「ブラック・ジャック創作(秘)話」手塚治虫異常なる変態伝説!
今回は「ブラック・ジャック創作(秘)話」をお届いたします。
手塚治虫伝説を語る上での実録漫画のド本命なので
ご紹介するのも憚るのですが
手塚治虫に興味を持ったばかりの人
手塚治虫の人物像をあまり知らない人など
手塚治虫をあまり知らない方には最も適した作品ですので
今回はその魅力をたっぷりとお伝えしたいと思います。
別作品に
手塚治虫を主人公とせず別視点から見た天才手塚治虫の素顔を描いた
傑作漫画「チェイサー」をご紹介しております。
これもとんでもなく面白いです。
というか破壊的に面白すぎてビビります。
両作ともコンセプトが異なるので二作品読むことで
より多角的に手塚治虫の変態度合いが理解できますし、
また手塚治虫好きでなくとも
クリエイターや「ものづくり」の現場に携わっておられる方であれば
必ず刺激的な一冊になりますので是非読んで欲しい1冊です。
併せてご覧になってみてください。
華麗なる変態伝説
まず本作を一言で表すなら
まさに「変態」です。
これに尽きます。
こんな人間見たことない。
信じられない。誰もが目を疑う光景が繰り広げられます。
これは常人の理解を遥かに超えたド変態人間の物語です。
ぶっちぎり過ぎて一般人の理解では及ばない奇行が数々が次々と展開していく本作は痛快すぎて読む手が止まりません。今では考えられない常識が絶え間なく炸裂するという手塚治虫伝説は面白すぎます!
人って好きなことを追求すると
こんなにも人様に迷惑をかけれるんだ~っという
典型的な例がいくつも紹介されています(笑)
そんな面白過ぎて夢中になって読みまくってしまうこの漫画
「ブラック・ジャック創作(秘)話」
原作は宮崎克(まさる)さん、作画は吉本浩二さんによる
手塚治虫の制作現場の舞台裏を描いた実録漫画です。
制作現場を描いているだけのマンガがなぜ面白いのか。
不思議ですよね。
これを読めば分かります。
マジで狂ってます。
こんな面白い作家いません。
いづれも珠玉のエピソードがキラ星の如く収録されていますが
その中から個人的に好きなエピソードをいくつかご紹介いたします。
(注意)
マジで面白いのでネタバレしたくない方は今すぐポチってください。
絶対初見で読むことをオススメします!
それではネタバレいきますよ。
こんなギリギリあり得ない。
まずは絶望的な状況の中で
「ブラック・ジャック」を1日半で描き上げた話
とにかく締切ギリギリで有名な手塚先生ですが
この時のエピソードは破滅級に超ギリギリです。
あるとき
「ブラック・ジャック」の読み切り依頼が入っていたにも関わらず、
その予定がマネージャーの耳にも入っていなかったという大ピンチを迎えます。(そんな状況がすでにあり得ない)
もちろん追加で描き上げる隙間時間なんてあるわけがありません。
ただでさえ超絶な過密スケジュールですから
今描いている他の原稿をすべて止めて描き出さないと
間に合わないとんでもない異常事態です。
担当編集は、これは完全に終了した…
ついに原稿を落としてしまったと途方に暮れていました。
普通であればもう不可能です。
しかし
そんな中、たった今、別雑誌の100ページ企画が終わって
疲れの限界の手塚先生が担当者を呼び止め
「ストーリーを3つ考えたんです!」
…と誰もいない仕事場で声をかけました。
なんと別の編集者の居ない時間を見計らって
時間を割いて、
さらには3つもストーリーを考えてくれたというから驚きです。

そして本当にすごいのはここから…
手塚先生は3つ考えたストーリーの内
「どれがいいですか?」 と担当者に聞くんですけど
担当者はストーリーなんか正直どうでもいいから
「どれが一番早く仕上がりますか?」
って言っちゃうんですね。
これに対し、手塚先生は激怒して仕事部屋に引っ込んでしまいます。

