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Marathonが影響を受けたグラフィックデザインの歴史【ゲーム,デザイナーズ・リパブリック】

経緯

ゲーム会社Bungieによって開発されている『Marathon』というゲーム内に、2017年以前にデザインしたグラフィックが無許可で使用されているという告発がデザイナー自身からポストされ、以前話題になりました(以下の投稿)

この話題について、海外のデザイナーの方が「MarathonがデザインのベースとしているSF風のグラフィックやレタリングのデザインは、『Wipeout』というゲームへの協力などでヒットした『デザイナーズ・リパブリック』というスタジオから始まり、様々なデザイナーや作品が関わって醸成されてきた」という内容をスレッドで投稿していました。

この記事は、このスレッド内でまとめられている2Dデザイナーと、彼らの作品に影響を受けたゲームについてまとめつつ、それ以前の他のデザイナーや作品との関連についてメモしたものです。

スレッド内で知り合いの3Dデザイナーを紹介している所もあるのですが、ちょっと分からない所は省きました。翻訳が間違ってたらすみません。ではどうぞ。

主なデザイナー紹介

Marathonのデザインに影響を与えていると思われるデザイナー達の紹介です。

・Büro Destruct(bureau destruct)

ベルンを拠点とするグラフィックデザインスタジオ。スイスのデザイナー。
Xのアカウントは@BuroDestruct

・デザイナーズ・リパブリック

ゲーム『Wipeout』へデザインで参加したのが1995年で、レタリングで大きな影響を以降のデザインに残しました。
フライヤーなどの作品は以下の通り。

・アーミン・ホフマン

スイスのグラフィックデザイナーです。

彼のデザインした特徴的な図形を体験できるサイトがオープンソースで公開されています(以下リンク)

https://bbtgnn.github.io/hofmann-1.0.0/index.html

・GMUNK

@gmunk
2000年代初頭に生まれたデザイン。フラッシュが導入された時代のWebの雰囲気が、グリッチやフォントにあらわれています。

・クリスカニンガム

このジャンルの映像作品では間違いなく出てくる名前で、エイフェックス・ツインのMVなどで有名です。エイフェックス・ツインの楽曲ジャケットにはMarathonで使われたものと近いフォントが見られ、ロゴにはアーミン・ホフマンの影響も見受けられます。

彼の監督したプレイステーションの広告など、この時代のゲーム広告は奇妙なアート映像・画像が使われていました。ブランドを象徴する「三角、丸、バツ、四角」のシンボルと暗い背景、ショッキングなカラーが独自の世界観を作り出しています。

PS2の広告
ショッキングかつ奇妙なのが特徴

・GHOST HARDWARE

デザインスタジオの名前で、実際のクリエイターは@safehaven
この方のフォントやアートスタイルを踏襲したデザインが、日本製のMVやグラフィックデザインでもよく見られます。

・Marathonのクリエイターたち

Marathonは、以下のティザームービーで大きな注目を集めました。

この映像のディレクターはraoulmarksとPatrick Clairです。

また、@MichaelRigleyがグリッチ表現、GUIを担当しています。

そして、最終的にMarathonのアルファテストで、ゲーム内にN²(@4nt1r34l)の制作したデザインが使われているのが発見されるに至りました。

彼女の制作したデザインは以下のページで見られます。「2017年以前よりレーベルでの仕事をしていたと思う」とスレッド内に書かれていました。

デザイナー以外の要素

Marathonに影響を与えていると思われるゲームなどの作品の紹介です。

・ゲーム

これは盗作騒動以前に作られた動画で、Marathonのアートスタイルに影響を与えたものを、全体的な要素や類似した作品に分けて解説、紹介しています。

全体的な要素として様々な物を挙げています。
F1、MotoGPのデザインが高速で動く物体でも目立つようなハイコントラストのカラースキームと鋭角のデザイン、企業ロゴが隙間無く詰まったディテール。
NIKEのスピードと高効率を感じさせるデザインと一目で分かるロゴ。
アニメ映画の攻殻機動隊やクリスカニンガム作品で見られる人体と機械の融合。
PS2の広告に見られる非現実的な光景と特徴的シンボルの組み合わせ、などが要素として取り上げられています。

アートディレクターのポスト
F1やMotoGPなど現実のデザインから着想を得ている

また、類似したゲームの具体例としてMirror's Edge、THE FINALS、Wipeoutなどが、ゲーム以外の作品としてはteenage engineeringの製品、デザイナーチームのMetahaven、ブルータリズムを踏襲したWebデザインやブランディングを挙げています。

