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嫁の居ぬ間にアーリオ・オーリオ

今日は料理が作りたい。
そう思うのは決まって妻と子どもが家にいない時だ。
いや、別に妻と子がいても、料理を作るのだが、自分のために作るという意味ではこれからつくるのは趣味の料理だ。

私はワインをこよなく愛するがゆえに、料理を作るのも好きだ。
料理はワインを語るうえで、欠かせないものだし、私の片思いの良き相談相手になってくれている。

文学的に言えばそういう表現になるのだが、とどのつまりは、つまみ食いをしながら、調味料兼、食中酒用のワインを飲む背徳感というのがなんも言えず好きなのだ。

ただ、ここで作れる料理は限られている。
なぜなら、妻のおかず消費パターンを緻密に計算し、そのうえで使える食材を正確にはじき出さないといけないからだ。

野菜室を開ける前に、一度、イメージトレーニングをする。
玉ねぎは、いつもの場所にあるはずだ。
これはスタメンだから、躊躇なく使える。
確か先週末に、実家から大量にキュウリをもらったはずだ。
これもおそらく持て余しているだろう。

あとは何があるか予測がつかない。
私は意を決して、野菜室を開け、隅々まで目を光らせる。
玉ねぎとキュウリは確認ができた。
あとはキャベツが少し、ニンジンもありそうだ。
キッチンペーパーに包まれているのはジャガイモだろうか。
そして、やたらと場所をとっている黄色い柑橘が目に入る。
「これは…なんだ?」

手に取りラベルを見ると
『宇和ゴールド』
と書いてある。

はじめまして、宇和ゴールドさん。
あなたは誰でしょうか。

チャットGPTに聞いてみると、どうやら愛媛県の宇和島市周辺で栽培されているブランド柑橘らしい。
果肉はみずみずしく、華やかな香りと文旦よりも軽やかな苦みが特徴らしい。

どうして、我が家にあるのかはわからないが、とにかく美味しそうだ。
だが、我が家のフルーツは4歳の娘に献上される仕組みになっている。
私が最初に食べるなど、考えるだけでも恐ろしい。

私は、いったん野菜室を閉め、考える。

皮だけなら使っていいのではないか?

そうだ、宇和ゴールドは皮にも爽やかな香りがあるらしい。
よし、今日の献立が決まった。
瀬戸内の潮薫るアーリオ・オーリオ風にしよう。

―材料―
スパゲッティー   100g
玉ねぎ       半分(入れ忘れたのでなくてもよいと判明)
キュウリ      3分の1
煮干        大きいもの4~5尾
宇和ゴールドの皮  怒られないだけ
オリーブオイル   大さじ2~3くらい
にんにくチューブ  少々
唐辛子       少々
塩         少々 
白ワイン      少々     
(ナンプラー)   お好みで
(フェンネル)   ひとつまみ

今日の“瀬戸内の潮薫る”担当の皆様↓

皮しか食べれないのが残念
煮干、西日本ではいりこという
調味料を材料に含める姑息さ


材料として書いているが、私は料理をする時はほとんど計らないし、分量外のものを突然入れたくなる衝動を持っている。

ワインは、コンビニにあるハーフボトルのワインの中で一番それらしいものを選んだ。

奇跡的にソアーヴェがあった。
ソアーヴェはイタリア北東部ヴェネト州の産地で、ガルガーネガという品種を主体にしたワインだ。
私が飲んだものは、爽やかな柑橘、追いかけるようにリンゴのような優しい香りがある。軽いハーブを思わせるニュアンスでほのかに苦みを感じるワインだった。
魚介とも相性が良く、今日の料理に合わせるには割と芯を食った組み合わせだと思う。

本日のワイン。DOCソアーヴェ ほどよい生活感を添えて

良く冷えた白ワインはこの時期にちょうどいい。

私の料理で重視しているポイントは3つだ。
美味しいこと。
ワインを面白がれること。
そして、なるべく材料を使った痕跡を残さないことだ。

ワインボトルもこっそり、ゴミ捨て場に出しておけば、今日の晩酌はノーカンになる。


スパゲッティの盛り付けは難しい。え?麺多すぎ?

味は美味しかった。
アーリオ・オーリオといいながらチューブしかなかったことに罪悪感を覚えたが、ワインとの相性をを考えると強すぎず、かえって良かったかもしれない。
唯一、残念な点があるとしたら、いりこが固かったことだ。
次は早めに水で戻しておこうと思う。

是非、おうちの野菜室で余った宇和ゴールドを見つけたら試してほしい逸品だ。

こうして私の密かな愉しみは、何事もなかったかのように胃袋とゴミ箱の中に消えていった。


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