曼珠沙華は恋をする【毎週ショートショートnote】
曼珠沙華は恋をする
【毎週ショートショートnote】
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「ねぇ、幸せの手って書く幸手市の駅前に、サッテリヤってあるの知ってる?」
彼女は自分の手をひらひらさせながら、そう言って笑った。
僕はなんだか照れくさくて、
「いやぁ、知らないな」
なんて、ごまかすように頭をかいた。
おっさんと呼ばれるような年になった今なら分かる。
「じゃあ、今度、一緒に行ってみよう?」
そう言うのが正解だったんだ。
でも、ガツガツしてきもい、と思われるのが怖かった。
手を繋いで「やだ、インフルエンザうつるんじゃない!」なんて笑われるのが怖かった。
だから僕は、バカみたいに頭をかいて、はぐらかしてしまった。
――だけど、もうそれきりで、チャンスは来なかった。
ひとりで歩く境内は、満開の曼珠沙華で真っ赤に染まっている。昨夜、夢で見た彼女の結婚披露宴のドレスのように。
幸手権現堂の美しい秋の景色が、こみあげる涙でぼやけた。
彼女はあの世で、誰かいい人を見つけただろうか……僕はまだ、あの日のまま足を止めている。
だけど、夢の中の彼女は、あの日と変わらない笑顔だった。
その笑顔が、僕をここまで連れてきたのだ。
駅前のサッテリヤはもうなかったが、彼女を思い出すには充分だった。
赤いドレスの彼女のように、曼珠沙華は恋をする。
そして僕はまだ――恋をしている。
#毎週ショートショートnote
#曼殊沙華は恋をする
#幸手権現堂秋祭り
★最後までお読み頂きありがとうございます★
曼珠沙華はお彼岸に咲く→亡くなった愛しい人を思い出す......そんな気持ちで書いてみました。
とても魅力的な赤ですよね。
※企画チャレンジです。
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