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トルコ旅行記#8 ひげおやじとモーニングチャイをキメる(2日目②)

いま、私の目の前にはひげ面のおやじがいる。
昨日まで大阪にいたのに、今はサフランボルというトルコの小さな町で謎のひげおやじとモーニングチャイをキメている。



遡ること15分前。このひげおやじがメトロ社の事務所に車で迎えに来てくれた。
彼は地球の歩き方に載っていた。
職業は杖職人(バストンジュ)で、バストンジュという宿の名前はここから来ているらしい。
彼のミニバンの助手席に乗りこみ出発。

彼は英語を少し話せるくらいなので、僕のつたない英語でちょうど上手いことコミュニケーションが取れる。
僕は気になっていた日本語が話せる娘さんの話題を持ちかけた。
話によると、名前はヤスミン、歳は僕と同じ22歳で語学堪能(8カ国語!しかも大学には行っておらず独学らしい)おまけに街で評判の美人さんらしい。
少なからずテンションがあがる。

少し走り、団地に差し掛かったところで道端に一人の男が壊れかけのテレビ(ラジオであってほしかった)を持って立っていた。
親父さんがそこで車をとめると、その男はドアを開けテレビを積み込んだ。
「あれ誰なん?」
『彼はヤスミンの旦那だよ』
うへっ!もう結婚してたんかい!
これは気を付けないと!
だってイスラムの国は奥さんが不倫していたら相手の男を殺してもいいっていうのが確かコーランか何かに書いているらしいのだ。
不倫とまではいかなくても、ちょっと目の色変えておしゃべりしてたら、嫉妬して怒ってくるに違いない。

「そう、素敵な旦那さんやな・・・」
ショックの色を隠そうとしたが、少なからず同様の色が顔に表れていたのかもしれず、親父が話題を変えてきた。
『腹減ってないか?近くでパンでも買ってお茶でもしよう』
「いいね、チャイはまだ飲んでないから早く飲みたかってん♪」
親父はパン屋の前で車をとめた。

パン屋といってもここで作っているのはリング状で周りにはゴマがふんだんにくっついているパン一種類だけ。
でもなんだか香ばしい匂いがして、舌の根元から唾液があふれ出てくる。
そのパン屋のちょうど向かいにチャイハネ(喫茶店)があり、ここで朝食だ。
この店は親父の行きつけのようで、席につくと勝手にチャイが出された。

チャイとは牛乳に直接茶葉を入れて炊いたミルクティーのことで、ちいさな湯のみサイズのグラスに並々と入っている。
それに角砂糖を2個入れて一気にかき混ぜる。

イスラムの国ではお酒は禁止されているので、朝昼晩、チャイは食事にもおしゃべりにも欠かせないのだ。
なんだか知らないひげ面の親父と向き合って、パンとチャイでトルコ初の朝食。
これだから旅はやめられない。

親父はパクパクとすぐにパンを食べ、新聞の上に落ちたゴマを集めて一挙に吸い上げた。
僕も負けじと同じことをする。
顔を見合わせて笑う。
チャイをおかわりする。
周りのおっちゃんたちも、それぞれの朝の時間をのんびりと過ごしている。
極東から来た外人が居ようが居まいがおかまいなし。
既にこの街の住人になっているような錯覚に陥ってしまう。

パンを食べ終わりそろそろかなって立ち去ろうとすると、親父の知り合いがやってきて雑談が始まった。
なんかやたら陽気なオヤジでマシンガントークを展開している。
寡黙な親父と対照的で面白い。

パンとチャイをもう一度食べ終わりやっと出発。既に宿の近くだったようで車はすぐにとまった。
「杖屋さんのペンション」と日本語で書かれたかわいい宿だった。


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