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【縄文DNA#1】篠田謙一『人類の起源〜』 ミトコンドリアDNA・ハプログループM7a

近年の古代DNAの研究は…大きなインパクトを考古学や歴史学、言語学の分野に与えており、さらには「人間とは何か」という巨大な問いにも新たな答えをもたらそうとしているのです。

篠田謙一『人類の起源-古代DNAが語るホモ・サピエンスの「大いなる旅」』p9


「私は何者なのか、どこから来たのか?」

この誰しもが抱えるであろう問い。祖先はアフリカを出て、どうやってこの日本列島までたどり着いたのか。

この問いを深めるべく、遺伝子検査を受けてみました。
すると、先祖の系統が特定され、そのうち1つがいわゆる「縄文系」とされる遺伝子(ハプログループM7a)だったのです。
(先祖は数え切れなほどいるので、他にも多様な遺伝子が受け継がれていると思いますが…縄文への興味が深まったこと、先祖とのつながりをより身近に感じられたので検査を受けてよかったなと思っています。)

さて、今回は縄文人や「ハプログループM7a」について、国立科学博物館長の篠田謙一さんの著書を中心に読み解いていきましょう。(現代日本人が持つミトコンドリア DNAについてはこちらの研究紹介P.8が分かりやすかったです。)


縄文人の定義

まず、基本的な定義を篠田館長の本から引用します。

日本列島に最初にホモ・サピエンスが到達したのは四万年ほど前のことになります。この時代は旧石器時代として括られますが、およそ一万六〇〇〇年前には日本列島で土器がつくられるようになりました。
それから北部九州に稲作が入る三〇〇〇年前ごろまでの時代を縄文時代としています。この時代に日本列島に居住した人間を、縄文人と呼びます。

篠田謙一『人類の起源-古代DNAが語るホモ・サピエンスの「大いなる旅」』p160

土器が作られてからのおよそ1万3,000年の期間を縄文時代と呼ぶのですね。

旧石器時代から続く人の流れの中で、日本列島に定着し狩猟採集を基盤にしていた人々なのです。

縄文人の起源

さらに近年の研究は、縄文人の起源が単一ではなかったことも示しています。

現代人にも受け継がれる縄文人のゲノム
縄文人には白保のゲノムの6割ほどが受け継がれているが、残りは沿海州の古人骨と類似するものだった。このことは縄文人の起源が単一ではなく、複数の経路から列島に流入したことを示唆している。
なお、縄文人と現代日本人のゲノムを比較すると、本土の日本人では10~20%、琉球列島で30%、北海道のアイヌ集団は70%のゲノムを縄文人から受け継いでいることがわかっている。

『特別展「古代DNAー日本人のきた道ー」公式図録』 p37

縄文人とは、単一の祖先を持つ均質な集団ではなく、複数の流れが混ざり合って成立した、非常に多様な人々だったのですね。

「縄文人」という言葉は便利ですが、その中身まで一色だったわけではなさそうです。

ハプログループM7a

縄文人の遺伝子を語る上で、重要な手がかりとなるのがミトコンドリアDNAです。これは母系で受け継がれるDNAで、集団の移動史を追うのに適しています。

縄文人の持つミトコンドリアDNAの代表的なハプログループはM7aとN9bです。このふたつのハプログループは、現代ではほぼ日本列島内に限って存在していること、それぞれの成立年代が三万~二万年前にさかのぼることから、おそらく縄文時代よりも前の旧石器時代に日本列島に流入したものだと考えられています。
双方のハプログループの分布を見ると、N9bの系統が東日本から北海道にかけての地域で多数を占めるのに対し、M7aの系統は西日本から琉球列島で多数になるという、東西の地域差が認められています。

篠田謙一『人類の起源-古代DNAが語るホモ・サピエンスの「大いなる旅」』p203

M7aは、特に西日本から琉球列島に多く分布する母系遺伝子なのです。沖縄特有のイメージがあったのですが、西日本にもいるんですね。

考古学と遺伝学の両面から、M7aの移動経路も推定されています。

これらのうちM7aは沖縄に一番多く分布し、その割合は北に行けば行くほど少なくなっていくという地理的勾配を持っている。このことから、M7aは南方系のハプログループであると考えられている(篠田二〇〇七)。

山田康弘『縄文時代の歴史』p62

M7aは、はるか昔に日本列島へ入り、列島の中で生き残った、きわめて古い系統だと考えられています。

遺伝子研究

人類の起源や歴史は、長く宗教や神話、あるいは考古学や歴史学の領域で語られてきました。しかし近年、そこに大きく踏み込んできたのが生命科学、とりわけ古代DNA研究です。

一九世紀以降、生命科学の研究は、それまで宗教や人文社会科学の領域だと考えられていた分野に進出するようになりました。ダーウィンの進化論によって「神」の存在を前提とせずに生物の多様性を説明できるようになり、脳科学の進歩によって心の理解にも大きな進展がありました。
一般にはまだそれほど認識はされていないかもしれませんが、近年の古代DNAの研究は、同じくらい大きなインパクトを考古学や歴史学、言語学の分野に与えており、さらには「人間とは何か」という巨大な問いにも新たな答えをもたらそうとしているのです。

篠田謙一『人類の起源-古代DNAが語るホモ・サピエンスの「大いなる旅」』p9

縄文研究も、まさにこの流れの中にありますね。
「人間とは何か」宗教・生命科学を横断して分析できるのは、今の時代に生まれた特権かもしれません。

特別展『古代DNA―日本人のきた道』の展示より

現代日本人のゲノムの9割は弥生以降

古代DNA展の動画と、篠田館長と茂木健一郎さんの対談動画などシェアします。改めて茂木さんの質問のセンスと、話の引き出し方は秀逸だなと思いました。
ダーウィニズムに否定的なところなど、随所に篠田館長の思想が垣間見れて良きです。

動画でも指摘されている通りに、現代日本人のゲノムの9割は弥生以降つまり縄文以外の系統であると。古墳時代のゲノムが7割であるということです。


現代日本人の9割が大陸系由来であるという科学による証明は、他のアジアの国への差別感情などは、むしろ自分自身の先祖と自らの遺伝子を否定しているようなものであるということにも気づかせてくれます。

この事実こそが、まさに篠田館長が仰る古代DNAの研究の大きなインパクトなのではないでしょうか。
世界を分断するのではなく、世界をとのつながりをより深く感じる。

進化論を根拠とした優生学を乗り越えたDNA研究を引き続き楽しんでいきたいと思います。

引用・参考文献

・特別展「古代DNAー日本人のきた道ー」公式図録(販売終了してました。また、面白い企画展行きたいな〜)



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