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20010722 中性子星

 普通の感覚から言えば「物」とは、目に見えたり触ったり感じたりすることが出来る自分以外の独立した存在である。そういう「物」は細かく見れば分子で構成されていて、その分子は原子で構成されている。目に見える物のうち、「物」とは言わないものは光ぐらいだろう。光だけは分子や原子で出来ていないことが判っている。

 「物」は突き詰めていけば原子で出来ており、その原子は構造の違いから多くの種類が存在する。原子の種類は現在103種類$${^{*1}}$$が知られており、人間が直接知りうる全ての物はこれら各種類の原子で構成されているはずである。原子を構成する電子$${^{*2}}$$と原子核、その原子核を構成する陽子や中性子の存在は知られているが、「これがその電子です」と言った具合には提示できない。原子はある程度集まれば実体として認識することが出来るが、その原子の構成要素である電子や陽子や中性子はいくら集まっても実体として見たり触ったりすることは出来ない。

 雷などの放電現象$${^{*3}}$$は電極間を飛ぶ電子が光っているのではなく、実体である空気分子などが電流によって光って、それを見ているのである。

 ところが原子で構成されていない「物」が存在して、それを見ることが出来るかも知れない。夜空に輝く星$${^{*4}}$$はその質量によって歩む一生$${^{*5}}$$が決まっている。太陽の質量の数倍以上の星は赤色巨星になった後、自分自身の重力$${^{*6}}$$によって押しつぶされ、超新星爆発を起こして粉々に砕けてしまう。爆発後に星の芯を残すものもある。その芯は中性子星であったりブラックホールであったりする。

 ブラックホールは穴だから「物」として見えないだろうが、中性子星は星というぐらいだから見えるだろう。この中性子星はオッペンハイマー$${^{*7}}$$とボルコフ$${^{*8}}$$とによって考え出された天体である。質量が太陽ぐらいあるのだが、大きさは半径が10kmしかないので星の密度は1cm立方当たり1000メガトンと相当高くなっている。そのため星を構成する原子はその構造を保つことが出来なくなり、電子は原子核に吸収され陽子が中性子になってしまっている。だから星自体が中性子の塊$${^{*9}}$$のみたいになっていると考えられている。普通の自ら光を放つ恒星の表面は原子の通常の状態から電子が遊離したイオンと電子とが混在したプラズマ$${^{*10}}$$という状態であるが、原子核が変化している訳ではないので元々の原子の性質は保っている。ところが中性子星は星自体が原子核の寄せ集め状態なので星を構成していた元々の原子の性質はなくなっている。

 もし中性子星$${^{*11}}$$の表面の温度が低ければ手で触ることも出来るかもしれない。ただし温度が低くても重力が相当きついので上手く触るに工夫が必要だろう。実際には中性子星と考えられている天体はX線を発しているので相当温度が高いようである。

 このように中性子星は実体がありながら原子で構成されていない。何で出来ているかと言えば中性子で出来ているとしか言い様がないのである。本当に中性子で出来ているのかどうか誰にも分からないが、あるとすれば原子で構成されている「物」の中で暮らす我々にとっては不思議な存在である。

*1 The periodic table of the elements.[元素周期表]
*2 目に見えない小さな粒の世界
*3 History of the Van de Graaff Generator
*4 星の一生
*5 星の分類
*6 20000226 大きさの限界
*7 J. Robert Oppenheimer and the Atomic Bombings of Japan
*8 In Memoriam - George Michael Volkoff
*9 日本の原子核物理学研究|核物理懇談会ホームページ
*10 What is a plasma ?
*11 Neutron Stars

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