はじめに
NVIDIA Jetson AGX Thor開発者キットの初期セットアップ手順として、JetPack 7.2のインストール方法を紹介する。詳細な手順については、以下の公式ドキュメントを参照してほしい。
動作確認環境
- NVIDIA Jetson AGX Thor開発者キット
- ホストPC
-
Windows 11 Pro (x86_64)
ホストPCは、後述のISOファイルの作成に用いる。
-
方法
Jetson AGX Thor開発者キットへのインストール方法はいくつかあるが、ここではJetPack 7から導入されたISOイメージファイルを用いたインストール方法を紹介する。また、Jetsonにはモニタとキーボードをつないで作業することとする。
本手順のISOインストールではJetson Linux 39.2(BSP:OSおよび基本ドライバ群)を導入する。CUDA ToolkitやcuDNN、TensorRTなどのJetPack SDKコンポーネント一式が必要な場合は、OS起動後に別途 nvidia-jetpack パッケージをインストールする。
ホストPCでの作業
ISOイメージファイルのダウンロード
JetPack 7.2のサイトの「Download JetPack ISO Image」からISOイメージファイルをダウンロードする。もしくは、こちらから直接ダウンロードできる。
ISOイメージをUSBメモリに書き込み
ISOイメージファイルの書き込みソフトをインストール
ISOイメージファイルの書き込みソフトとして、balenaEtcherを以下のサイトから適切なインストーラをダウンロードしてインストールする。
ISOをUSBメモリに書き込み
ダウンロードしたISOイメージファイルをbalenaEtcherを用いてUSBメモリに書き込む。USBメモリの推奨要件は以下となっている。
- 16GB以上
- USB 3.0以上
USB 3.0以上に対応したUSBメモリを推奨する。また、筆者はmicroSDカードをUSBカードリーダー経由で接続したものを利用したがインストールまで完了できた。
書き込み手順の詳細は以下のリンクを参照。
Jetson上の作業
Jetson上での作業の詳細については以下の公式ドキュメントを参照。
ここでは、上記の公式ドキュメントをもとに、簡略化した手順を紹介する。
作成したUSBメモリをJetsonのUSBに挿して、Jetsonを起動する。
UEFIのファームウェア更新
起動すると、UEFIのファームアップデート画面が出ることがあるので、以下のメッセージが出たら、必ずYキーを押すこと。30秒間の猶予があるので、30秒経過する前にYキーを押す。
Do you want to update the firmware?
Press [Y] to proceed. [N] to skip.
Auto-skipping in 30 seconds...
Yキーを押さないまま、30秒経過するとそのまま次の項目に進むが途中でインストールに失敗するので、電源ボタンを長押しして強制再起動して必ずYキーを押してUEFIのファームウェアの更新を行う。
JetPack 7.2のインストール
ファームウェアの更新が完了すると、以下の画面となるので、「Install Jetson ISO r39.2.0」を選択する。
NVMe SSDにインストールする場合は、以下の画面で「Install on NVMe」を選択する。
選択後にインストールが始まる。画面上に何も表示されない場合があるが、正常に進んでいれば10分程度でインストールが完了し、自動でJetsonが再起動する。
USBメモリを挿したまま再起動すると、再度USBメモリからインストールが始まってしまうので、再起動時にUSBメモリは抜いておくこと。
UbuntuのWelcome画面が表示される。
手順に従いUbuntuのセットアップを行いUbuntuが起動すれば完了。
インストール後、GPUが認識されていることを確認する。
nvidia-smi
Tue Aug 11 06:58:28 2026
+-----------------------------------------------------------------------------------------+
| NVIDIA-SMI 595.78 Driver Version: 595.78 CUDA Version: 13.2 |
+-----------------------------------------+------------------------+----------------------+
| GPU Name Persistence-M | Bus-Id Disp.A | Volatile Uncorr. ECC |
| Fan Temp Perf Pwr:Usage/Cap | Memory-Usage | GPU-Util Compute M. |
| | | MIG M. |
|=========================================+========================+======================|
| 0 NVIDIA Thor On | 00000000:01:00.0 Off | N/A |
| N/A 44C N/A 5W / N/A | Not Supported | 0% Default |
| | | Disabled |
+-----------------------------------------+------------------------+----------------------+
+-----------------------------------------------------------------------------------------+
| Processes: |
| GPU GI CI PID Type Process name GPU Memory |
| ID ID Usage |