Xのスレッド内では、KILLER7とジェットセットラジオが似たアートスタイルのゲームとして言及されていました。

ジェットセットラジオはゲーム内でもグラフィティアートを描くことができるなど、デザインとゲームの内容が一致しています。

グラフィックデザインとの関連

以降は書籍の知識などと合わせて考察していきます。

・グラフィティの要素を含んでいるロゴやタイトル

特徴的なロゴまたはタイトル、ハイコントラストなカラースキームを中心に、必要ならグリッチや3Dを足してポスターやコンセプトアートにしていると感じました。

題字を中心に、それ以外の文字を散らしてポスターなどにする所などは、昔の雑誌『デ・ステイル』の表紙から始まったデザインだと思います。このデ・ステイルが発刊されて以降グラフィックデザインに様々な変化が起こり、更に時代が進むと写真植字が生まれて職人がオリジナルのフォントを試しやすくなりました。

Cover of De Stijl magazine, 1925 (via here)

ただ、このように似ている物は挙げられますが、冒頭のスレッドで紹介された作品群=デザイナーズ・リパブリックを始めとした2Dデザインは、アーミン・ホフマンのような幾何学模様のロゴ系を除くと、軸がグラフィティアート風のタイポグラフィを用いたロゴやタイトルになっています。

そして、スレッドを見ると分かりますが後者の方が圧倒的に多いです。
3D作品やテクスチャ、映像作品など活用の手段は複数あると思いますが、中心となるロゴかタイトルをデザインする際には、グラフィティの知識を知っておく必要があるかもしれません。

自分はデザイナーズ・リパブリックやジェットセットラジオなどを知っていたのでグラフィティを元にしたデザインには触れていたものの、それらが何故使われているのか、どう作っているかについては知らなかったので、今回の調査で意識が向きました。

・アニメ作品

日本のSF作品への言及はあるものの、映画のAKIRAと攻殻機動隊だけに留まっています。海外から言及される日本のSF作品というと基本的にこの二作品になるのですが(映画なら黒澤明みたいなノリで)、TVシリーズのエヴァンゲリオンはタイポグラフィもモーションデザインも優れていて好きです。

基本的に味方のロボットが追い詰められている時に「例のアレが進行中、間に合いません!」というセリフと共に点滅しているUIが表示されます。

このUIの画面はオレンジを基調としたカラースキームが特徴的なので、知らない人も「これエヴァじゃん」と分かり、フォントも数種類用意した上で例の明朝体っぽいフォントは必ず大きく出されるので「これエヴァを意識したヤツじゃん」となる独自性があります。

話が逸れましたが、「タイトルとカラースキーム」を中心としたデザインの一種だとは思います。

・国内のゲーム作品

日本のゲーム作品の中では、1999年に発売された『エースコンバット3』は2Dアニメを取り入れるなどストーリーに関わる部分のデザインが一新され、通信画面、データスワローの字体などにグラフィティっぽいフォントが使われていたりします。

この記事のバナーになっている写真は、私が秋葉原のゲームセンターで撮影したゲーム筐体で、このゲーム『テクノドライブ』やエースコンバット3など、ナムコが開発した同時期のゲームに同じタイプのレタリングが見られます。

この懐かしい感じ

・海外のゲーム作品

スレッドや動画内で言及されたゲームの中では、クラフトワークの楽曲『ツール・ド・フランス』のリミックスが収録されている『Wipeout 2048』をプレイステーションVitaでプレイした事があります。

20世紀後半の新しいグラフィックデザインはレコードのジャケットでよく見られたと聞きます。しかし、クラフトワークの『人間解体』がロシア構成主義のような見た目のジャケットを使ったように、ただ真新しいデザインを求めていただけでなく、楽曲やジャンルに合わせたデザインが次々と考え出され、デザイナーズ・リパブリックの時代に近づいて行ったように思えます。

Wipeoutと並べて紹介されている『ジェットセットラジオ』の特徴である、グラフィティをゲーム内システムに取り込むスタイルは『HYPERFUNK』などのゲームに受け継がれています。

・強いメッセージ性は排している

今回の掘り下げてきたデザインは政治色が無く脱臭されているように感じました。大量消費社会への皮肉みたいなものもありません。

自分の好きなデザイナーズ・リパブリックのポスターに『work,buy,consume,die』というものがありますが、これと似た雰囲気の作品はあまり見られず、むしろ企業広告デザインの一種に近い気がします。

