【日めくり短編 18】香と、ガーベラと、まだ生まれない発明
私は発明家である。 ――と、こう書き出してはみたものの、正直に申し上げれば、私はいまだ何ひとつとして発明しておらぬ。
ただ、何かしら発明できそうな気がしている、それだけのことである。
気がしているだけで生きていけるのだから、人間というのはまことに都合のよい生き物だ。
そもそも私は、手先が器用ではない。中学の技術の時間、のこぎりを握った最初の十分ばかりは、それはもう丁寧に、木目に沿って慎重に刃を入れていく。ところが少しでも線が逸れ、思うところから外れはじめると、私の中の何かが音を立ててぷつりと切れる。そこから先は、もう雑。徹底的に雑。木片は歪み、釘は曲がり、先生は溜息をつく。まともな作品が生まれるわけがなかったのである。
しかし、時代は変わった。いまや、私のかたわらにはAIがいる。え~相棒である。
書棚から引っぱり出した本を幾冊か拝読したのち、私はClaudeに向かってこう言い放ったのである。
「ヘイ、クロード。カレンダーアプリを作って!」
するとどうだろう。いくつかの質問に答えるうちに、画面の中に、ちゃんとカレンダーらしきものが現れた。
日付が並び、予定が書き込め、色までついている。
「ヘイ、クロード。今までの苦労、どこ行った!」
我ながら、なかなか乙な突っ込みである。
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