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【シン・ウルトラマン】初代の空想特撮としてのウルトラマン

『シン・ウルトラマン』を観ました!
樋口監督&庵野監修による、現行のTVシリーズとは違うウルトラマン。
それが果たしてどのような形になっているのか、いちウルトラマンファンとして期待と不安で胸が一杯でしたが、観終わって……納得、充実!

『シン・ウルトラマン』、最高に楽しい映画でした!
まさしく初代ウルトラマンの持つ、空想科学特撮としての雰囲気を現代にアレンジした、エンタメ性とテーマ性を両立した面白い特撮映画。
TVシリーズの現代版再構築として納得の出来で、見所も本当にたくさんありました。

TSUBURAYA IMAGINATIONのインタビューでは、樋口真嗣監督は『キャラクターのウルトラマンというよりは、エンターテイメントという形のウルトラマン』であるとコメントしており、その言葉通りの作品であったなと感じます。

「現在のニュージェネレーションヒーローズに続く、我らのヒーローとしてのウルトラマン」からは距離を置き、「地球人のために戦ってくれる謎の異星人」として、もう一度初代ウルトラマンを捉えなおす。その語り口は大人向けでありつつも、『大人の鑑賞に堪え得る』いやに重たい、リアルさだけを重視したようなアンバランスな代物ではない。「らしさ」を感じさせてくれるだけの設定考証と、リアリティから距離を置いた「絵的な、状況的な楽しさ」を両立させた、「空想とロマン」の言葉に負けない名作であったように思います。

というわけで……
本記事ではそんな「シン・ウルトラマン」の感想を書いていくわけです。
当然ながらネタバレを多く含み、また本作は出来ればネタバレ無しで観て戴きたい作品ですので、鑑賞前にお読みいただく事は推奨致しかねます。

「カラータイマーのないウルトラマン」

シン・ウルトラマンの一番のトピックはこれだと思う。
成田亨のデザイン意向に沿い、スーツの物理的制限をとっぱらった「ヒレ」の無い外見と、後付けされたカラータイマーの削除。
それは成田亨氏の理想を体現する姿である一方、カラータイマーによって生まれた「ウルトラマンというヒーローの文脈」を消し去るものでした。

カラータイマーの存在は、ウルトラマンというキャラクターのアイコンそのものだと思うんですよね。青く輝くその形が、ウルトラマンというヒーローの魂を象徴するようになっている。ピンチになると音を鳴らし赤く点滅するというのも、「テレビでの分かりやすさ」を重視した後付け設定であれ、「(何かを守る為に)傷つき、ピンチになりながらも戦い勝利するウルトラマン」の姿を分かりやすく描写し得るものでした。

シンマンではそれを、成田亨氏のデザインに沿う形で削除した。
意図と意義は十全に理解しつつ、「しかしそれでウルトラマンというヒーローを描くのに支障はないのだろうか?」とやきもきしました。

しかしその点には、まず制作側が「キャラクターとしてのウルトラマン」と「シン・ウルトラマン」を明確に分けて考えている事が分かり納得が行きました。シンマンは、われらのヒーローとしてのウルトラマンを分かりやすく描くという視点をそもそも持っていない。ではシンマンにおけるウルトラマンは、ただの不気味な異星人なのか? 「シン・ウルトラマン」は、その疑問の答えを、人間とウルトラマンの両面から探っていく物語だった。

シンマンの世界では、禍威獣と呼ばれる巨大生物が多数出現し始めている。その事に地球人はすっかり慣れ始めているけれど、流石に巨大な銀色のつるつるした宇宙人には馴染みがない。彼の目的も、構造も、コミュニケーションの可否も分からない。

原典のウルトラマンにおける「カラータイマー」は、その何もかも分からない存在の、取っ掛かりとなる要素だったように思う。鳴り響く音と赤の点滅に、イデ隊員は「赤ランプは万国共通」と発言する。近年では『ウルトラマンZ』においても、突如現れた宇宙人であるゼットに対し、主人公のハルキは、エネルギー減少のピンチに共感することで親近感を抱く。

つるりとしたシンウルトラマンには、その取っ掛かりはない。
二度目の戦いからは「体色の変化」という分かりやすい特徴が描写されるも、やはりそれは地球人にとって親しむに値する要素ではなかったろう。