デザイナーズ・リパブリック
work,buy,consume,die

自分が過去に見たグラフィックデザインには、プロパガンダまたは反戦運動の気質があり、企業広告を含めてその時代の人々を強く揺さぶる物が含まれていました。

ポスターなら『"Daddy, What Did You Do in the Great War?"』が徴兵プロパガンダの代表例として、レコードのジャケットだと『God Save The Queen』のものなど、大衆の羞恥心を突いた広告や権力への反逆など、強いメッセージ性が特徴的でした。

徴兵プロパガンダの例
パンクの代表例

デザイナー&作品紹介で挙げた中では、例外的にデザイナーチームMetahavenはアメリカ政府によるデジタル監視が問題になった時代に、社会情勢などをまとめた作品を発信しています。

上記を除けば今回扱ったデザインは、戦意高揚やパンクのような派手さは無くメッセージ性は抑えられ、とは言えマクドナルドの広告のように特定の商品やブランドに注目させるものでもない、スタイルと雰囲気を重視したデザインに思えます。

それ故にSFの雰囲気を感じさせるゲーム内の素材や、映像作品に使いやすいのではないでしょうか。ロシア構成主義とか使った瞬間にソビエト連邦国歌が流れるような雰囲気になりますし。

まとめ

ロゴとカラースキームを軸に、幾何学系またはグラフィティ風のロゴを中心としたデザインであり、反戦やプロパガンダなど政治的な意味合いは脱臭しスタイルのみ重視したもの。
無理してまとめるなら、これらが今回扱ったデザインの特徴です。

商業利用に関しては、映像作品かゲーム内アセットとしての使用、ポスターや告知、DJ用の映像を作るなどの例をスレッド内外の情報を通して見ることができました。

・映像作品との関係

Marathonのデザインは「SFの良い感じの雰囲気」を目指したとしてもハリウッドやディズニーのような映画らしさは少なく、それらで使われるティールオレンジ配色の雰囲気とも異なっています。
Marathonのアートディレクター@josephacrossはDUNE、実写版の攻殻機動隊、AppleTVの実写ドラマのビジュアルデザインも経験していますが、これらの映像作品は前述のハリウッドやディズニーに近いタイプの映像作品でした。

それに対して、Alberto Mielgo監督の手掛けたMarathonのシネマティックトレーラーや、Neill Blomkamp監督による『Anthem』『OFF THE GRID』などのトレーラー映像は、どれもゲームのPVであるものの、あまり映画の予告らしくない雰囲気の映像に仕上がっています。

Alberto Mielgo監督のトレーラー

彼らの作品が既存の物と、どこが違うのか調べるとMarathonの目指しているリアリズムが何なのか分かるかもしれません(Mielgo監督の作品は独特のカメラワークだけで彼のものだと分かったり、細かい所は色々出せると思いますが省略します)

・プレイステーションの宣伝

デザイナー紹介で名前が出たクリスカニンガムも参加したプレイステーションのコマーシャルは、ショッキングなグラフィックの面が目立ちますが、意外とコミュニティに根ざした手法も取っています。

例えば、プレイステーション2の宣伝ではイギリスのプロモーションで、音楽イベントのグラストンベリー・フェスティバルでポストカードを配ったり、プレイステーション1では各地のクラブにプレイステーションで遊べるコーナーを作ったりと、音楽シーンや映画(マトリックスなど)との繋がりを重視した宣伝を行っていました(以下の動画参照)

デザイナーズ・リパブリックのデザインやプレステの宣伝が、元々ストリート発祥のグラフィティやクラブ文化に影響を受けて生まれたものであるとするならば、デザイン自体ではなくストリートやクラブ、モータースポーツなどの現場を知ることで理解が深まるはずです。

・デザインの活用法

Y2Kデザインの一種なので、今ちょうど流行ってる分野で出せば使えると思います。比較的ボールドまたはグラフィティを模したフォントやハイコントラストなカラー、幾何学的な要素のロゴなどが特徴です。
あと、上記で述べた通りプロパガンダ的な使い方が少ないので、上手いことやれば第一人者です。

・参考書(グラフィックデザイン)

・note

デ・ステイルについての記事がありました。後で読みます。

・おまけ

調べ物中に見つけた喫煙に対する警告のポスター
誰が作ったか分からないけど良い

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