完全に怒らせた…
せっかく時間を割いてくれ、しかも手を抜かず真剣に考えてくれている手塚先生にとても失礼な返答をしてしまった。
「もう終わりだ」
…なんて思っていると
30分後に「もう一個考えました」って
なんと手塚先生は別案を持って来たんです(笑)
えええええ!4つ目すか!
そっちかい!
そこから怒涛の勢いで描き上げ1日半で
「ブラック・ジャック」を仕上げついには間に合ってしまうというお話…
色々凄まじすぎて笑っちゃいます。
この時の担当者は
どんなに過酷で限界な時でも決して妥協せず
常に最高のものを届けようという手塚治虫の姿勢に感動したそうです。

その時のエピソードが、第232話「虚像」。
1日半ですべてを完成させた作品をぜひご覧になってみてください。
おそらくこれを超える異常事態はない
続いて「バンダーブック」のお話
これはすごいですよ(笑)
数ある伝説の中でも超ド級の凄まじいお話です。
「絶望」とはまさにこの時に使う言葉と言えます。
これは記念すべき第一回目の「24時間テレビ」の中で放映される
2時間アニメの「バンダーブック」のエピソード。
一向に絵コンテが仕上がらず放映日2か月を切っても
何も進んでおらずあろうことか
製作担当が突然失踪しちゃうという大事故が起きてしまいました
まさに空前絶後の異常事態です。

この一大事に社内で特別会議を開き
どこが遅れているか確認して分担しようとなりました。
「〇〇」と「〇〇」が遅れています。
「いや、〇〇の方が遅れている」というような話になると
手塚先生は…
「これ手塚やります」「これも手塚」
と全部引き受けてしまいます。
結果、ほぼすべて手塚先生がやることになって、
スタッフたちは安堵するんですが…
実はここから本当の地獄の始まります。

なんとかギリギリのギリギリで
やっと試写までこぎつけることができたのですが、
そこで手塚先生は、
ほとんどに仕上がりに「リテイク」を出します。
要するに修正、やり直しです。
この1分も惜しい極限の状況化で「リテイク」
ギリギリで間に合ったのに「リテイク」
もう本当に時間がないのに「リテイク」
そんなのお構いなしに「リテイク」の嵐(笑)
怖すぎます。
「先生もう無茶ですって…」
スタッフの声にもならない悲痛な叫びの中
それでも手塚先生は妥協を許しません。
そもそも無茶なスケジュールの中、アニメの仕事を引き受け
スタッフに逃げられながらも、残りを全部自分で引き受けて、
さらに自分で状況を悪化させ、
それでも作品には妥協せず全力で取り組む手塚治虫
まさに狂気の沙汰

今でこそ美談に聞こえるかもしれませんが
この時点で締切1か月切っていますからね。
2時間アニメですよ。
2時間アニメを1か月ですよ。
映画と同じ尺です(笑)
映画アニメを1か月で作っちゃうようなもんです。
正気じゃありません。
どんなに早くても半年以上はかかると言われているアニメ映画を1か月で、しかも本業のマンガの連載も死ぬほど忙しい中で
アニメ映画を並行して行うという無茶ぶり。
想像しただけでも卒倒しそうな猛烈に地獄的な状況の中
やり直し(リテイク)をするんです(笑)
ハンパじゃありません。
この時の熱気、破壊的で絶望的な状況はぜひ漫画で体験して欲しい。
めちゃくちゃ面白いですから。
そしてなんとなんと…
奇跡的にオンエアに間に合っちゃいます。
えええええ!マジで!
ここら辺が手塚治虫なんですけど…
奇跡的といっても超絶な奇跡です。
放送開始日の開始時間ギリギリに納品されたとはいえ
納品されたのは前半部分だけ
すでに放映中にも関わらず、
後半の最後のリールが納品されていないというむちゃくちゃな話。
結果、なんとか放映中に後半部分の納品が完了するのですが
マジであり得ないでしょこんなの。
そして終わってみると番組内最高視聴率の28%を叩き出し
スタッフの苦労が報われると言う
マジで漫画のような伝説的なエピソードです。
この狂気の仕事現場をぜひご覧になってみて下さい。

