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みんなに読んでほしい。~本の話~

読み始めた最初の数ページで一気に引き込まれた。
そして、小さな甥っ子がいる妹や、本好きの母にすぐにお薦めのLINEを送った。
本当に心から良いな、と思ったものは自分の大切な人たちに伝えたくなる。

それなのに、この本の感想を綴るのが難しい。

なんでだろう?と考えたときに、そのカジュアルで親しみやすい、ちょっとパンクな文体とは裏腹に、テーマが複雑で切実なものだからだ。
話の舞台はイギリスなのだが、決して”あなたたち”だけの話ではなく、”わたしたち”の話でもあるのだ。

ブレイディみかこさんの『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』。
数年前に大きな話題になった本。その当時から気になってはいたが、時間が経った今でも気になり続けているので手に取ってみた。

この本は、イギリスでの暮らしを綴るエッセイであり、子供の成長を見つめる物語でもあるのだが、切実な社会問題を考える人文書でもあった。

国籍、住んでいる地域、家庭の経済状況、通っている学校などなど。人は人に簡単にレッテルを貼る。
本当はそんなレッテルとは関係なく、一人一人がそれぞれの文脈を持つ個人なのに、一方的に貼られたレッテルや、その人の表出した一部分だけを捉えて判断する。

そうやって人を”こちら側”と”あちら側”に分ける人たち。なんだか自分が生きている世界の既視感を見た気がした。これ日本じゃん!って。他人事ではない。自分だってそういうことをしうる。

世界の至る所で、こういう安直な分断と思いやりの無さがじわじわと広がっているのかしら、と思う。

この本は、考えさせられる。思わず、ページの端を折り、ペンで線を引き、余白に感じたことをたくさん書き込んでしまった。
読み進めるほどに、理解しやすく単純に見える世界は複雑になる。きれいに整理されたように見えるものがごちゃごちゃに入り乱れる。

でも、それが濁りの無い目で見た現実なのだと思う。だから、複雑なものは複雑なままに眺めたいし、人に対して、理解はできないまでもその人の文脈や考えを慮ることができる自分でありたいと思った。


ただ、ここまで書いといてなんだけど、話が重くないんだよな。
描かれているそれぞれの場面は、人種差別や露骨な経済格差など、切実だ。
それでも、著者もその子供も真っすぐにその現実と向き合って、どこか俯瞰しながらユーモアを交えながら、避けずに歩んでいるように感じる。

切実なことを遠くからただ眺めているだけなら、いくらでもシリアスに語れるだろう。でも、当事者としてその現実と向き合い歩んでいくためには、ただシリアスでいるだけでは足りないのかもしれないな、とも思った。

そんなしなやかでユーモラスだけど着実な空気感と、たしかな足取りで目の前の現実を歩き、未来への希望を見据えているこの本には、月並みだけど、とても勇気をもらった。それは、目の前の現実に尻込みせず一歩ずつ足を踏み出す勇気だ。
多層的に読めるこの本は、みんなに読んでほしい。

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