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もしあと数時間で処刑されるとしたら?手塚治虫が描いた「時間がスローになる薬」を巡る絶望

突然ですが、皆さんは
「もしあと数時間で処刑される」と言われたら、どうしますか?

今回ご紹介するのは、手塚治虫が1968年に発表した、
隠れたサスペンス短編『処刑は3時に終わった』です。

観る人によっては非常におぞましい描写もある切れ味スパスパのダークな短編、ゾクゾクするような展開の面白さと、異様な読後感を残す傑作。
後半では、「おさむーびー」の候補予測まで、
一気にお話ししていきますのでぜひ最後までお付き合いください。


あらすじ


まずは簡単なあらすじ

舞台は第二次世界大戦後のヨーロッパ。
主人公は、ナチスの強制収容所で非道の限りを尽くしたドイツ軍将校

彼は戦犯として、
まさに今、銃殺刑の刑場に縛り付けられています。

普通なら絶望する場面ですが、
彼はなぜか不敵な笑みを浮かべ、落ち着き払っています
なぜなら彼には勝算があったからです。
彼は収容所時代、ユダヤ人科学者を殺して、
ある秘密の薬を奪い取っていました。
それが、飲むと自分の意識が加速し、周囲の時間がゆっくり流れるようになる「時間延長剤」

処刑直前、彼は口の中に隠していたその薬を舐めます。

すると効果は抜群。
目の前の執行官が銃を構える動きも、
まるでストップモーションのように超スローに見えるんです。


「これなら縛り付けられた紐をじっくり解いて、
放たれた銃弾をひらりと避けて脱走できる!」


……彼はそう確信していましたが
事はそう単純ではありませんでした。

さぁ果たしてこの後、一体どうなってしまうのか?

以上本編のあらすじであります。


如何でしょうか。
本作は手塚先生特有のオチのトリックが見事にはまったサスペンス短編といえます。この短編をご紹介するにあたり以前にもご紹介しました
手塚公式サイト「おさむーびー」の次回候補になるんではないかと
密かに思っているので今回チョイス致しました。

ちなみにこの記事を読んでいながらまだ「おさむーびー」をご存じない方は
人生の8割損をしていますのでまずはこちらの解説記事をご覧いただいてからこの記事をみてください。
話はそっからです。


時間と間の演出が「おさむーびー」を加速


なぜ本編が「おさむーびー」に選ばれそうなのか
それはこの作品の肝が、「時計」「迫り来る時間」だからです。

原作マンガでは時間の体感が長くなる描写を
複数の時計や空白を描く事などで表現されていますが
「おさむーびー」では「音」と「時間」の演出との相性が抜群にいいんで
これは非常に「おさむーびー」向けなんじゃないかと思っております。


ボイスコミックの最大ともいえるメリットは
読み手の読むスピードを
コントロールできる「間」が配信側にあることです。
これによって作者の意図している演出効果を最大限に生かすことができます

多くの読者は作者の想定しているスピードよりも速く読み進めてしまうので
読むスピードをコントロールできる事はめちゃくちゃ大きい。

本作においても時計の音や周囲の雑音を変えることで
「間」の表現が最大化されるでしょうし
時間経過も音響効果でより一層の効果が発揮されるので、
もう見る前からワクワクしてきます(勝手に想像…)

「迫り来る時間」を実際の時計の「チクタク、チクタク……」音とか、
声がゆっくりになっていくとか想像しただけで、
オリジナルの何倍もゾクゾクする緊迫感ある作品になるのが目に浮かぶってもんです。

後半のストーリーも縛り付けられた男の脳内で進む緊迫のドラマなので、
これが映像効果で非常に見栄えが良い作品になるのは間違いありません。

ラストのインパクト


あと、ラストのキレ味。
最後のページ、最後のコマの衝撃度合い。
これも「おさむーびー」向けです。

これまでの「おさむーびー」に選ばれた作品の傾向が
こういうラストのオチ系が多く短編の醍醐味が堪能できます。
おそらく今後もこういったフックの利いたストーリーがチョイスされると予測できます。

