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  • 夏目漱石論2.0① 『行人』論2.0 近代文学2.0

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夏目漱石論2.0① 『行人』論2.0 近代文学2.0


夏目漱石は百余年間もの長きにわたり読み飛ばされてきた。近代文学が終焉を迎えたとすれば、それはおっちょこちょいの文芸評論家が夏目漱石作品をことごとく読み誤ってきた所為ではないか。『絶歌』が『金閣寺』のパロディの形式をとることに誰一人気が付かず杜撰な校正のまま『1Q84』はベストセラーになった。そんな近代文学1.0をアップデートするために本書ではもう一度漱石作品を正確に読んでみたいと思う。本書には大体以下のような内容が書かれている。


・『行人』の「塵労」のみを哲学小説と見做すのは間違い。「難しそうなこと」が書かれているに過ぎない。
・「塵労」に分裂を見出すのは間違い。構成として見事に整っている上に内容的にもつながりがある。
・「塵労」はユーモラス。
・「塵労」によって三沢も対になる。
・聴覚もF+fだ。
・お金の流れを追うと、色々な理屈が見えてくる。
・頼まれる男が頼む男になる。
・外側からは解らないことがある。
・お直は古典的実在論者である。
・二郎の妄想によってお直は悪い女に仕立て上げられる。
・二郎は嫂が好きだと思われている。
・二郎は最初、暇を持て余した学生かのように描かれている。用事で大阪に行くだけではなく、京都から伊勢参りまで予定しているので、とても仕事をしているようには思えない。後に有楽町の事務所で図を引いているらしいことが解る
・漱石は後からだんだん事情が呑み込めてくるように書いている。
・梅に鶯の軸を偽物だと二郎は言う。岡田夫婦には子ができない。岡田は子供が欲しいと思い、お兼は欲しくないと言う。貞子の仲人をすべき岡田がお兼を連れてこない。この不自然さに夫婦の不仲が仄めかされている。
・岡田は髪が薄くなっている。佐野はお凸。このことから二郎は髪が薄くもなくお凸でもないように仄めかされている。
・お兼は下卑た家庭で育ったが品が良くなっている。二郎はお兼に対して自分と同じ階級の未知の女に対するように話した。二郎は自分が高等な階級に属しているという自負を持っている。昔はお兼を「あんなもの」と見下していた。二郎は看護婦と言い、嫂と言い中身ではなく見かけに惹かれる。「お貞さんは器量から云っても教育から云っても、これという特色のない女である。ただ自分の家の厄介やっかいものという名があるだけである。」と二郎は見ている。またお貞を貰いたがる佐野を二郎は物好きだと思う。一郎はお貞を正直な女だと評価している。
・「どうしてお貞さんが、そんなに気に入ったものかな。まだ会った事もないのに」と二郎は不思議がる。
・「佐野さんはああいうしっかりした方だから、やっぱり辛抱人を御貰いになる御考えなんですよ」こう会話する二人ともお貞を器量よしとは見ていない。だが佐野は何故お貞が辛抱人だと知っているのか。長野家でお貞が辛抱していることを岡田から聞き知ったというロジックが隠れてはいまいか。
・「頭を枕に着けながら、自分の結婚する場合にも事がこう簡単に運ぶのだろうかと考えると、少し恐ろしい気がした。」という二郎は、写真だけで事が運ばれる結婚が怖ろしい。怖ろしいが下女の結婚には異論はない。
・三沢は胃を悪くして入院した。昔から医が弱く、吐いたり下したりしていた。佐野は飲んでも赤くならないが吐いたり、くだを巻いたりするようだ。それを承知でお貞を嫁がせようというからには、余程長野家が辛いのではなかろうか。
・モデルが誰であろうとあまり関係ない


 嫂が何故「人間ですもの」と言ったのか、その程度の読解からまずは始めよう。

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村雨春陽
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