きっと恋だった
梶井基次郎 檸檬
高校生の時に出会った物語。
最初に読んだ時から
何か正体不明のモヤモヤした感情が
心をとらえて飲み込めない。
この違和感を無視してはいけない気もする。
意味がわからないものに心を捉えられたという
感覚が非常に気持ち悪かった。
今の私達には到底理解できない。
こんな話が教科書に載るんだ。
気持ちの整理がしたくて、
随分久しぶりに学校での勉強について
親に話をした。
へぇ。と言ったきり特に何も言わなかった母親に
少しがっかりした。
なぜ私のこの動揺とも感動とも取れる気持ちが
理解できないのだろうと。
その後、偶然にも京都の大学に進学した。
下宿先に引越す時は、
梶井基次郎のことも檸檬のことも勿論覚えていて
行きの電車でも妙な高揚感に包まれていた。
だけどあっという間に、
新しい学びと友人との生活に染められて
煌めくキャンパスライフを愉しんでいた。
再び檸檬に出会ったのは、就職活動のとき。
近くの会社で面接があって、
随分と早くついたので
新京極や河原町をぶらついていた。
当時はまだ閉店前の河原町の店舗だった。
これ、もしかしてあの檸檬の丸善か…
気がついた時には脈がかなり速くなっていた。
梶井基次郎の檸檬。
あの時の丸善にいるよ!と
親に写真付きのメールまでした。
勇気が要ったが意を決して中に入った。
何をみたらいいのだろう。
ぶらぶらと歩いて、
自然と就職活動の本の棚に足が赴いた。
急に日常に引き戻され
と同時に大学生活の終わりも意識して
息が苦しくなり足取りも重くなった。
さっきまでの興奮はなかったかのようだ。
なんだ普通の本屋じゃないか。
就活中の不安定な精神状態で
棘を持った言葉を浮かべながら
がっかりした思いだった。
そろそろ出るか、そう思ったその時思いついた。
檸檬を買って帰るか。
檸檬に辿り着き手に取った。
まるで爆弾を持ったような錯覚。
それでいて憧れの人に出会ったような感覚にも似ている。
興奮しながら早速読んだ。
高校時代のあの時よりもずっとわかる気がした。
気持ち悪さもなかった。
就職活動での悩みや鬱憤も
檸檬と一緒に爆発させたように思えた。
すっきりとした気持ちで面接に挑んだ。
最近読んだ本について教えて下さい
あまりにもなタイミングの質問で笑ってしまった。
無礼を詫びながら、
つい先ほど回収してきた爆弾を取り出し話をした。
大好きだけど理解ができない想い人に
少しだけ近づけたその時のことを。
