はじめに
GMOコネクトの北浦です。
少人数のチームでタスク管理ツールを選ぼうとすると、だいたい行き詰まります。有料プランは機能が過剰で、数人のために払う額ではない。かといって、欲しい機能が全部そろった手頃なものも見つからない。
そうなるとツールを分けることになります。進捗はこっち、見積の管理は表計算ソフト、依頼元とのやりとりの記録はまた別の場所。手間が増えるうえに全体の見通しが悪くなります。使い勝手が悪くなれば更新が滞り、滞った台帳は誰も見なくなります。そこで終わりです😇
そこで発想を変えました。データの原本さえAIに管理させておけば、表示はいくらでも化けさせられます。期限順の一覧が欲しければそう言えばいいし、週次レポートが欲しければそう言えばいい。ツールを選ぶのをやめて、原本の持ち方だけを決める、という考え方です。
使っているのは Claude Desktop の Cowork ですが、ファイルを直接読み書きできて定時実行の仕組みがあれば、考え方はそのまま流用できます。なお本文中の件数はすべて動作イメージを示すためのサンプルです。
先にまとめ
回っているのはこの4つだけです。
[自然言語で伝える] --> [AIがカードに登録]
|
v
[平日朝 9:30 に未完了を自動提示] --> [番号で進捗を伝える]
| |
v v
[週次でまとめて棚卸し] [原本を更新 → ビューを再生成]
- 入力形式も出力形式も決めない。台帳は自然言語のまま
- 原本は1つに限定し、期限別ビューや一覧はすべて原本から作り直す
- 更新の起点を人ではなくAI側に置く。朝、未完了だけを突きつけてもらう
| 観点 | 以前 | 現在 |
|---|---|---|
| 情報の置き場所 | 用途ごとにツールが分散 | 原本1つに集約 |
| タスクの伝え方 | ツールのフォームに入力 | 話し言葉で伝えるだけ |
| 見たい形式 | ツールが用意した画面に合わせる | 欲しい形を言えば出てくる |
| 期限の基準 | 形式上の締切 | 実質的な制約 |
| 取りこぼしの検出 | 自分の記憶頼み | AIが原本と照合して指摘 |
実際のやりとり
発生時は話し言葉で投げるだけ
自分: 帳票の記載内容がおかしいって連絡きた。再現条件の調査から。今週金曜まで
AI : 登録しました。
#24 帳票記載内容の不具合調査 / 保守 / 依頼元: 発注元 / 期限 2026-08-21 / 未着手
関連して #18(同システムの表示不具合)が「調査中」のまま動いていません。
同じ画面まわりですが、まとめて確認しますか?
フォームは開きません。フェーズや作業種別はAIが会話から埋め、埋まらなかったものは後で聞かれます。関連タスクの指摘は思ったより効きました。別件だと思っていたものが同じ画面に紐づいていた、というのは棚卸しでしか気づけません。
以降は番号で進捗を伝える
AI(平日9:30・自動実行):
未完了 12件
【期限超過】3件
#12 マスタ移行の影響調査(超過 6日 / 調査中)
#15 保守問い合わせの一次回答(超過 3日 / 回答待ち)
#09 月次アクセスログの集計送付(超過 1日 / 未着手)
【本日期限】1件
#24 帳票記載内容の不具合調査
【今週中】2件
【期限なし】6件
自分: 24番完了。工数1.5h。あと12番は先方待ちに変えといて
AI : #24 を完了にしてアーカイブしました(工数 1.5h)。
#12 を「回答待ち」に変更しました。期限は据え置きでよいですか?
未完了は 12件 → 11件 になりました。
タスク名を言い直す必要はありません。番号だけで通ります。
完了を伝えると、取りこぼしを指摘してくる
自分: 先週のリリース分、ぜんぶ終わったよ
AI : リリース関連の3件をクローズしました(#19 #20 #22)。
ただし #21「納品書・検収書の作成送付」が未完了のままです。
リリース完了時はこの2件をセットで処理する運用として記録されています。
こちらも完了扱いにしますか?
「全部終わった」と言った側は、たいてい全部終わっていません。把握している「全部」は直近で触ったものに限られるからです。原本を持っているのはAI側なので、この照合はAIにやらせたほうが正確です。
宙に浮いていた情報を拾えるようになった
自然言語で書く利点として一番大きかったのが、これです。
タスク管理ツールの期限欄はたいてい1つしかありません。ところが実際の仕事はそれでは表せません。契約更新なら、こちらが契約書を送付する期限と、先方から受領する期限は別物です。以前は送付期限だけを入力して、受領期限は頭の中に置いたままでした。書く場所がないからです。
書けなかった情報は、そのうち忘れます。そして送付した時点でタスクを完了にしてしまい、受領できていないことに気づくのは期限を過ぎたあとになります。
自然言語ならそのまま書けます。今月末までに契約書を送付し、翌月10日までに受領する、と一文で書いておけばいい。そのうえで、AIがこう返してきます。
AI: この依頼には期限が2つ含まれています。分割して管理しますか?
