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【毎週ショートショートnote】夜行性の黒板消し(430字)

「夜行性というか、夜行性のものがホンモノなんだ。いまは工場生産のものが大半だから知らんだろう」
 林間学校の二日目の夜、深い木々の間から漏れるキキキという音を聴きながら、先生は説明した。
「野生の黒板消し──今日は『ラーフル』って言うけど──は、文字を食べて生きている。チョークの粉じゃない、書かれた文字とその意味を、だ」
 半信半疑の僕らの前で、先生は懐中電灯を揺らした。光の先は看板に当たり、黒く四角い影を照らした。スプレー缶で書かれた「廃校 立ち入り禁止」という雑な落書きが静かに消えていく。
「落書きなんてするなよ。名前なんて書いた日には、存在ごと食われちゃうぞ」
 誰かが笑い、誰かが黙った。
 
 翌日の夕方。バスに乗って海岸を走っていた。
 遠くには白亜の校舎が──あれ? 昨日の廃校? いや、廃校だったんだっけ? それは、戦時中の名残を残しつつ、幻のような雰囲気を纏っていた。
 軽快に走るバスに張り付いたラーフルは「●●●中学校様」の匂いに引き寄せられている。
(了)


田原にかさんの企画に参加させていただきました。
*この記事は、以下の企画に参加しております。


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