目次
- きっかけ:なぜ「議事録」に異常なコストがかかるのか
- 技術スタック:Noumi 官网という AI エージェントの構造
- 実際にやってみた:録音から議事録確定までの流れ
- 注意点:議事録は個人情報・機密情報の塊でもある
- まとめ:議事録は「作業」ではなく「資産」にできる
きっかけ:なぜ「議事録」に異常なコストがかかるのか
多くの職場の会議には、共通する特徴があります。「決定事項だけ簡単に共有すればいい」ではなく、発言者・発言内容・検討の経緯までを詳細に記録し、関係者全員に確認を取り、フォルダに保存して残しておく。いわゆる「議事録文化」です。
新人が最初に任される仕事が議事録係であることも多く、会議の内容を追いながらリアルタイムでメモを取り、会議後にフォーマットを整えて清書し、上長の確認を経てから配布する。この一連の作業自体が、会議時間と同じかそれ以上の時間を消費することも珍しくありません。
この「決定事項の正確な記録・確認・保存」という要求自体は、関係者間の合意形成プロセスと相性が良く、簡単には無くならないでしょう。だとすれば、無くすのではなく「作業時間を圧縮する」方向で考えるのが現実的です。今回は、Noumiという AI エージェントを使って、この議事録作成〜確定のプロセスをどこまで圧縮できるか試してみました。
技術スタック:Noumiという AI エージェントの構造
Noumiは、対話しながら文書やタスクを進めていくAIエージェントです。議事録作成に関わる部分だけ整理すると、以下の要素が関係します。
| 機能 | 説明 |
|---|---|
| L1(全局工具層) | 音声の文字起こし・会議録の生成など、基礎的な実行能力。ユーザーが直接意識する必要はなく、必要なときに自動で呼ばれる |
| Topic(工作線索) | 1回の会議・1つの議題に対応する作業単位。チャット履歴とAIが生成したファイルがひとつのTopicにまとまって保存される |
| Chat(会話界面) | 対話でAIに指示を出す画面。AIが生成したファイルはチャット画面の右側にリアルタイムで反映される |
| 駕駛モード | 半自動モード(機密性の高い操作の前に必ず人間の承認を挟む)と全自動モード(作業を進めながら最後にまとめて報告する)を切り替えられる |
| L3(項目級方法論・Agent訓練場) | 自分たちの組織固有のルール・フォーマット・言葉遣いを、AIに学習させて蓄積できる場所 |
議事録作成において重要なのは「文字起こし」の精度だけではありません。「自社のフォーマットに沿っているか」「決定事項と検討過程を区別しているか」といった、会社ごとに異なる細かいルールに対応できるかどうかが実務上のボトルネックになります。ここでL3(Agent訓練場)の役割が大きくなります。
実際にやってみた:録音から議事録確定までの流れ
① 会議のTopicを作り、録音データを渡す
会議ひとつにつき1つのTopicを作成し、録音データをアップロードした上で、チャットに指示を出します。
この会議の録音から議事録を作成してください。
フォーマットは前回アップロードした「議事録テンプレート.docx」に従ってください。
決定事項・宿題事項(ToDo)・検討したが見送った案、の3つは必ず分けて記載してください。
② AIが文字起こし→要約→フォーマット適用まで自動で実行
L1の音声認識・文字起こし機能が発言内容をテキスト化し、それを元に議事録のドラフトが生成されます。生成されたファイルはチャット画面の右側にリアルタイムで表示され、待っている間に別の作業に移ることもできます。
③ 差し戻しは会話で行う
議事録でよくある「言い回しの修正」「敬語の統一」「発言者の呼称ルール」なども、そのまま会話で指示できます。
発言者の呼称は全部「役職+さん」で統一してください(例:田中部長 → 田中部長)。
「〜と思われます」のような曖昧な表現は「〜と結論づけました/〜は持ち越しとしました」に置き換えてください。
ここで一つ実務上の注意があります。修正指示を出すたびに一からやり直しになるわけではなく、Topic内の会話履歴を踏まえた差分修正になります。ただし、指示があいまいだと意図しない箇所まで書き換わることがあるので、修正対象を具体的に指定するほうが安全です。
④ 確定したルールをL3に固定化する
呼称ルール・表現の言い換えルール・フォーマットなど、「毎回同じ指示を繰り返している」と気づいた時点で、それをAgent訓練場に渡して、そのプロジェクト専用のルールとして定着させます。次回以降は、同じ指示を繰り返す必要がなくなります。
⑤ 機密度に応じて駕駛モードを切り替える
人事評価や取引先の価格交渉のような機密性の高い会議では、半自動モードに切り替え、AIが生成した内容を配布する前に必ず人間が目視確認するステップを挟みます。社内の定例会議のように機密性が低いものは、全自動モードでまとめて処理し、最後に結果だけ確認する運用にしています。
⚠️ 注意点:議事録は個人情報・機密情報の塊でもある
議事録には、発言者名・評価に関わる発言・取引先の社名や条件など、個人情報や機密情報が含まれることがほとんどです。AIエージェントに録音データを渡す前に、少なくとも次の点は確認しておくべきです。
- 会議の参加者に、録音・AIによる文字起こしを行うことを事前に伝えているか
- 録音データや生成された議事録を、会社の情報管理ポリシー(データの保存場所・アクセス権限)に沿って扱っているか
- 個人を特定できる情報を含む議事録を、そのまま社外や無関係な第三者と共有していないか
AIに任せる部分が増えるほど、「どこまでを渡していいか」の判断は逆に人間側の責任になります。効率化と情報管理は別の軸で考える必要があります。
📝 まとめ:議事録は「作業」ではなく「資産」にできる
今回やってみたことを整理すると、次のようになります。
- 会議の録音をTopicに渡すと、L1の文字起こし機能を使って議事録のドラフトが自動生成される
- 呼称ルールや表現の言い換えなど、議事録に特有の細かい要求は会話で修正でき、繰り返し出てくるルールはL3(Agent訓練場)に固定化できる
- 機密性の高い会議は半自動モード、低い会議は全自動モードと使い分けることで、確認コストを調整できる
- 議事録に含まれる個人情報・機密情報の取り扱いは、AI活用の有無に関わらず人間側が判断すべき領域として残る
「議事録を書く」という毎回発生する作業を、AIに渡しつつも自社のルールを蓄積していく仕組みに変えることで、単なる時短だけでなく、組織の暗黙知(自社特有の議事録の書き方)を明文化する副次効果もありました。会議のあり方そのものを変えるのは難しくても、そこにかかる作業コストを圧縮する余地はまだ大きいと感じています。




