劇団ミュOp.5 Musical 『Liebe シューマンの愛したひと』観劇記録
Story
19世紀、ドイツ。
父ヴィークの厳しい英才教育のもと、娘のクララは幼い頃からピアノを叩き込まれ、当時としては珍しい女性ピアニストとして頭角を現し始める。
だがそんな折り、クララは、父の弟子となったシューマンと恋に落ちる。
だがシューマンは貧しく、父は二人の結婚に猛反対。二人を別れさせるために裁判まで起こす。
さらに、二人の間に若き音楽家ブラームスまで現れて……!
史実をもとに織りなす、深く、そして美しい、究極の愛のミュージカル!
この作品のテーマである愛。
使い古された言葉。ときに陳腐にもなる。
それでも、愛という言葉を鼻で笑う人とは、たぶん友達にはなれない。
愛と聞いて、皆さんは何を思い浮かべるだろう。
私はエーリッヒ・フロムの名著
『愛するということ(原題: The Art of Loving)』が真っ先に思い浮かんだ。
読んだことがあれば、不要だと思うが、
断片だけ抜き出すと誤解を生む可能性があるため少し書く。
フロムは言う。
愛は「技術」である。
ピアノや医学と同じく、理論と実践の両面から学ぶべきもの。
愛されることを望むのではなく、愛する能力を育てること。
「恋に落ちる(fall in love)」という一過性の情熱ではなく、
「愛の中に立ち続ける(stand in love)」という持続こそが重要だと。
ロマンやエモーションを求める人には、少し冷たく響くかもしれない。
けれど私は、この本は感情を否定するためではなく、
愛をより誠実に扱うための本だと思っている。
ミュージカルの内容に戻ろう。
舞台は19世紀ドイツ。
正直に言えば、私はヨーロッパ史に詳しくない。
世界史は履修したが、好きな時代だけをつまみ食いしてきた程度だ。
クラシック音楽も、有名な作曲家と代表曲が分かるくらい。
そんな浅学な観客である。
それでも、幕が上がった瞬間に引き込まれた。
一枚の影絵のような純白の舞台。
窓や扉を模したセット、白い机、白い椅子。
物語は一人の老女の登場から始まる。相手は記者らしい。
「クララ・シューマンが愛していたのは?」
答えを最後まで紡がず、立ち去る。
この導入が、とても好きだった。
一瞬で物語に心を掴まれた。
作中で繰り返し歌われるナンバー『Liebe』。
その都度歌詞が変わり、クララの心情が重ねられていく。
出会いと恋の芽生え。
父による悪評の刷り込み、別の男性からのキス、失恋の痛み。
そしてロベルトへの永遠の愛。
同じ旋律が、まったく異なる色を帯びて響く。
語らずにはいられないのが、『祈り』だ。
クララを常に見守ってきたレーザー。
ロベルトとの結婚に反対しながらも、父であることを捨てなかったヴィーク。
クララを想う気持ちには、
形が違っても「愛」が確かに宿っていた。
そしてラストは再び、老女の独白に戻る。
老女はレーザーだった。
クララの追悼記事を書く記者に、自分の目で確かめるよう墓参りを勧める。
誰を愛していたのか。
答えはあまりにも明白だ。
観劇後、私はクララの墓の写真を調べた。
同じことをした観客は多いだろう。
気づけば涙が出ていた。
40年会えずとも想い続ける、
ここまで人を愛することができるのかと。
もしこの物語が、ただ悲しいだけの作品に聞こえてしまったなら、
それは私の文章の責任だ。
確かに切ない場面は多い。
だが、アップテンポのナンバーもあり、
緩急のある構成で、決して重苦しいばかりではない。
観劇後、私の中に残ったのは、「愛」だった。
未熟な愛は言う。
『あなたが必要だから、あなたを愛する』
成熟した愛は言う。
『あなたを愛しているから、あなたが必要だ』」
舞台に立った方々に感謝を。
観劇できたことに感謝を。
そして、この作品に辿り着くまでの自分の人生に感謝を。
劇団ミュ ミュージカルOp.5
— 劇団ミュ公式 (@theater_mu) February 1, 2026
『Liebe シューマンの愛したひと』
全22ステージ終了いたしました🕊️🎹
ご来場のお客様はもちろん、ご声援いただいたお客様、ありがとうございました♫⊹₊⟡⋆
キャスト・スタッフ一同、心よりお礼申し上げます💐✨… pic.twitter.com/JwMxQLZjVK