人間でこんな事できる人いるの?
続いて伝説のアメリカ電話事件いきましょか。
これも、もはや語り草になるくらい超有名な変態エピソードです。
1980年の夏、アメリカ・サンディエゴで開催される
コミック・コンベンションに参加することになった手塚先生
スケジュールを前倒しで進めると言いながらも結局出発日に原稿は上がらず
仕上がっていない原稿はアメリカから送ると約束したものの…
この日までに原稿が届かなかったら
終わりという日になっても原稿が届きません。
やはりというべきか恐れていた事態が当然のように実現しちゃいます(笑)

もはや絶望的。
当時はインターネットもFAXすらない時代、
原稿を送る手段は完全に断たれたというのに
それでも手塚先生は前代未聞の方法で原稿を仕上げるという。
ここで前代未聞の荒業が炸裂します。
その方法とは
国際電話でスタッフに方眼紙にコマ割りを指示し、
コマだけの空欄原稿を完成させるという。
???
スタッフは皆困惑します。
手塚先生から電話がかかってくると
すかさず手塚先生から細かな指示が下ります
一体電話だけでどうやって背景の指示をするのか
電話口で手塚治虫は喋り出します。
「ブラック・ジャック」の2話前
6ページ3コマ目の校門をこのコマに入れてください、、
「三つ目がとおる」2話前
10ページの住宅街をよりクローズアップして全面になど、、、
過去の作品のデザインを参考に背景の指示を出し始めました。


しかも本当にすごいのは
手塚先生はアメリカのサンディエゴから
何の資料もなし、一片のメモもなく
すべて手塚先生の頭の中にある記憶から指示していたんです。

つまり仕事部屋の本棚のどこに何があるか、
すべての作品の何ページに何が描かれてあるかを
すべて暗記しているってことです。
立ち会った人達は茫然自失…
て、手塚先生の頭の中いったいどうなってんの?
一体目の前で何が起きているか理解できなかったそうです。
まさに凡人には到底理解できない変態の領域ですよね。
そのおかげで
何とか帰国後に手を加えてギリギリ締切には間に合ったそうです。
余談ですが。
実はコレ1日目ではスタッフが理解できず2日かけてやってます。
これを2日連続って怖すぎる…。
本作の魅力
如何でしたでしょうか。
ハンパないですよね。
とにかくにわかに信じられない爆裂的なエピソード満載なのが「手塚治虫」という人物でありその執筆における破壊的なエピソードを詰め込んだのが本作であります。
本書は製作現場を実際に肌で感じ共に苦しみ抜いた体験者の方々の
インタヴュー、証言をもとに漫画化されていますので非常にリアルで破壊的な熱気が焼き尽くされるほどに伝わってくる作品になっています。
その中にあって災いの元凶
手塚治虫の情熱、狂気、異常さは他の追随を許しません。
本人は仕事にめちゃくちゃ熱中しているだけなのに
周囲にとっては無意識に嵐に引きずり込まれる台風のような存在
それでいてそのエネルギーがケタ違いの破壊力を持っているので手に負えない本当に疫病神のような存在なのですが
その凄まじさ故に
なんだかんだ言って廻りの人たちも手塚治虫の異常なエネルギーに感化されていくという凄まじい光景を見ることができます。
とはいえここで登場する手塚治虫は
「漫画の神様」という神棚に祀り上げられる存在ではなく
ランニング一枚で差し歯を外して
ハゲた頭を散らかしながら汗だくで
がむしゃらに漫画を描いている
其処らへんにいるただのオッサンなんですよ(笑)
実際、作中でアシスタントが「誰これ?」って間違えてしまうほど
素の手塚治虫像が描かれています。
華やかさの欠片もなくただひたすらに漫画に打ち込む真の手塚治虫像
本書に出てくる手塚治虫像はマジでえげつないです。
でもそれが最高にカッコイイ。
めちゃくちゃカッコイイんです!
これはぜひともご覧頂きたい。
本作はタイトルに「ブラック・ジャック」と冠がついてますけど
「ブラック・ジャック」に限らずその他の作品についても描かれており
間違いなく手塚治虫の仕事を知るには最適の1冊です。
もちろん本書にはまだまだご紹介できていない手塚治虫のトンデモエピソードが詰まっています。
「ブラック・ジャック」が本当は3~4回で終わる予定だったとか
「ブラック・ジャック」の裏話もじっくりと収録されておりますのでぜひチェックしてみてください。
それでは!