|=========================================================================================|
| 0 N/A N/A 4003 G /usr/lib/xorg/Xorg 110MiB |
| 0 N/A N/A 4266 G /usr/bin/gnome-shell 49MiB |
+-----------------------------------------------------------------------------------------+
【オプション】追加の設定
日本語設定
アプリ一覧から「Language Support」を選択する。
以下の画面が出てくるので、「Install」ボタンを押す。
インストールが完了したら、「Install/Remove Languages...」ボタンを押して、「Japanese」にチェックを入れて、「Apply」ボタンを押す。
「Regional Formats」で、「日本語」を選択して、「Apply System-Wide」をクリックする。
次に日本語キーボードの設定を行う。
「Settings」-「Keyboard」-「Input Source」から「Japanese」を選択して、「Add」ボタンを押す。
一通り完了したら、再起動する。
再起動後に以下の画面が出てくるので、自身が使う方を選択する(フォルダは英語名を推奨)。
デスクトップ画面の右上のアイコンが以下のようになっていれば日本語環境の構築は完了。
Jetson Stats
Jetson Statsは、Jetsonをモニタリングするための便利なOSSのツールである。公式ドキュメントを参照してインストールする。
依存関係のインストール
sudo apt update
sudo apt install python3-pip python3-setuptools -y
Jetson Statsのインストール
sudo -v
curl -LsSf https://raw.githubusercontent.com/rbonghi/jetson_stats/master/scripts/install_jtop_torun_without_sudo.sh | bash
インストール完了後に、再起動する。以下のコマンドでJetson Statsを起動して確認する。
sudo jtop
以下のような画面が表示される。
JetPack SDKコンポーネントのインストール
CUDA Toolkit、cuDNN、TensorRTなどのJetPack SDKコンポーネント一式が必要な場合は、以下のコマンドでインストールする。
sudo apt update
sudo apt install nvidia-jetpack
なお、nvidia-jetpackのインストールには15GB以上のストレージを使用する。
トラブルシューティング
「Install on NVMe」を選択後に、画面が真っ暗で進捗がわからない
JetsonとホストPCをつないで、コンソール出力を確認すると、エラーの原因を特定しやすい。詳細は下記の公式ドキュメントを参照。
下記の8番がデバッグ用USB-Cポートとなっている。通常はマグネット式のふたで隠れているので上方向に引っ張ってふたを外す。
WindowsのデバイスマネージャーからCOMポートを確認する。
Tera Termなどで、上記のCOMポートに接続する。環境によっては複数のCOMポートが認識されるため、一つずつ試す必要がある。上記の場合は、COM5~8がJetsonのCOMであり、COM7にしたところ、コンソールに出力された。
COMの接続設定は以下の通り。
| 項目 | 設定値 |
|---|---|
| スピード | 115200 |
| データ | 8bit |
| パリティ | none |
| ストップビット | 1bit |
| フロー制御 | NONE |
| RTS | Enable |
| DTR | Enable |
Jetsonの起動中にCOM接続して、コンソール表示がおかしい場合は、COM接続をしたままJetsonを再起動する。
UEFIアップデート後に再起動を繰り返す、またはUSBインストーラが正常に起動しない
JetPack 7.0など以前のバージョンをインストールしたことがある環境からJetPack 7.2をインストールする場合や、JetPack 7.2のISO起動時にOOBEの起動で停止する場合は、UEFIの設定変更が必要になることがある。
UEFIの設定は、起動直後に「ESC」キーを押すと設定画面に移動できる。
UEFIの設定画面から以下の2つの項目を設定する。
- Device Manager
- NVIDIA Configuration
- Boot Configuration
- SOC Display Hand-Off Mode = Auto
- SOC Display Hand-Off Method = simplefb
- Boot Configuration
- NVIDIA Configuration
手順の詳細は以下の公式ドキュメントを参照。
「Install on NVMe」を選択後に、「SQUASHFS error: Unable to read ...」となる
USBメモリの接続が原因の可能性がある。ハブ経由などで接続している場合は、直接USBに接続する。また、USB Type-A/Type-C変換アダプタなどを利用している場合も利用せずに直接USBポートに挿す。筆者は、USB Type-Aポート(図の①)に直接挿して上手くいった。
まとめ
NVIDIA Jetson AGX Thor開発者キットの初期セットアップ手順として、JetPack 7.2のインストール方法を紹介した。
JetPack 7ではISOイメージを用いたインストールに対応したことで、従来よりもセットアップが容易になった。一方で、UEFIファームウェアの更新やUSBメモリの取り扱いなど、いくつか注意点もあるため、本記事を参考にセットアップを進めてほしい。
参考














