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街に花を咲かせるお薬

都市の閉塞感はどこから来るのでしょうか。息がしづらく、酸欠の金魚のように上を向いてしまうこともあります。シンプルに植物が少ないからかもしれません。しかし、それ以上に都市へ参与できないという感覚とうっすらとした絶望感があるように思います。酸素が不足しているからと僕たちが酸素ボンベを持つのではなく、街に酸素を増やしましょう。

アスファルトのひび割れや植栽の隙間は、潔癖な都市にとって患部です。僕たちにとってはチャンスです。「アスファリン」を投与して、都市を「治して」いきましょう。

象企画の一つ目のジョークグッズは、「アスファリン」です。アイデアの着想元やデザインの時に考えたことなどを紹介します。


つくった理由

ゲリラガーデニングをやりたい気持ち

ゲリラガーデニングや花ゲリラと呼ばれる活動があります。街の空き地に無許可で花を植える活動で、ロンドンで盛んに行われているようです。他にも、ベンチに自由に持って帰って良い花束を置いたり、種を混ぜた泥団子を投げ込んだりしているようです。

日本国内では、たまたま訪れた北海道の恵庭市で、住宅の前をガーデニングする文化に触れました。ゲリラというよりかは私有地で行われていて、観光資源にもなっているようです。

また、京都大学の文学部東館中庭では用務員によるゲリラガーデニングや、学生によるサボテンの植え込みが行われています。この中庭は喫煙所にもなっています。ある時、友人とタバコを吸いながら話していると、彼が「京大カレー」を作りたいと言い出しました。京大カレー部(既存の人気サークル)を超える、真の京大カレーを作るために、学内でジャガイモやにんじんを育てたいと彼は語り、僕はいいねと言いました。それ以来、ゲリラガーデニングへの憧れがあります。

けれど、耕すことはもちろん、シードボムと呼ばれる種子を詰めた泥団子を作って持ち歩くことも、少しハードルが高く感じられます。普段からカバンに入れておいて、思い出した時にポロッとゲリラガーデニングできるようにしたいと考えていました。

社会モデルと個人モデル

障害をめぐる議論では障害の「個人モデル」と「社会モデル」という二つのモデルで話されているそうです。前者の「個人モデル」では障害は個人の内部にあるとして、医療などによって「治す」ことが目指されます。後者の「社会モデル」では社会にバリアがあるとしてスロープの設置やルールの変更などの「合理的配慮」で解決することが目指されます。そして、「合理的配慮」は行政や権力によって行われます。なぜ、僕が社会を「治す」ことはできないのでしょう?
都市もまた問題を抱えている個人であると見立ててみませんか。そうすれば、都市もまた「治す」ことができるはずだし、そうであるべきです。無免許の医者として、その前に生活者として都市に関わっていけるはずです。皆さんもブラックジャックになって、勝手に都市を「治して」いきませんか?そういう呼びかけで、遊びです。

企画・デザイン

既存のシードボムは小さめの泥団子状で、汚れてしまいそうだったり崩れてしまいそうだったりで持ち運びが難しそうです。

https://en.wikipedia.org/wiki/Seed_ball

既存のシードボムというアイデアを、より手軽に、ちょっと面白くするために企画を練りました。

都市への投薬

薬用のカプセルはゼラチンでできているため、雨に濡れたら溶けます。カプセルの外に内容物は漏れないためカバンの中も汚れません。カプセルはある程度固いのでなかなか潰れることもありません。
こうした利便性の観点から、薬用カプセルを採用し、シードボムではなくシードメディシンという企画に設計しました。
そうすると、空き地に投げ込むシードボムと異なる、アスファルトのひび割れにそっと投与するシードメディシンというイメージが固まってきて、「アスファリン」という名前、薬というコンセプトに進んでいきました。
シードボムは10錠セットで販売を行います。市販薬というよりは処方薬の方が、勝手に権威を名乗っている感じがして面白いし、使わなければいけない感じもするため、処方箋の薬袋を製作しました。

薬袋のデザイン

名前のところには購入者の街の名前を、使用時は購入者が勝手に決めて丸をつけてもらおうと思います。粉薬のことを散剤と呼ぶそうですが、そこを文字って散布剤に変更、そのほか薬袋のデザインをそのままに製作しました。

