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還暦男の独り言【第2章】ソノウタノナハ第5話 決戦

ユメノツヅキ



ダミ声のケンちゃんの声が近づいてくる
[さあケンちゃん 次のレースも頼むよ]
という思いで ケンちゃんのもとへ。
100円を渡し、
メモを受け取る。
私が選んだ3頭と重なる馬がいるかどうか…。
それを気にしながら
半分に折られたメモを
指でずらしながら期待を込めて見ると…。
そこに書かれていたものは…!!


「88」



と一点だけ書かれてある。
私は目を疑った。
そして U ターンして ケンちゃんの元に戻って行った。
人だかりの後ろで
ケンちゃんは叫んでいる。

はいごごぉ、勝負!はいごごぉ 勝負だよ!


予想屋ケンちゃん



私はどこかで
確信に近い出会いを
感じてしまっている。

なにせ「 ハチハチ」と 言っているのですから

この「ハチハチ」魔力
私にとって何か因縁のある響きなんです。
天国にいるのか
地獄にいるのかわからない
父親の遺言
8⃣8⃣の馬券の裏に書かれていたメモは

「ユメノツヅキ」


私は思い出してしまった。
それと同時に
間に合わなかったレースの残念な思いも
残像として 私の脳裏に残っているのだ
(あの時、時間さえあれば100万円近く大金が
転がり込んでいたはずの後悔)


その時の私の感情は、
動脈から毛細血管 へ血流が流れてくる
それを感じ取れるくらいの高揚感
溢れ出ているのだ。
私はこのレース

「ハチハチ」



を買わなければならない。
間違いなく「来る!」


世の中の全てを信じなかった私が、
あのダミ声のケンちゃんのメモ紙だけは
何だか信じなければならないという






貴様、我を呼んだか?




 「!魔力!」


が私の全細胞に伝わってくるのだ。
掲示板に目をやる。

8⃣8⃣は7.3倍!


1点とメモには書いてあるので
ここは やはり 勝負だな
と1万円を入れる覚悟をした
そう思いながら 馬券窓口へ向かった。
今度は時間もたっぷりあるので
買えないということは絶対にありえない。

いや、あってはならない。

そこに向かう途中に
いろんなことが頭の中で巡ります。
これくらい自信を持って1点予想
しかもその予想が
「ハチハチ」と父親の遺言 「ユメノツヅキ」
符号がしっかり 私の背中を後押ししているのです。

こんな機会はなかなか巡っては来ないのではなかろうかと
確信に近い自信が湧いてくる。

今までの自分の人生を顧みると

「いやそんな都合よく 巡っては来ないよ」



とかいろんな感情がこみ上げてくるのです

だとしたら、

ここは今まで私がやったことのない勝負を
する時なのではなかろうかと 勝手に解釈をし、
窓口前に着いて
財布の中から1万円ではなく、
5万円を取り出し

「ハチハチ」


とコールするのです。

「ハチハチ、5万円ですね?」



と、コール・アンド・レスポンス
マークシート用紙導入された年だったっけ?
それでも不慣れな私は、
人の温かみのある

「窓口購入が…好き❤」


なのです。

その窓口のお姉さんとは言えない
その中間と言いますか
その当時、私より3つ4つ上くらいの
決して おばちゃん…
なんて言ったら途端に
バチが当たりそうなおばさまに
5万円を差し出すと、
こちらをチラリ…その目は…

「お兄さん、良いのかい5万円も1点に…」


ヤメトキナハレ


憐れんだ眼差しで見てくる。

「ふ、姉さんこのレースが終わったらね、またこの窓口で買うからね
僕を覚えておいてね!」

なんてことを想像しながら内心は
「やっぱりやめます!」
なんてことは言えないわけで…
3本でやめとくはずの生ビールが
5本飲んでるせいか 気持ちも若干 大きくなっていたのでしょう。

後悔は先に立ちません
いや そっちよりも
期待の方が 今は大きいのです。
かつてない自分の中では

大きな 勝負っ!!


となっているので何か落ち着きがない

客観的にこのタイミングで自分の行動を見れば
なんと馬鹿なことを…
と 今更ながら 思っておるのです。



正面スタンドに向かい
このレースの主役たちはパドックから馬場へ
1頭ずつ キャンターを進めたり
暑い夏の日なので待機所へ
そのまま向かう 馬たちも何頭かいて
そんな様子を尻目に
私は 掲示板のオッズを凝視していました。

締め切り3分前で8⃣8⃣のオッズを探す。
それを見た途端 私は驚愕した。
7.3倍だったはずののオッズが
現在4.5倍に落ちているのだ。




「ちょっまてよぉ~」


(ちょっと待ってくれ。 俺が5万円入れたからか?
いや5万円ごときでそんなはずはない。)

想定払い戻し金40万が 20万となってしまった。

(ちょっと待ってくれ なんとなく嫌な予感がしてきた)

締め切り 1分前 チャイムが鳴り始め、
どんどんどんどん
オッズが下がっていくのだ
 最終オッズ 3.2 倍

私は心の中で頭を抱えていた
何とも言い難い 地方競馬 独特のオッズ 変動。
締め切りのブザーが鳴った。




スターターが台上で赤い旗を振り
ファンファーレがなる。
アドレナリンがどんどんどんどん たまっていく

8⃣8⃣頼んだぞ!




決戦



「ガシャン!」
全馬一斉にスタートした。
出遅れもなく スムーズに1コーナーに入っていく。
あーもういても立ってもいられない
ビールを飲み過ぎたせいか
喉の出入り口で泡が行ったり来たりしているようだ。


目の前に鏡はないが若干 青ざめていたと思う。
私が買った馬の名前 2頭 なのだが
もはや 名前なんかはどうでもいい!!
とにかく「88」なら何でもいいのだ!
「88」なら オッズが少々低くてもいい
頼むから「 88 」これで決着してくれ
という願いを桃色のヘルメット 2頭
馬ごみで探しているのだ。

ドキドキが止まらない


1頭は逃げて向正面で後続に 5馬身つけている
これはセーフティか?
もう1頭の 8枠は外側からまくるように上がってきている

よし!行ける!



4コーナーを8枠2頭が大差を着けて直線に!

私は吠えた!


「ハチハチぃ〜!」



8-8ならどっちでもいい!


「そのままぁ〜!」


桃色のヘルメット 2頭がゴール板を突き抜けていった。
ドーパミンが

ドーパミンが


ドーパミンがぁ~


脳内を駆け巡り

やがて…




余韻に浸る

幸せホルモン全開!


少し泣いてしまった。

やったよ 父ちゃん 来たよ!
ハチハチ!



ユメノツヅキ

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