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2010年に刊行された本を、2019年12月14日に亡くなった(享年79)アンナ・カリーナへの追悼の意も込めて増補新版文庫化した本。著者は山田宏一氏。
(ゴダールの)「アンナ・カリーナ時代」と呼ばれているのは1960年から1967年までで、この間のゴダール映画は『小さな兵隊』から『ウィーク・エンド』まで長編14本、短編約7本。このうちアンナ・カリーナの出演する映画は長編7本、短編1本。(ゴダールとアンナ・カリーナは61年3月に結婚し、64年12月に離婚)。
本書はもちろんゴダール映画女優アンナ・カリーナへのオマージュが中心であるが、アンナ・カリーナの出てこないゴダール映画についても平等に論じられていて、全体として、この時期のゴダール映画へのオマージュとなっている。
なお、ゴダールの述懐によると、「一人の女優(アンナ・カリーナ)と一緒に仕事をし、その女優を映画に出演させ、しかもその女優と一緒に暮らしていた」ことが自分の映画にとって最も重要なことであったそうである。(22頁)
しかし、アンナ・カリーナへのインタビューの中でカリーナは「わたしといっしょのころはそんなやさしいことをついぞ言ったことがない」と答えており、『女は女である』はカリーナのための企画ではなく、ゴダールは撮影所の(カリーナ以外の)すべての女の子(女優)に声をかけていたと答えてもいる。ゴダールの述壊はたぶんに伝説+ノスタルジアと考えたほうがよさそうだ。
最後のアンナ・カリーナ映画『メイド・イン・USA』でアンナ・カリーナを使ったのは単なる習慣とゴダールは言っており、撮影現場でカリーナに冷たくつらく当たり、あまりにも意地悪なので、カメラマンがやめるように意見したそうである。(580頁)
構成
『勝手にしやがれ』(1959年)から『ウィークエンド』(1967年)までのゴダール全映画について、メイキング方式を取り入れ、年代順に語っている。
私的感想
〇著者のアンナ・カリーナ愛、60年代ゴダール映画愛に強く共感する。
〇9ヵ所に分散収録されているアンナ・カリーナインタビューが楽しい。アンナ・カリーナの答は見事としか言いようがない。本当にセンスのいい、素敵な女優さんである。
〇フォトアルバム2「わがアンナ・カリーナ」は1965年5月25日パリのアンナ・カリーナのアパルトメンで著者が撮った数点の写真。夢のように美しい。
余談
〇アンナ・カリーナのインタビューによると、ゴダールの恋人はみんなアンヌという名前とのこと。カリーナの前の恋人はアンヌ・コレット。カリーナとの結婚中に付き合っていた愛人達もみんなアンヌ。カリーナ以後のパートナーはアンヌ・ヴィアゼムスキーとアンヌ=マリー・ミエヴィル。なぜだろう? 寝言の問題ではなさそうだ。アンナ・カリーナだけが特別だったということか。
ゴダールの1960年代の作品を、長編だけでなく、短編も含めて紹介している。
この時代は、アンナ・カリーナ時代と呼ばれており、彼女は多くの作品に出演しているが、著者本人によるカリーナへのインタビューもあり嬉しい。
撮影監督を務めた、ラウル・クタールへのインタビューもあり、俳優とスタッフの立場から、ゴダールがどの様にそれぞれの映画を作り上げたのかが、よくわかる。
そうした内容が安価な文庫で読めるのは実に喜ばしいが、どうせなら、他の時代の作品もカバーして欲しかった。