25mに届かない夏と水色のアイス。/#8月×暮らしのエッセイ
小学生の子どもがいる夏がきて、驚いた。
夏休みのプール開放なるものがないのだ。
おそらく先生たちの数が足りない上に、暑すぎることも原因なのだろう。
コロナのせいで、ろくにプールの授業もないまま大きくなった娘。高学年になった今も、多分水にはろくに浮かない。
わたしも泳げない。
水泳の人生最高記録は22m。
あと少しだ、と顔をあげ先生に無情にも「記録22」と告げられた。
自分では25mプールを泳ぎ切ったつもりだったのだ。
ピッ、と先生のふく笛がむなしく響く。
平泳ぎをすれば瀕死のカエルと言われたわたしは、もう2度とプールには入るまい、と心にきめたまま、アラフォーに足を踏みいれることとなった。
ちなみに、バタ足もクロールも、溺れてる?とよく聞かれた。
そんな夏休み、宿題もそこそこに毎日朝6時半からのラジオ体操、そして学校のプール開放と目まぐるしく夏休みを満喫していた。
泳げないにも関わらず、プール開放に足しげく通ったのは、通ったあとに近くの駄菓子屋に行くのが楽しみだったから。
友達と小銭を出し合い、わけあう。駄菓子屋の前でいつまでもくっちゃべっていて、よくばあちゃんがわざとらしくほうきではいた。

そして、誰もが知ってる、あの男の子がにかっと歯をみせて笑うアイス。安定の価格で、子どもにも買いやすい彼だ。少ないお小遣いで、どきどきしながら買う。
水色が、太陽に照らされてまぶしい。
友人たちと「髪もう乾いたじゃーん」
「っていうかさ、宿題もうやった?読書感想文ってまじ本を読むの?」
「当たり前でしょ」とくだらない会話を交わす。
アイスが溶けてベトベトになる前に、小学生たちは一生懸命舌で追いかける。
「それでさー、わたしの記録、まだ22mなの!」
と爆笑し、となりのトモミが「安心して、わたしまだ浮いてないから!」とおいうちをかけてきた。
いつだってアイスの水色は健康的で、まぶしくて青い夏の予感しかない。シャリシャリと口の中で溶かす。
娘にもそんな経験をさせてあげたかったが、プールの開放日はないし、駄菓子屋さんだって今は本当に少ない。何だかさみしいが、仕方ないのかもしれない。
セミのうっとうしさも、田んぼの青々しさも、友だちと食べるアイスも、エアコンの効いた部屋に一日中いたら気づかない。
年々暑くなる。時代は変わる。
しかし、夏休みって人生にとって特別だ。
水色のアイスが溶けそうになりながら、空を見上げてほしい。
989文字
ゆず
ASD、ADHD×ワーママ。おかわりできる、優しいnoteをめざし言葉をつむぐ。

凛花さん、どうぞよろしくお願いします!
いいなと思ったら応援しよう!
だいすきなチーズケーキと小説につかわせていただきます!よりよい作品のエンジンにいたします。