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本書は、イギリスの美術批評家であるジョン・バージャーが“イメージ”をテーマに、絵画作品から広告に至るまでを徹底分析した著作である。
全部で7章を以って構成されているが(うち3章は図版紹介)、何れの章も一つの主題に絞って解説・完結しているので、著者が提案するように、どの章から読んでも理解出来る仕組みとなっている。
コンパクトな文庫本ながらも、内容、図版共に充実しており、非常に読み応えのある一冊であった。
さて“イメージ”というと、やや漠然とした印象を持ってしまうかもしれないが、本書で主に取り組むのは「見る事」「見られる事」…そして、それらを「所有する事」である。
一番解り易い例を挙げるならば、女性の裸体像に於ける「見る男性(画家、あるいは注文主)」と「見られる女性」という対比であろう。
また「所有」については、上記の肖像画は言う迄もなく、「コレクション」としての絵画収集、「所有を拒否する風景画」というジャンル、或いは「所有欲を刺激する広告」等について多角的に扱っている。
取り分け、風景画を「社会の直接的な要求から生まれた訳ではない」と位置付けながらも、その一方で、絵画界に与える影響が偉大であり続けた事、更には純粋な風景画では無いかもしれないが、自らが所有する庭園風景を残そうと努めた地主の心情にまで論述を展開して行く流れは、中々興味深かった。
因みに、個人的に関心を持ったのは、最終章の「広告の宇宙」である。
現代の私達は常に広告に囲まれて過ごしているが、ここで著者は、伝統的な絵画作品と広告とを比較考察している。
即ち、絵画はあくまでも「現在時制」で描かれ、現在の姿が後世に残るように願ったものであるが、広告が描くのは「未来」であり、「この商品を購入した時の幸福な貴方」…というイメージを搔き立てるものであると言うのだ。
絵画と広告とでは「イメージの実物を手に入れたい」という所有欲こそは共通するものの、「現実」と「未来」という点に於いて、既に出発点が違う事を説いている。
当たり前の…然しながら、今まで気付きもしなかった両者の違いを理解させてくれた所は画期的であったように思う。
尚、巻末には本書の訳者・伊藤俊治氏に依る「見る事のトポロジー」という小論も掲載されており、視覚のメカニズム、コレクターとしての美術館の存在、更には博覧会等を取り上げながら、本書に則した論述を行なっている。
極めて有用な内容なので、単なる補足解説としてではなく、是非とも一つの独立した論文としてお読み頂きたいと思う。
実は、本書は今から30年近くも前に出版されたものだが、世界的なベスト・セラーとなり、増版を重ねて今に至っていると言う。
成程、今読んでも決して精彩さを欠く事はなく、斬新な着眼点と鋭利な指摘には驚きの連続だ。
今後も更に多くの読者を獲得するであろう事は疑う余地が無く、美術史上に名を残す名著となるであろう。
長女に買ったためよく分かりません。
特に何も言っていないので良かったなかな?
イメージの変容
社会空間になったイメージ
見ることと見られること
見られる女たち 取り囲む女たち
所有するタブロー
見ることのなかの所有すること
広告の宇宙
見ることのトポロジー(伊藤俊治)
美術評論家、脚本家でもあるバージャーが、自らも企画したテレビシリーズをもとに、書き下ろした本。テレビで紹介された様々な絵画、イメージも掲載されている。
バージャーは、イメージは、見る人の置かれている状況や、そのバックグラウンドによって、全く違うように見えること。また、イメージを提供する側が、それを意識して提示することで、社会的な効果をもたらすことが出来る、などを論じている。
この本を読む前と、読んだ後では、絵画や写真を見る見方が、異なってくるに違いない。