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【AWS Lore #SAA-17】深層の主様(The Lord of the Deep)

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Last updated at Posted at 2026-04-10

--第16話はこちらから

深層の揺らぎ

記録庫の奥から響く振動は、
まるで大地そのものが低く重く唸っているようだった。

私の中の光粒がざわめき、
空気が震え、世界の輪郭がゆっくりと静かに歪んでいく。

胸の奥の光粒が、
熱を帯びたように強く明滅する。

(……返して……
 ……かえ……し……て……)

声が、もう“声”として聞こえる。
囁きでも、幻聴でもなく、声としてはっきり届く。
確かに、そこに“誰か”がいる。

「ニカさん……!」

ルミエラの声が震える。
ネリアお姉様が手を伸ばす。
けれど──

足元がふっと消えた。

重力がほどけ、
身体が宙に浮くような感覚。

私の視界が揺れ、
周囲の音が遠のき、
世界が深層の闇へ静かに沈んでいく。

ただ一人、
リミラだけが状況を静かに見守っていた。

その瞳は、
深層の奥底と同じ色をしていた……

深層の内側へ

光に包まれたまま、
私はどこかへ“落ちていく”。

落ちているのか、
沈んでいるのか、
それとも浮かんでいるのか──
上と下の境界が曖昧になっていく。

ただ、胸の奥だけが熱く熱量を増していく。
光粒が、まるで心臓の代わりのように脈打っている。

(……かえして……
 ……わたしの……かけら……)

声が、すぐそばで震えた。

影の輪郭が、
光の中でゆらゆらと揺れている。

その姿は、
人の形をしているようで、していない。
深層の闇が“形を借りている”だけのようにも見えた。

(……おまえ……
 ……なぜ……にがす……?)

影が近づくたびに、
胸の光粒が熱を帯び、私の胸を締め付ける

「……っ……やめ……!」

声を出した瞬間、光が大きく揺れた。

影の声が、
怒りとも悲しみともつかない震えを帯びる。

(……かえして……
 ……はやく……
 ……もどらな……)

影の“手”のようなものが私に伸びてくる。
触れられたら、この手に触れたら、私は胸の奥の光粒が引き抜かれる──
そんな確信があった。

「いや……っ……!」

必死に拒んだ瞬間、
影の動きが止まった。

(……いや……?
 ……なぜ……いや……?)

影が揺らぐ。
その揺らぎに、別の温かな優しい光が差し込んだ。

リミラの理

「主様……」

静かで、
深くて、
どこまでも優しく響く心を落ち着ける、確かな声。

リミラだ。

光の中に、
彼女の姿がゆっくりと現れる。

深層の光をまといながら、
影の前に立つ。

「主様。
 この子は……ただ主様に欠片を返すためだけの存在やあらしまへん」

影がその言葉に動揺して、揺れる。

(……ちがう……?
 ……この子……なに……?)

「ニカはんは“器”やのうて……
 “選ばれた者”どす。
 欠片を返す前に……
 確かめなあきまへん」

(……たしかめる……
 ……なにを……?)

リミラは静かに振り返り、
光の中で揺れる私を見つめた。

その瞳は、
深層の奥底よりも静かで、
どこまでも優しい。

深層の意識の中

光に沈んだはずなのに、
落下の感覚はすぐに消えた。

代わりに──
足元に、柔らかい“何か”が触れた。

(……ここ……どこ……?)

曖昧だった視界がゆっくりと戻っていく。

そこは、
記録庫とはまったく違う場所だった。

空も、地面も、境界もない。
ただ、淡い光がゆらゆらと漂うだけの空間。

まるで、
“深層の主様の意識の中”に迷い込んだような……

(……きた……)

声が、私のすぐ背後で震えた。

振り返ると──
そこには、影が立っていた。

さっきよりも輪郭がはっきりしている。
人の形に近づいている。
まるで、私を“見よう”としているように。

(……おまえ……
 ……なにもの……?)

胸の光粒が、
静かに、でも確かに明滅する。

「……わたしは……」

言葉を探す。
でも、何も出てこない。

そのとき──
光の中から、
静かな足音が響いた。

「ニカはん。
 ここは……主様の“内側”どす」

リミラが現れた。

深層の光をまといながら、
まるでこの空間が“自分の庭”であるかのように
静かに歩いてくる。

本番の始まり

「さぁ……
 ここからがほんまの“始まり”どすえ」

影が揺れた。

(……はじまり……?
 ……なにが……?)

リミラは影を見つめたまま、
静かに告げる。

「主様。
 この子が“何者”か……
 確かめる時が来たんどす」

影の輪郭が、
ゆっくりと、ゆっくりと近づいてくる。

胸の光粒が、
まるで応えるように強く明滅した。

(……おまえ……
 ……わたしの……
 ……ほんとうに……かけら……だけ……?)

その問いが響いた瞬間──
世界が大きく揺れた。

光が弾け、
影が伸び、
リミラの声が遠のく。

「ニカはん……
 心の準備はできてまっか……
 こっからが本番どすえ……」

光が視界を覆い──
第17話は幕を閉じる。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
沈んだ先で見えた影の正体は、
まだ靄の向こう側にあります。
けれど、ニカが何者なのかを知る旅は、
ここから静かに動き出します。
次の一歩も、そっと見守っていただけたら幸いです。

--第18話へ続く
--第2部全話はこちらから

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