ズルい坊主
今でも後悔している惨めな思い出の話
30年以上前の出来事なのに、今でもふとした瞬間に思い出すと、胸がギュッとなる思い出があります。そのときの気持ちのザラついた不快な感触は、今でもはっきりと覚えています。
思い出したくないけれど、思い出さずにはいられない昔の記憶。今回はそのことについてを書こうと思います。
私は小学校のころ、少年野球のチームに入っていました。豊小学校の児童で構成された「豊ジャイアンツ」というチームです。ダサい名前です。ユニフォームもダサかったです。
私は、運動神経も中の下か下の上くらい。今の私しか知らない人からしたら意外に思われるかもしれませんが、背も低く、身長順で整列するとクラスで前から2、3番目あたりでした。当然、力もなく、チームの端っこにいる選手でした。そんな様子なので私は自分のプレーに全く自信がなく、それ故にプレッシャーにとことん弱かったです。打席に立つたびに、守備につくたびに、プレッシャーを感じて緊張していました。
それでも4年生から3年間続けて、練習だけはできるだけ休まず参加し、6年生になるころにはレギュラーになることができました(まあこれは、そもそもの人数が少なかったせいもありましたが)。ボジションは、セカンドを守っていました。
そんな感じなので、チーム自体はお世辞にも強いと言えるチームではありませんでした。練習試合や公式戦でも勝てることの方が少なかったです。
ある日の公式戦の話
とある公式戦の一回戦。近くの強豪と当たってしまいました。
私たちは1つの小学校で1チームでしたが、そこはたしか3つくらいの小学校合同のチームでした。人数が多い分、選手層が厚く、近隣では圧倒的な強さで、私たちはいつもコールド負けくらいの試合を繰り返していました。
試合が決まったとき、チーム全員が「嫌だな」と思っていたと思います。私もそう思っていました。
そして試合当日。期待した雨も降らずに空は快晴。憂鬱な気分で起きました。そんな気分をひきづったままユニフォームに着替えて、集合場所へ。
集合場所に着くと私は一緒についてきた親に、プレッシャーやらなんやらで本当に嫌すぎて「お腹が痛い」と言いました。
仮病です。
私の腹痛は監督にも伝わり、その日のスタメンから私は外れました。代わりには1つ下の後輩が出ることになり、私はベンチでスコアラーをすることになりました。罪悪感と安心が入り混じったなんとも嫌な気持ちでした。
意外な展開になった試合
試合が始まりました。
いつものようにボコボコの展開かと思いきや、1点差、2点差で進んで、意外にも接戦の中、試合は進んでいきました。いつもはコールド負けするようなチームと接戦の緊張感ある試合に、こちら側のベンチは保護者も含めて大盛り上がり。スコアラーの私を除いて。
あわや勝利かという手に汗握る展開でしたが、残念ながら、最終的に5対4で負けました。1点差です。今でも、その点差を覚えています。
試合後、監督が言いました。「いつもはコールドで負けるようなチームと、今日は1点差だった。お前らよく頑張ったぞ」と。
そして全体への話が終わったあと、監督が私の方へ来て言いました。
「お前が出てたら、勝てたかもしれないな」
励ましのつもりだったと思います。でも私は、その言葉を聞いたとき消えてなくなりたくなりました。
仮病でズルをした自分が、心の底から恥ずかしかった。みんなが戦っているときに、ベンチでスコアをつけながら座っていた自分が、心底情けなかった。
公式戦で勝った日や、いい試合をした日は、みんなでラーメンを食べに行くのが恒例でした。監督や保護者、子どもたちで盛り上がり、にぎやかに帰るのです。その日も、そういう流れになりました。
私はすぐにでも家に帰りたかったけれど、そうもいかずに行くことになりました。食事中は今日の試合の話題で持ちきりです。その話題にも乗り切れず、当然に食欲もなく。自分はここに居てはいけない存在だという思いが頭から離れず、話を合わせるのに精一杯でした。
いまだに思い出すあの日の気持ち
あれから30年以上が経ちました。
私は今でも時々ズルをしたくなる瞬間があります。相変わらずズルいやつなんです。今でもそういう気持ちは消えていません。楽をしたい、逃げたいという気持ちは、今でも時々、いや結構頻繁に出てきます。
でも、そういうときに、あの日のことを思い出します。
ベンチから見ていた仲間たちの背中を。接戦゙の試合のスコアを。そして、監督の言葉を。
思い出すたびに本当に嫌な気持ちになりますが、それ故に、ズルいことを考えた私を一歩手前で、踏みとどまらせてくれます。小学6年生のあの頃の横山少年が、今も私の中にいて、ズルをしようとするたびに引き止めてくれるのです。
多分、一生この嫌な記憶と気持ちを引きずりながら生きるのだと思います。
自分への戒めのためにも、「ズルい坊主」にならないためにも、改めてこの記憶をここに書き残しておきます。
