10月の手紙
お元気ですか?
忙しない日々に埋もれてしまった言葉の欠片たちが、気付けば私の心に吹きだまりとなり、いつかは遠くへ行けることを信じて待っているようです。
本当はひとつずつ拾い上げて、その形や色を見極めながら良いタイミングが来た時に飛ばしてあげたいけれど、今は時間が足りません。
だから少しだけ掬い上げて、こうして手紙で届けることにしました。
木の葉が色づきはじめました。
赤や黄色、橙色。
夏に立派な緑の葉を生い茂らせていた木々が、今は身を軽くして残った葉をランタン色に灯らせ、まるで連なるシャンデリアのように街を飾っています。
今日はハロウィン。木々もおめかしをして楽しみにしているのでしょうか。
夏の間は姿を見かけなかった猫や鴨たちが、のんびり欠伸をしたり草をつついたりして公園内で過ごしています。
水浴びよりも日なたぼっこを優先する鴨たちの足元には、ちょうど彼らの足の形にそっくりな色とりどりの葉。
ちぎり絵のように散りばめられたその上を歩く鴨たちの、何とも呑気で愛らしい姿。
重なる二匹の赤トンボ。水たまりに触れそうなくらい近付いて、私の頭を飛び越えて、そうして青空に吸いこまれていきました。
魔法の絨毯のような、二匹の愛の旅。
金木犀が恋しいです。
あの花は、やはり香りから。そして、目に留まる鮮やかなオレンジ色。
古くからの友人が会いに来てくれたような懐かしい感覚と、呼び起こされる温かい記憶。
朝に窓を開ける瞬間が、職場に向かうまでの道が、あの香りに出会えるだけで心が弾み、目の前が晴れやかな澄んだ色に染まりました。
今朝、ヒヨドリがベランダに遊びに来てくれました。手すりに並んだ二羽をカーテンの隙間からそっと見守りました。
つぶらな目、穏やかな顔つき。
この夏、父の庭で苦難を乗り越えた彼らと同じ鳥でしょうか。また巣を作りに来てくれることを願っています。
私は髪を切りました。
首元をすり抜ける冷たい風と、この軽さが心地いい。
手放して手に入れて、もがいて受け入れて、そんなひと月となりました。
昨日の夕空の半月を見ましたか?
まろやかな光に包まれた、ほっと息をつきたくなる美しさでした。
明日から霜月。早いものですね。
冬がやって来る前に、やっておかなければいけないことがまだあります。
でもその前に、ひと息ついて夜空を見上げたり、みなさんの足跡をゆったり辿ったりする時間を作りたいと思っています。
お返事をいただいても、すぐには返せないかもしれません。でも必ず書きますから、待っていてくださいね。
寒暖の差が激しくなってきました。どうか、お体に気をつけてお過ごしください。
みなさんの今日が素敵な一日になりますように。
夕星みみ
