手塚治虫「幻の未公開作」構想10年の秘密に迫る!
今回は「ゴブリン公爵」をお届いたします。
恐らく多くの方がこの作品のことをご存じないと思います。
数ある手塚作品の中でもマイナー作品になりますし
ストーリーも決して面白いわけでもありません(笑)
ではなぜこの作品をご紹介しようと思ったのか?
はっきり言ってそれも分かりません(笑)
ただなんとなく…なんです。
ただなんとなく
手塚治虫の駄作をご紹介して見ようかなと思った訳であります。
もちろんこれは個人の主観によるものですので
これがめちゃくちゃ面白いという方もおられるとは思いますが
今回はボクが思う面白くない理由を深堀りしてみたいと思います。
それでは本編いってみましょう
-------------------------------
本作は
1985年9月から1986年2月まで
「週刊少年チャンピオン」にて連載された作品です。
手塚先生は89年に亡くなってるのでほぼ晩年に近い作品ですね。
晩年の傑作と言えば「アドルフに告ぐ」「ネオファウスト」「ルードウィヒB」などが思い浮かびますがこの「ゴブリン公爵」はその中でも異質なくらい面白くないです(笑)

その他の晩年の連載作品はと言うと
「陽だまりの樹」「ミッドナイト」「火の鳥太陽編」などありますが
どうですか?この中だと際立って面白くないですよね。
ほかにも「アトムキャット」を描いていますがこれは幼年向け作品なので除外しますけどほんとこの「ゴブリン公爵」が異質なんですよね
ここら辺の考察は後でするとして
本作のあらすじを見ていきましょう。
時は1976年
中国で古代遺跡が発掘されその中から青銅の巨人が発見されます。
それは3000年前に中国を統一した殷王朝が守護神として造った魔神で、
「燈台鬼」と呼ばれるものでした。

そしてバラバラの遺跡を…組み立ててみると?
念力で自由に動かせる恐るべき破壊ロボットだったことが分かります
世界を滅ぼすほどの破壊力を持っているが故にその像を破壊し埋められていたんですがそこに偶然神通力をもつ少女が現れ「燈台鬼」が動き出してしまいます。町中を散々破壊した後に黄河の底に沈んでしまうんですね
その絶大な力を目の当たりにした珍鬼という少年は「ゴブリン公爵」と名乗り「燈台鬼」を使って世界征服をたくらむというストーリーになっているんですが…
最初の導入には引き込まれる要素もあるんですが
その後は特に大きな盛り上がりもなく第2巻で終了です。
まぁこれでも長く続いた方なんじゃないかと思います。
序盤はいいんですけどね、でも全体的に漂う古臭さがたまりません(笑)
まず巨大ロボ?「燈台鬼」
ロボというか石造なんですけど頭のロウソクが消えたら終わりなんですけど
それ消えないの?っていうツッコミどころがあったり
神通力で動くんならなんで肩の上に乗ってるの?とか
まぁけっこうなツッコミどころ満載感な漫画です(笑)

なによりタイトルの「ゴブリン公爵」って「燈台鬼」の事じゃなくて
それを操る少年のことなんですね。しかもその少年の本名は珍鬼で
「ゴブリン公爵」って勝手に名乗っている名前なんですよ
どういうこと?
しかもこの「ゴブリン公爵」のおばさんが
文化大革命時代権力の座にあったあの毛沢東夫人の江青なんですね。
…でその時の権力者の甥であるという設定の優位性も序盤にどっかいっちゃいます(笑)
どういうこと?
「ビッグX」「マグマ大使」「魔神ガロン」の流れを汲んだ
巨大ロボットもので特撮の要素も垣間見れるんですけど中途半端なんですよね。
1985年当時で言えばかなりダサイ。
後半には対燈台鬼用の人工ロボが登場して
ロボットバトルを展開するんですけどこれがかなりダサイ(笑)

影響を受けやすい手塚先生がロボットアニメの影響を受けて描いたんでしょうけどこの古臭さはたまりません。
そしてクライマックスは駆け足のように収束していき
ゴブリンが自殺して終了
…とまぁツッコミどころ満載の漫画でありました。
なんでこんなに面白くない作品になってしまったのかというと
これはですね。
漫画の「謳い文句」に「構想10年」って書いてあるんですけど
これが答えなんですね
どういうことかと言いますと
遡ること約10年前、1973年頃、
この時期は手塚先生の大スランプの「冬の時代」と言われていた時です。
連載もどんどん打ち切られていき
週刊サンデーとは付き合いが創刊当時からほぼ途切れることなく連載していたのですが
ついにその付き合いも打ち切られることになります。
ちょうどその時に連載したのが「ダスト8」と「サンダーマスク」
どちらも半年で打ち切りになり
サンダーマスクにおいては手塚先生も自身で嫌いな部類に入る駄作
まさに低迷という名にふさわしい作品でした。
そして実はこの「ゴブリン公爵」はこの「サンダーマスク」の後に
「燈台鬼」という名前で連載を用意していた作品なんですね。
しかし「週刊サンデー」側から連載の契約が打ち切られます。
先生もまさか創刊時からの付き合いなので打ち切られることはないだろうと
次回作として用意していたんですがあえなく撃沈…。
サンデー側も滑り倒して人気の低迷していた手塚治虫とはもう終わりにしようという判断は正解でしたね
なんせ次に控えていた作品がコレでしたからね(笑)
…でその時に用意されていた細かく書かれているネームが現在でも手塚プロの資料室に眠っているそうです。
その貴重な未公開原稿は「手塚治虫(原画の秘密)」で見ることができますのでぜひご覧になってみてください。

その後、何もかも失った手塚先生が、週刊少年チャンピンにて連載したマンガが起死回生、復活の狼煙を挙げる
「ブラックジャック」となるわけですから時代とは分からないものです。
そして「ブラックジャック」の大ヒットののち「三つ目がとおる」などヒット作を連発し再び手塚治虫は漫画界のトップへと躍り出てきます。
そうして1985年に一度ボツになった「燈台鬼」の構想を修正したうえで
「ゴブリン公爵」とタイトルを変えて発表されたのが本作であります。

だから修正したとはいえ構想が10年前のプロットなんですよね。
普遍的なものであればいつの時代でも通用するんでしょうけど
これは色んなものの影響がごった煮になっちゃってとっ散らかっている印象が否めません。
前作サンダーマスクの影響なのか巨大ロボの流れがありますし
神通力で動かすという設定も1974年にユリ・ゲラーが来日して日本に一躍超能力ブームがあったのも影響してるでしょう。
物語の後半に出てくる
渚社長のひとり娘「渚いずみ」というキャラクターに至っては完全に吾妻ひでおの影響を感じます。
キャラクター自体先生がペン入れしていないのが分かるくらいペンタッチが異質に浮いて見えますからね
ちょっと強引なパンチラの寄せ方もかなり意識的な所作を感じます。
林荘次先生の「すこぶるランド」の対抗も感じられますね

この時にチャンピオンで流行ってた
ゴブリンのキャラ設定も見た目は美形の少年で強力な超能力を持つという
悪のカリスマ的な設定は自身の「バンパイア」のロックっぽくイメージしたのかなと思える節も見えます。
とまぁいろいろとツッコミどころがある漫画なんですが
実は手塚先生かなりお気に入りだったような感じなんですよ
コスプレなんかしてもうやる気満々と言いますか…(笑)

製作側としては10年間温めたと言う表現なのかも知れませんが
読者側としては10年前の消化不良を発表されたようなイメージでしょうか
というわけで今回は「ゴブリン公爵」についてお話しました。
最後までご視聴くださりありがとうございます。