何を詰めるか、何を咲かすか

一番悩んだのはカプセルに詰める内容物です。酸性雨の染み込んだ土壌を中和するための籾殻くん炭、保水のための吸水性ポリマー、通気孔と白色のためのパーライトを土壌とすることは早めに決定しました。
問題は、何の種を入れるかです。メッセージ性のある植物がいいか、綺麗な花がいいか、逆に「雑草」がいいか、など悩みました。
最初のロットで詰める種は暫定的にシロツメクサとしています。
シロツメクサは窒素固定を行うためコンクリートの隙間などアスファリンが投与されるであろう厳しい環境でも育ちやすく、踏まれても簡単には死なず横に広がるなど、生存力の高い植物らしいです。
まずは、芽吹いて欲しいし花が咲いてほしいと思い、シロツメクサを選びました。今後変更する可能性はあります。

販売について

みんなが勝手にシードボムを作ってゲリラガーデニングしてくれたらそれでいい、というか嬉しいんですが、そのきっかけになればいいなと思って製作・販売をします。注文があり次第、ちまちまカプセルに土と種を詰め込みます。
例によって原価を公開します。この遊びに乗っかる感じで購入してもらえると嬉しいです。

内容物(概算):10粒3円
カプセル:10粒105.4円
薬袋:1枚16.4円
梱包用外袋:1枚あたり22円
梱包用内袋:1枚あたり2.9円
乾燥剤:1つ15.1円
配送料:一通あたり185円
合計:349.8円

購入はこちらから

コンセプト(蛇足)

蛇足ですが、デザイン前に考えていたコンセプトの文章を貼り付けます。こちらはGoogleドキュメントでコメント可能な形で公開もしているので、意見や感想などをそちらにつけてくれても嬉しいです。

都市への投薬

障害や生きづらさをめぐる議論では障害の「個人モデル」と「社会モデル」という二つのモデルで話されているらしい。前者の「個人モデル」では障害は個人の内部にあるとして、医療などによって「治す」ことが目指される。後者の「社会モデル」では社会にバリアがあるとしてスロープの設置やルールの変更などの「合理的配慮」で解決することが目指される。
上田岳弘「関係のないこと」の中に、都会の中で(そのままの意味で)息がしづらい少女の物語があった。その少女は酸欠の金魚のように、ずっと上を向いて口をぱくぱくしていた。その時、僕たちは、少女に酸素ボンベを渡すべきなのだろうか?それは部分的にはそうだ、そうすべき状況もあるだろうと思う。けれど、都市に酸素を増やしたい、と思った。
街路樹や植栽など、植物さえも綺麗に管理される都市で、もっと息をしやすいように都市という個人への投薬を行いたい。酸素不足の都市への処方箋を与えようと思う。

持つこと

個人が薬を持つ理由はたくさんあるし、理由や使用頻度によってその薬への呼び方も変わる。この「シードボム:アスファリン」は常備薬として持ってもらうことになるんだろうなと思う。アスファリンは都市への善意ではない。それは個人への向精神薬や抗生剤と同様、少なくとも対症療法的なものだし、ある種の毒性を内蔵している。アスファリンは都市への明確な拒否の意思が詰め込められている。このアスファリンを持つだけで、都市への介入という暴力性を持ち運び、都市の健康状態を診察する無資格医としての眼差しを持つことになるだろう。

使うこと

アスファリンを持ち歩くことでアスファルトのひび割れ、整理されすぎた植栽、階段の目地。そう言った都市のひび割れるような頭痛に対して、アスファリンを投与してみたくなるだろう。そうしたひび割れた患部にアスファリンを飲み込ませれば、都市が「治る」かもしれない。少なくとも、アスファリンを投与する時に、都市とあなたは今までになかった接触がある。
実際に種子から芽を出させるためには日当たりや水はけなどが重要になるんだろうけど、そこについては医者にもスタイルがあるようにそれぞれのスタイルに任せる。

予後について

アスファリンを飲み込ませた後、そこから芽が出るかどうかはなんとも言えない。もし、数週間後に同じところを訪れて、緑が顔を出していたら、それはコンクリートの支配に対する細やかで確実な勝利である。生えなかったとしても、また撒いてみよう。治療には根気強さが必要かもしれない。

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