早々にその正体を明かされた主人公・神永の態度も相まって、ウルトラマンの思考と行動は「理解出来得るが、ヒトとは違う」モノとして描写されている。

ウルトラマンの側もそれは同じことだった。
個々の能力が低い人間という種族は、己の社会を構成する群れをどのように認識しているのか。ひとつひとつ、手探りで人間との付き合い方を学んでいく神永(ウルトラマン)の、知的でありながら異質な雰囲気が見応えを感じさせる。

ウルトラマンは地球と違う星に住む、宇宙人なのだ。
キャラクターとして描かれる近年のウルトラマンとシンマンでのそれの描かれ方は、やはり親しみという面で大きく異なる。

『THE RISE OF ULTRAMAN』という作品がある。
それはアメリカンコミックという形で描かれる、新たな形の初代ウルトラマンだ。この作品においても、ウルトラマンは「異質な宇宙人」としてその性質・考え方の違いを描写されている。けれど『シン』のウルトラマンは、それより更に超然的で、どこかシステムめいている。意識の中で常にハヤタと対話が出来るライズウルトラマンに対し、シンウルトラマンでは宿主たる神永の意識は眠ったような状態にあるからだ。

人間の言葉、文明の概要は理解できても、心の機微を理解するには時間が掛かる。そんな彼が、神永の行動に心を動かされ、重大な判断を行っていく様。あくまで宇宙の保全機構が如き働きをしていたウルトラマンが、真に地球人を守る為に立ち上がり、また彼らに信頼の眼差しを向ける。

「ヒーローの証」たるカラータイマーを持たないウルトラマンは、故にこそ地球人にとっての「友となっていく」姿を丁寧に描けたのでは、と感じた。

もちろん、私個人の趣味趣向としては、やはりヒーローとしての・キャラクターとしてのウルトラマンが大好きなのですが。ニュージェネレーションヒーローズという形でその方向性が賑わっている今、また違った方向性で描かれる本作のような作品が生まれた事を、非常に嬉しく思います。


たっぷりつまったオマージュが楽しい

真面目な話は終わりました。
あとはラッキョウの話です。

いや、ラッキョウ!
食べてましたよね、ラッキョウ!!!
絶対食べるでしょラッキョウ、と思ってたら何の説明もなくラッキョウ食べてる山本メフィラス星人の姿が観られて大変満足です。

っていうのは半分冗談なんですが。
冒頭からいきなりスーツ改造(概念)のシン・ゴメスが出てきて、更にウルトラQ的な世界観の下積みをガンガン描写していく序盤とか。ザラブ星人周りの『完コピ』具合とか、初代ウルトラマンとその周辺に対するオマージュ良かったですよね。観てて楽しくって……

背面の無い怪しさ抜群のザラブ星人のデザインの驚き、も良かったんですが、彼が原典で着ていたコートを着て出てきたり、禍特隊基地にやって来る時に電子機器ぶっ壊しちゃったり、翻訳機だったり、星野君ばりに「ちょっとそれ大丈夫なん?」ってなる浅見さんだったり、目の電飾破壊チョップだったり!

電飾破壊チョップの当たり、ムーブが完全に再現でしたね。
ってことは眼も……あーッ、やった! っていう面白さ。でもそれだけに留まらず、現代の都会のビル群を飛び回りながらの戦闘とかの新しい映像の楽しさを提供してくれる。これが良い。

シン・メフィラスのデザインもカッコよくて好きです。
名刺を用意したり、やたらとことわざを引用したり。微妙に鼻持ちならない感じがメフィラス~って感じで嬉しいし、その雰囲気を山本耕史さんがめちゃくちゃ上手く醸し出していた。その上で、ウルトラマンと互角以上に張り合うメフィラス星人との戦い、燃えましたね。

「よそう……」の辺りはマジビビりしましたけど。
なんか……ラスト周りのアレで何かあるな……と思ってたらいるんだもんね、ゾーフィ。
二重ラインと黒いトサカでパッと見て分かるゾフィー……じゃないよこれゾーフィだよ、と思ったらマジでゾーフィ。本当にゾーフィ出すんだ!?

