「こういう人もいる」と割り切る力

「なんで、こんなことを言われなきゃいけないんだろう」

そんな理不尽に出会うことがある。
職場でも、家庭でも、道端でも、SNSでも。
どこにでも、理不尽は転がっている。
そしてそのたびに、心がざわつく。

「自分はちゃんとやってるのに、なんであんな言い方されるのか」
「悪いのはあっちなのに、どうして責められるのか」
「ただ丁寧に伝えただけなのに、逆ギレされるのは意味不明」

……気づけば、そんな“怒りの言葉”が、頭の中をぐるぐると回っていることがある。
でも、答えは出てこない。
どれだけ考えても、相手の行動や言葉の“理由”を、自分では知ることができない。

たぶん、本人ですらわかっていない。
何か嫌なことがあって、その八つ当たりかもしれない。
もしくは、ただの癖や思い込みかもしれない。
あるいは、誰かに強く当たらないと自分を保てない、そんな事情を抱えているのかもしれない。

だけど、こっちが考えたところで、相手の背景を100%理解することはできない。
そうして、答えの出ない「なんでこうなんだろう?」に頭を使い続けるのは、もったいない。
時間もエネルギーも、どんどん削られていく。

だから僕は、理不尽に遭遇したとき、こう言い聞かせるようにしている。

「こういう人もいる。以上」って。

それだけのこと。
理由を探さない。納得を求めない。理解もいらない。

もちろん、それでも心が傷つくことはある。
ムカッとしたり、悔しかったり、もやもやしたりもする。
でも、心のどこかで「これは相手の問題だ」と割り切れたら、次に進むことができる。

子育てをしていても、そう思う場面がある。
たとえば、スーパーで理不尽に怒鳴られたとき。
ベビーカーが少し道をふさいでしまっただけで、「邪魔だろ、常識ないのか」と怒られたことがある。

そのとき僕は、ただ「すみません」と言ってその場を去った。
でも、心の中では、ずっとその言葉がこだましていた。

帰宅して、子どもと遊んで、ごはんを作って、家族と笑って。
そうやって日常を取り戻すうちに、少しずつその理不尽は小さくなっていった。

「なんであんな言い方するんだろう?」と考えない。
「まぁ、そういう人もいる」とだけ思う。
それだけで、心は軽くなる。

理不尽に過剰に反応してしまうと、自分までその人と同じ場所に引きずり込まれてしまう。
だからこそ、「こういう人もいる」と距離を取る。
それは逃げじゃない。自分の心を守る、大切な術だ。

誰にでも、他人の言動に傷つく瞬間がある。
でも、そのすべてに向き合っていたら、心が持たない。

怒りや疑問が湧いたときは、まず深呼吸して、こうつぶやいてみてほしい。

「うん、いるよね。こういう人も」って。

たったそれだけのひと言で、前を向けることもあるから。

とはいえ、僕は、そういう人をただ放っておこうと思っているわけではない。

人事として、教育者として、そして子どもを育てる親として。
僕はこれからも、自分の感情に責任を持つことの大切さを、伝え続けていくつもりだ。

怒りの感情に支配されず、それをどう扱うか。
相手にぶつけるのではなく、自分の内側で整理し、言葉に変えて伝える力。
それは、子どもにも、大人にも必要な力だと思っている。

誰かの人生が少しでも良くなるように。
そして、その積み重ねが、結果的に世の中を少しずつ良くしていくと信じている。

だから僕は、割り切るだけで終わらせない。
伝えることを、やめない。


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