千年超える信仰の歴史

 京都市左京区の古刹(こさつ)で、都の念仏信仰の中心として栄えてきた真如堂(真正極楽寺(しんしょうごくらくじ))は、戒算(かいさん)上人が984年に開創した天台宗の寺院だ。18日から龍谷大学龍谷ミュージアム(下京区)で始まる春季特別展「京都・真如堂の名宝」では、寺に伝わる貴重な仏像や仏画、創建当時の他寺院の仏像など約100件を展示し、千年を超える信仰の歴史をたどる。

 真如堂の塔頭(たっちゅう)・法輪院に伝わる「木造 阿弥陀如来立像」。このほど体内から墨書が見つかり、京都を中心に活躍した「院派」の有力仏師、院蓮(いんれん)の作であることと、1253(建長5)年に制作されたことが明らかになった。

「木造 阿弥陀如来立像」院蓮作 鎌倉・1253(建長5)年真如堂一山 法輪院 画像提供:美術院 ※寺外初公開

 それまでは、りりしい顔立ちや玉眼などから運慶・快慶に連なる奈良仏師「慶派」の作と想像されてきた。制作者と制作年が判明した意義について、石川知彦副館長は「当時の慶派の作風が、院派にも影響を及ぼしていたことが分かる」と語る。

 同じく塔頭の喜運院に伝わる「木造 阿弥陀如来立像」は、像と台座をつなぐ部分に注目したい。通常、立像は足の裏にほぞを作って台座にはめ込む。しかしこの像は足の裏ではなく、本体部分に金属の棒を埋め込んで台座に固定している。仏像の足裏には仏足文が描かれることも多く、石川副館長は「この像には描かれていないが、ほぞを作ると仏足文が表現できない。だから、足裏にほぞを作ることがはばかられたのではないか」と分析する。

「木造 阿弥陀如来立像」鎌倉時代 13世紀 真如堂一山 喜運院 ※寺外初公開

 特別展では、京都や滋賀に伝わる10~11世紀の仏像も合わせて紹介する。寺外初公開のものも多く、常時10点以上を観覧できる。中には、10世紀後半に制作された真如堂の本尊の特徴を模倣したものも複数並ぶ。

 本展では展示されないが、真如堂の本尊「阿弥陀如来立像」は、喜運院の立像同様に足裏にほぞがない。この本尊が制作されるまで、日本で作られる阿弥陀如来は座像ばかりだったという。

 本尊が作られる直前、清凉寺(右京区)に釈迦如来の立像が中国から持ち帰られて話題をさらった。石川副館長は「清凉寺の像を参考にして、真如堂の本尊は阿弥陀如来の立像で作られた。その後、日本でも阿弥陀如来立像が当たり前に作られるようになった。その点でも非常に重要な仏像だ」と話す。
 仏像以外では、真如堂に伝わる国宝「運慶願経」は必見。1181年、平氏が東大寺や興福寺など奈良の仏教寺院を焼き払い、その復興には運慶ら奈良仏師が大きな役割を果たした。復興に向けて運慶の発願で作った法華経の写しが運慶願経。お経の軸には焼け残った東大寺の柱が使われている。

国宝「法華経(運慶願経) 巻第二」珎賀筆 平安後期・1183(寿永2)年 真正極楽寺 真如堂 画像提供:京都国立博物館【巻第二 展示期間:4月18日~5月17日】※巻第四は5月19日~6月14日に展示

 「真如堂縁起」や狩野山雪の「寒山拾得図」などの重要文化財や所蔵する人物画も並ぶ。非常に見どころが多い展覧会だ。

重要文化財「真如堂縁起 巻上」絵‥掃部助久国筆 詞‥後柏原天皇(1464~1526年)宸翰 室町・1524(大永4)年 真正極楽寺 真如堂 画像提供‥京都国立博物館【巻上 展示期間‥4月18日~5月17日 ※巻替えあり】
重要文化財「寒山拾得図」狩野山雪(1589~1651年)筆 江戸時代 17世紀 真正極楽寺 真如堂 画像提供‥京都国立博物館【展示期間‥5月19日~6月14日】
「豊臣秀吉像」江戸時代 17世紀 真正極楽寺 真如堂【展示期間‥5月19日~6月14日】
「足利義輝像」室町時代 16世紀 真正極楽寺 真如堂【展示期間‥5月19日~6月14日】

■会  期 4月18日(土)~6月14日(日)。月曜日休館(5月4日は開館し、5月7日休館)
■会  場 龍谷大学龍谷ミュージアム(京都市下京区堀川通正面下ル、西本願寺前)
■開館時間 午前10時~午後5時(入館は閉館30分前まで)
■入館料 一般1600(1400)円、高校・大学生900(700)円、小中学生500(400)円、小学生未満無料。かっこ内は前売りと20人以上の団体料金
■主  催 龍谷大学龍谷ミュージアム、京都新聞、朝日新聞社

◆関連イベント
【記念講演会】
 「真如堂一山 法輪院の阿弥陀如来像の修理」5月10日午後1時半~3時、龍谷大学大宮学舎(下京区七条通大宮東入ル)。講師は京都府教育庁文化財保護課副主査の桑原正明さんと美術院国宝修理所技師の森内明さん。先着150人で事前申し込みが必要。聴講は無料(観覧券が必要、観覧後の半券可)
【トークセッション】
 「真如堂 一千年の歴史を語り尽くす」5月24日午後1時半~3時、龍谷大学大宮学舎(下京区七条通大宮東入ル)。講師は京都市歴史資料館研究員の井上幸治さん、富山大学学術研究部准教授の長村祥知さん、司会進行は龍谷ミュージアム副館長の石川知彦さん。先着150人で事前申し込みが必要。聴講は無料(観覧券が必要、観覧後の半券可)
【ギャラリートーク】
 展示室で学芸員が見どころを解説。4月26日、5月16日、6月7日でいずれも午後1時半~2時15分。事前申し込み不要。聴講は無料(当日の観覧券が必要)