「光の国」ってそれはそれで独善じゃない、みたいな描き方とかウルトラマンこそが本当の敵……みたいなアレは苦手な方なのですが、これは前述のカラータイマーの無い姿がプラスに働いた。やはりこれはヒーローとしてのM78星人でなく、地球人と違う論理で働くM87星人なのだという感覚。国という言葉のニュアンスを嫌って「光の星」としたのも、またちょっと差別化の意味合いが出てきてて良いなと思います。

あと巨大フジ隊員ね。
あれやるんだ!? まぁやるか!!
そういうのを平然とぶち込んで来れるのが「シン・ウルトラマン」を硬く真面目なだけの大人向けにしない強さだったと思うんですよ。割り勘メフィラスとかもそうですけど。で、それをしっかりストーリーの流れにも入れ込んでいる。この丁寧さ、とても好きです。
まぁ巨大フジ隊員も世界観によっては異常に強いウルトラマンになるしな……(それはそれでどうだろうか)

ラスボスたるゼットンの絶望感も半端なかったね。
「かつてのゼットンへの恐怖心」を再現した怪獣としては、やはりグリーザなども好きなんだけど。「こんなんどうすりゃいいんだ!?」という脅威への絶望感が凄くてよかった。あと本当に一兆度出すとマジでヤバいんだね。そして宇宙恐龍ではない。

再構成としてのポイント

全体通して観て見ると、やっぱりラストの「ゼットンを人間の力で倒す」という点に向けて話が進んでいるのが良い。ウルトラマンという、人間に興味を抱いた存在がいて。彼らに守られ戦う中で、人間は「じゃあウルトラマンに頼ればいいんじゃないの」と思い始めてしまって。

「ウルトラマンが派手に活躍し事態を収拾する序盤の怪獣戦×2」と、「ウルトラマンが彼なりに人類に味方していると分かるザラブ戦」を経て、メフィラスの計画が原典37話「小さな英雄」での問題提起に繋がり、それを「ゼットンを地球人自身の力で打倒する」ラストに繋げていく。初代ウルトラマンの特徴的な要点を上手く繋いで一つの物語として再構成しているよなーと唸らされました。

地球人はベータ―システムによってウルトラマン同様の存在になり得る……というのも、これ微妙に「ウルトラマンは元々地球人とよく似た生命体だった」という部分を拾ってる感じがして好きです。原理等々は違うんですけど。原典でザラブ星人が地球人を表した「まだ幼い弟」という文言が、外星人の科学に手も足も出ない地球人の苦悩として出力されている感じも良い。諦めそうになったり、諦めなかったり。そういうウルトラマンが好きになり得る要素がキチンと描写された上での結末、良かったです。

シン・ウルトラファイト

正気か? って思ったやつ。
今のところは前売り特典としてツブイマでのみ観られるヤツですが、楽しいですよ。本編での流れとは全然無関係に……ウルトラファイトとして戦いを紹介している……

セブンガーファイトといい、上の世代のウルトラファイトに対する熱量ってなんだか羨ましい感じがしますね。シン・ウルトラマンという作品に対するそれとは違うウルトラマンへのこだわりの昇華というか、めちゃくちゃ手の込んだ遊びというか……ニュージェネレーションウルトラファイト(新作編)とシン・ウルトラファイト(切り抜き編)……

エピソード3は5月30日配信だそうで、それまで楽しみに待っています!

その他、細かく好きなとこ

光線作画!!!!!

今回の光線、飯塚定雄さん作画なんですよね……
だからか、光線はどのシーンもめっちゃきれいで良かったです。

あとシンマンが最初降りてくる時。
あそこだけAタイプ寄りのマスク採用してるの、らしくて良いよね。
最初は赤ラインが無いのも含めて、なんとなくネクサス(というかザ・ネクスト)のアンファンスを思い出したり。

原典怪獣のスーツ改造を、CG予算の節約に合わせて設定付けしてるところも好きです。同型の禍威獣なんです、って裏付けていくの、割と好き。

ザラブに捕まった神永がベータカプセル持ってない……の周りもね。
原典ではその、ハヤタ隊員のうっかりなんですけど。それをストーリーの流れに入れ込んでるの良いなーと思います。突入シーンも楽しかったね。

そう、楽しいシーン多かったんですよ。
難しい話をしているし、やはりどことなく閉塞感を覚える世界観ではあるんだけど。それが苦しくならず観れたのは、ちょっと楽しいコメディ寄りな要素を投入してくれているからで、それは原典の科特隊のちょっとした緩さにも繋がる、「オリジナルに近い空気感」だよなと思うのでした。

あと最初書き忘れてたんですけど(追記)。
回転への信頼性が高いのも好きです。回ればなんとかなる理論。最近だとあんまり回転でどうにかしないんですけど、人形的なピシッとしたポーズで乱回転するシンウルトラマン、やってくれるたびに笑顔になりました。

そんなわけで。
長々と書きましたけど、『シン・ウルトラマン』、めちゃくちゃ楽しみました。良いモノ観たなー!

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