本作においてもラストに追い詰められていく時間のトリックが気持ちいいほど炸裂しているので十分候補になりえるでしょう。

壮絶な孤独とその苦痛に耐える絶望的な恐怖を臨場感たっぷりに
ボイスコミックで味わえると思うだけで興奮しますね。はい。
十分に可能性はあるんではないかと。


この短編集が傑作揃いなのよ


本作は講談社の「手塚治虫漫画全集」では
「時計仕掛けのりんご」という短編集に収録されていますが
なんとこの短編にはすでに「おさむーびー」で取り上げられた
「バイパスの夜」「嚢」が収録されているんです。

収録作品
処刑は3時におわった
聖女懐妊
時計仕掛けのりんご
バイパスの夜

イエロー・ダスト
悪魔の開幕
帰還者

いかに、この短編集が優れた短編集であるか分かるのではないでしょうか。
そしてここから選ばれる可能性も極めて高いのではないかと…。
非常に秀作揃いの短編集になっていて「処刑は3時に終わった」以外にも
「おさむーびー」候補になり得る作品が多々あります。
ただおそらく現代のコンプラ問題に鑑みると少し難しいものもあります。

例えば

「悪魔の開幕」
これも非常に捨てがたい。面白い。
…ただね、これ総理大臣を暗殺するといったストーリーなんで、
さすがにあの事件以来、現代では難しいと思うんですよね。
でも政治家と裏組織の闇のようなストーリーはひどく現実的というか
実際にあったとしても何ら不思議ではない気がしますね。



「聖女懐妊」
これもね候補として面白いんですよ。
ロボットが妊娠するってストーリーなんですけど
本編には少々女性差別的要素があるので
これも現代的には難しいのかなと感じます。
手塚先生の恐ろしいところは誰よりも差別や偏見、そういったデリケートなものにクリエイターとして人一倍気を使っていながら
人一倍ストレートに描いてくるところです(笑)
ボクはね、もう手塚治虫がどういった人間か分かっているので
何とも思わないですけど多くの読者は戸惑うでしょうね。
特に令和のこの時代に「え?」って感じる描写は
少なからずあると思いますよ。

「帰還者」
これも捨てがたい。
これは宇宙飛行士の干からびた変死体事件が次々と起こり、それが
「宇宙からの性病」が原因ではないかというお話ですけれども
これもなかなかにスリリングでミステリアスでエロティックなんで
「おさむーびー」では難しいのかなと思っております。

宇宙とエロを両立させる発想がやっぱりスゴイ。
「宇宙からの性病」ってだけでもうヤバくないですか?


ちなみにこの両作は過去記事でご紹介しておりますので
気になる方はどうぞご覧になってみてください。


…とはいえ本作「処刑は3時に終わった」もナチスが女性を乱暴に扱う描写が出てきます。これも見ようによってはアウトでしょう。
ですが戦時下という異常な環境における描写とも見れますし
なにより戦争の悲惨さ、そして、反戦・風刺としてのメッセージ性も持っているので個人的にはセーフではないかなと。

この短編集全般に言えることですが
非常にアダルトでブラックな作品が多く収録されているのでいづれの作品も
観る人によっては目を背けたくなると感じるところもあろうかと思います。

ですが短いストーリーの中にしっかりとした起承転結があって
ラストのシニカルなオチ。
短編のお手本のような構成は手塚治虫の真骨頂を味わうことができます。
こういうドス黒い手塚治虫を知ることでより一層作家の本質を深く理解できるので個人的にも非常におすすめなので併せてご覧になって欲しい。

なにより本作においてはやっぱり
時間がスローモーションになるあたりとか時間経過の妙味が、
「おさむーびー」に非常にマッチしていると思いますので公式がチョイスしてくる確立が高いのではないかと思い今回取り上げさせて頂きました。

というわけで、今回は傑作サスペンス短編『処刑は3時に終わった』のご紹介と「おさむーびー」の大予測をお届けしました!
皆さんが思う「おさむーびー」の予想も、ぜひコメント欄で教えてください!

ではでは

「処刑は3時におわった」
「聖女懐妊」
「嚢」収録
空気の底オリジナル版はお得です


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