがあって、誰かが「おかえり」と言って、テーブルの上には温かいものが並んでいる。そんな想像が勝手に浮かびます。

でも不思議と、妬みは出てきませんでした。

出てきたのは、__許可__でした。

今日は頑張った。もう十分だ。今だけ、あの光を借りていい。

私の心には、ときどき「家」が必要です。現実の家が狭いとか、古いとか、そういう話ではありません。心が休める形を、外側から一瞬だけ借りる。誰にも迷惑をかけない、短い避難。

よその家の光は、私にこう言っているみたいでした。

「あなたが落ち着くまで、ここで息をしていいですよ」

花火が消えたあと、残るもの

花火はすぐに終わります。空はまた暗くなり、雪の音だけが戻ってくる。

でも、暗くなっても、家の灯りは消えませんでした。ずっと同じ速度で、控えめに、確かに。

そのとき、ふと思いました。

私の家にも、灯りはある。

豪華じゃなくていい。完璧じゃなくていい。今日の私が帰って、子どもが眠れて、明日また出ていける場所。そこに灯りがあるなら、それはもう“家”です。

私は子どもの頬に触れて、帽子の白い縁を整えました。

「帰ろうか」

子どもは眠そうにうなずいて、私の首に腕を回しました。小さな体温が、いちばん強い現実でした。

自分の家に持ち帰れる、小さな光

帰宅してから私は、玄関の電気をいつもより少しだけ明るくしました。コンビニで買った小さなチョコを、マグの横に置きました。たいしたことではありません。でも、今日の私には十分です。

憧れの家を眺めることは、負けではありません。逃避でもありません。
__理不尽の中で折れないための、上手な間合い__です。

もし今夜、あなたもどこかの灯りに目を奪われたなら。

その光は、あなたが弱いからではなく、あなたがちゃんと生きているから、見えるのだと思います。

そして、明日もまた耐えるなら。耐えるだけで終わらせないために。
今夜は、たったひとつだけ、自分の家に光を持ち帰ってください。

あなたの現実は、あなたが思うより、ずっと尊いです。

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遊星ナオミ_【ナラティブ・オプショナリスト】 よろしければ応援お願いします! いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!