#31 契約書の送付(期限 2026-08-31)
#32 契約書の受領確認(期限 2026-09-10 / #31 に依存)
まとめて書いておけば、管理単位への切り分けはAIがやります。入力の時点で構造を決めなくていい、というのが効いています。
同じことが再現条件、依頼元の言い回し、前回対応時の判断根拠にも当てはまります。入力欄がないという理由だけで捨てていた情報が、そのまま残せるようになりました。
原本は1つ。ビューは毎回作り直す
この運用でいちばん効いているのがここです。
期限別に並べた一覧、フェーズ別の集計、週次レポート。見やすいので作りたくなりますが、原本とは別に手で保守した瞬間に破綻します。同じ情報を2か所に持つと必ず乖離しますし、更新したら両方直すと決めても守られません。守られない前提で、構造のほうで防ぐ必要があります。
- タスクカードを唯一の正とする
- 一覧、期限別ビュー、レポートはすべて原本からの再生成物として扱う
- ステータス更新、期限変更、アーカイブの各操作から再生成を自動で呼ぶ
- 不整合を検査する仕組みを用意し、不一致なら異常終了させる
- ビューには手動編集禁止を明記し、再生成で消える注記は原本側の任意フィールドへ退避させる
集計やレポートを作るときは、冒頭で必ず整合チェックを走らせています。警告どまりにしなかったのは、警告が読み飛ばされるからです。異常終了させておけば、直さないと次に進めません。
あわせて、実行日はシステム日付から取得させています。ファイル内に書かれた日付を読ませると、過去に生成されたビューのヘッダを実行日として採用し、超過日数の計算が丸ごとずれます。
毎朝、未完了だけを突きつけてもらう
平日の朝9:30に自動実行し、未完了タスクを期限順で提示させています。出力区分は本日着手予定、期限超過、今週中、期限なしの4つに固定しました。日によって形式が変わると読むほうに負荷がかかり、結局読まなくなります。
自動実行にさせるのは読み取りと整形出力だけで、書き込みはさせません。無人実行中の書き込みは、間違っていても誰も気づけないからです。更新は人が朝の一覧を見てから対話でまとめて指示する。この分担が定着しました。
表示は原本の登録番号を先頭に置いています。最初は一覧に通し番号を振っていましたが、並び順が日によって変わるので識別子として使えませんでした。登録番号にしてから、番号だけでタスクを指せるようになっています。
期限の入れ方も変えました。見積を送付した案件に見積送付期限を設定していても、送付した時点でその期限は意味を失います。効いている制約は契約満了日のほうです。形式上の締切ではなく実質的な制約を入れると、一覧の並び順が実態と合います。
週次でまとめて棚卸しする
日次では拾えないものがあります。月内に発注書取得が必要という注記と、設定されている期限(翌月初)が矛盾しているようなケースです。日次チェックは期限日しか見ないので素通りします。
週次では新規登録数、完了数と工数、進行中の件数、期限超過の件数を集計させ、あわせて暗黙知と自動化候補を抽出させています。候補を出させるときは判定基準を渡しておきます。同じ判断ルールが1週間で3つのタスクに重複して記録されていたら、共通ナレッジとして独立文書化すべきサインだ、というものです。基準がないとAIは思いつきで候補を並べますが、渡すと優先度が付いた形で返ってきます。
記録が溜まると、それ自体が分析対象になります。長期間動いていない積み残し、特定期間への期限集中、依頼元の偏り、外部待ちの発生状況といったあたりが読めるようになります。依頼元が1社に6割ほど集中している、といった偏りは感覚では出てこない数字でした。
ただし厳密な計測値ではありません。期限分布とフェーズ別比率から読み取っているだけで、今の段階では傾向の把握までです。省力化のために記録を集めていたら副産物として測れるものが増えてきた、という順序なので、続けながら精度を上げていくつもりです。
出力形式と精度について
一覧性が欲しくなったらHTMLのダッシュボードを作らせています。開くたびにデータソースから再取得させれば内容は最新になります。作らせる前に、接続済みのデータソースを実際に叩いて応答を確認させておくと手戻りが減ります。実データが揃わないパネルは、サンプルであることを画面上に明示しておきます。
とはいえ形式は好みでよいと思っています。表でも十分ですし、必要なときだけ出力させる形でも構いません。守るべきなのは原本が1つに保たれていることのほうです。
精度については、事実誤認が混ざることを前提にしています。数字を出す成果物には別のエージェントによる検証工程を挟み、数えられる指標と分布から推定するにとどまる指標は分けて扱わせています。完了率のような集計値と「コンテキストスイッチが多い」という読み取りでは確度がまったく違うので、同じレポートに並べるときは区別できる書き方をさせています。
まとめ
- ツール選びをやめ、原本の持ち方だけを決めた。入力形式にも出力形式にも縛られなくなる
- 入力欄がないせいで捨てていた情報を書けるようになり、管理単位への分割はAIが提案してくれる
- 原本は1つに限定し、ビューはすべて再生成物として扱う。不整合は異常終了で止める
- 平日朝に未完了だけを自動提示させ、更新は対話でまとめて指示する。自動実行に書き込みはさせない
- 登録番号を先頭に出しておくと、以降のやりとりが番号だけで済む
管理のための作業を減らしたかっただけなのですが、続けているうちに測れるものが増えてきたのは想定外の収穫でした。
最後に、GMOコネクトではサービス開発支援や技術支援をはじめ、幅広い支援を行っておりますので、何かありましたらお気軽にお問合せください。