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【毎週ショートショートnote】七夕の歩幅(411字)

 七夕の夜、願いはあなたに会うこと。歩いて約束の場所へ向かう。
 でも一歩ごとに、記憶をひとつ失う。失った代わりに、俺とあなたの距離が縮まる。
「彼女に会いたい」
 ただそれだけだ。年に一度のチャンス。
 一歩。あなたの形を忘れる。
 二歩。声を思い出せなくなる。
 三歩。名前が曖昧になる。
 それでも足は止まらない。
 会えればいい。それだけでいい。
 五歩目で、もう顔が思い出せなかった。
 それでも「大切だった」という感覚だけが残っている。
 七歩目。目の前に人影が現れる。
「あの、はじめまして」
 俺は咄嗟に挨拶をした。
「……ええ。はじめまして」
 女が微笑む。知らない顔なのに、胸が強く締めつけられる。
「この天の川。年に一回しか来れないんです」
 柔らかくて優しい声が俺に届いた。
「俺もです。ずっと昔から大切な場所だったような気がして……」 
 二人でくすくす笑った。きっとお互い思っていることは同じだった。
「また来年、ここで会いましょう」
(了)


田原にかさんの企画に参加させていただきました。
*この記事は、以下の企画に参加しております。


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