正しさじゃなく、原理原則に立ち返るとき

湯鶴(ゆづる)の裏方より

これは、『父がくれた一冊が、僕を支えてくれた』の続編です。
前作では、原理原則という考え方に出会った原点について書きました。
今回は、その“原則”をどう実践しているか——
日々の仕事と、対話のなかで感じたことを綴ります。


最寄り駅から家までの帰り道。
いつもより少し遅くなった電車を降りると、街はすっかり静けさに包まれていた。
街灯がまばらに照らす歩道を歩きながら、今日1日の出来事を思い返す。

「草間さんが入力してないので、わかりません」
「草間さんから引き継ぎをもらっていなくて……」

昼間の会議で、そんな声が出ていた。
本人はその場にいなかったが、彼の名前がいくつも飛び交う。
それ自体が、今のチームに起きている“ゆるみ”の表れだと感じた。

草間は今、エリア長という肩書きで、僕の直属の部下ではない。
それでも、彼とは1年近く、月に1度の1on1を続けてきた。
彼の方から「話したい」と申し出てくれて始まった関係だった。

悩みや課題を言葉にしながら、少しずつ視野を広げていく。
その過程をともに歩んできた相手だからこそ、見過ごせない“ズレ”があった。

仕事終わりに送ったSlackには、こんなことを書いた。

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最近、細かな部分の漏れが目立っていて、草間くんがいないMTGでも「草間さんがここを入力してないので」とか「草間さんから引き継ぎをもらってないので」という発言が出ているから、改めて仕事のやり方とか、自身の在り方と向き合ってね。
「忙しくて時間がないからできない、やらない」というのは言い訳にならないし、仮に誰かが「忙しいから仕方ないよね」と承認してくれたとしても、それを甘えにせず、「じゃあどうする?」という問いを立てて、自分と向き合ってね。
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厳しい内容だとは思った。
でも、僕はあえてストレートに伝えた。

それが、自分の信念に沿った関わり方だからだ。

僕は学生の頃から社会人になって今に至るまで、原理原則に従って言動してきた。
誠実さ、謙虚さ、感謝——それらは環境や立場に関係なく、自分で選び取る“あり方”だと思っている。

だからこそ、それを怠っているように見える場面には、強い違和感を覚える。
自分が関わってきた相手なら、なおさら、ズレていることはズレていると伝える。
厳しさの裏にあるのは、信頼であり、誠意だ。

草間がマネジメントしているメンバーである根本さんの件もあった。

常勤先から直雇用の打診を受けているが、彼女は明確な返答をできずにいた。
草間は、「覚悟がないように見える」と話していた。

でも、それは違うと僕は感じた。
必要なのは覚悟ではなく、対話だ。

「どんな未来を描いているのか」
「なにを大切にして、どこへ進もうとしているのか」

その問いに、誰かが寄り添っているかどうか。
そして、その“誰か”こそが、草間であるべきだと思ったから、こんなメッセージも送った。

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年次的にも、雇用元であるうちに対して「自分はこういうキャリアを考えているからこういう場を求めている」という意思表示はすべきだと思うから、そういう部分も含めて、根本さん自身が今後のキャリアをどう構築していくべきなのかを一緒に考えてあげてほしい。
おそらく、うちに務めている意味も薄れてきてるんだろうから、なおさら今後のキャリアに寄り添う姿勢が求められるから。
よろしく頼むね!
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マネジメントとは、「人を管理すること」ではない。
「人の人生に、向き合うこと」だと、僕は思っている。

これまで僕は、原理原則に従って人と関わってきた。

誠実であること。
言い訳せず、自分で選択すること。
感謝を忘れず、誰かの人生に敬意をもって向き合うこと。

そうして関わってきたメンバーは、社内外から信頼され、自分の価値を言葉にできる人へと育ってきた。

もちろん、僕ひとりの力ではない。
でも、原理原則を一緒に共有し、積み重ねてきた時間が、確かな信頼として形になっている実感がある。

だからこそ、僕は厳しいことも言葉にできる。

責めたいわけじゃない。
正したいわけでもない。

「どう在るべきか」に立ち返るために、必要な言葉を伝える。
それが、僕が大切にしている“関わり方”であり、“人を育てるということ”だ。

家の前まで帰ってきて、ふと夜空を見上げた。
風がやや涼しく、街全体が一息ついているような気がした。

玄関の扉を開けると、静かに眠っている子どもたちの気配があった。
リビングには、朝陽(あさひ)が読みかけていた図鑑が広がっている。

最近、朝陽はよく「将来、何になろうかな」と言う。
はっきりした夢はまだないけれど、「こんなことが好きかも」「あれって楽しそうかも」——
そんな気づきをぽつりぽつりと話すようになった。

僕はそれを肯定も否定もせず、「なんでそう思ったの?」と、ただ聞くようにしている。

子どもが自分で“好き”や“興味”に気づき、それを言葉にすること。
そのプロセスこそが、キャリアの第一歩だと思っている。

大人も、子どもも同じ。
自分の人生に向き合うとき、そばで耳を傾け、問いを重ねてくれる存在がいるかどうかで、大きく変わる。

夜、布団に入る前に、スマホをもう一度開いてSlackを確認する。
草間から返信はまだない。

——それでもいい。

今すぐ返事がほしいわけじゃない。
言葉が届いたかどうかは、いずれ彼の行動に表れる。
そう信じている。

正しさじゃなく、原則に立ち返る。
それが、僕が僕であり続ける理由だ。

今日も一日、おつかれさま。
そして、また明日から、信じる言葉を胸に進もうと思う。

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湯鶴の裏方より

このnoteでは、湯鶴というひとりのパパの日常をもとに、仕事・育児・人生にまつわる物語を綴っています。

無料物語では、子どもとの時間で考えたことや、仕事をする中で考えていることなど、毎日のなかにあるささやかな気づきを描いています。

でも実は——
誰にも言えなかったことや、少し勇気がいるようなことは、有料物語で綴っています。

湯鶴がこれまで向き合ってきた葛藤や選択。
その背景には、言葉にならなかった想いがあります。

僕は、湯鶴の“裏方”として、そのひとつひとつを記録してきました。

有料物語は1本100円。
ですが、マガジン(500円)を購読していただければ、これまでに公開された有料記事も、これから追加される物語もすべてお読みいただけます。

子どもを育てること。
働き続けること。
自分のままで在り続けること。

どれかひとつを選ぶのではなく、どれも大切にしていきたい。うまくできない日があっても、それでも今日を重ねていく。そんな湯鶴のまなざしと向き合いながら、言葉を編んでいます。

もしも、どこかで心に触れる瞬間があったなら、マガジンをのぞいていただけたら嬉しいです。

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スキを押してくださった方へ、湯鶴の言葉をひとつ、おみくじと共にお送りします。

たまたま出会ったようで、どこかで必要としていたかもしれないひとことを、そっと手渡せたらと思っています。

▼おみくじをつくった背景については、こちらにまとめました。


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