月次決算の“すごい効果”「株式会社協同 様」 月次決算体制の構築で“経営が組織に宿る”

瀬戸内海にほど近い岡山県倉敷市児島で服飾資材の企画・製造・販売を手がける協同は、会計事務所のサポートのもと、月次決算体制を構築した。西川源徳社長は、「月次決算は会社経営の基本です」と言い切る。 (写真)左端が大表康治監査担当(巡回監査士)、その隣が藤井誠経営管理部長 目次 閉じる開く 「経営が組織に宿る」 制服用ワッペンでトップシェア 税理士との二人三脚で再建 「月次決算は経営の基本」 6月中旬のある日の午後、服飾資材の企画・製造・販売事業を展開している協同の西川源徳社長と、経営管理部長を務める藤井誠氏は、税務顧問である税理士法人シナジーを訪れていた。同社が毎月実施している「業績確認ミーティング」に参加するためである。 ミーティングには西川社長と藤井氏、各営業拠点の責任者、生産部門の責任者、総務経理スタッフに加え、小野晃弘顧問税理士が参加。西川社長、藤井氏、小野税理士は税理士法人シナジーの会議室から、その他の社員は各拠点からオンラインで出席している。 梅雨時にもかかわらず、この日の天気は快晴。暖かな陽光が差しこむ会議室で、責任者からの報告に耳を傾けていた小野税理士が口を開く。 「○○営業所の在庫が増えているように見受けられますが、今後どのような対策をお考えでしょうか」 小野税理士の質問を受けて、同営業所の責任者が対策を報告。その後も、業績の推移とその背景、打ち手に関する質疑応答が活発に交わされ、この日のミーティングは終了した。 1.「経営が組織に宿る」 「各部門の責任者が一堂に会し、財務状況の確認と今後の方向性を協議する業績確認ミーティングは、今期からスタートした取り組みです。ミーティングを重ねるなかで、各責任者が自部門の業績に関心を持ち、数字の改善を目指して主体的に行動するようになりました。特に、現場の責任者が『時間当たり採算』の改善を自分ごととして語れるようになったとき"経営が組織に宿った"と、手ごたえを感じましたね」 (左)小野晃弘顧問税理士、(右)西川源徳社長 西川社長はミーティングの効果をこのように語る。 ある営業拠点の責任者はこの日のミーティング直後、得意先別の在庫量を可視化するツールを生成AIで作成した。これにより、在庫の変動要因や現在の在庫量などを一目で把握できるようになり、現状分析と対策立案のスピードが格段に向上したという。 会計データを"経営の羅針盤"として積極的に活用する西川社長が、とりわけ注目している指標の一つが「時間当たり採算」だ。時間当たり採算とは、1時間の労働でどれだけの付加価値を生み出したかを示す指標のことである。 「生産性向上の観点から、時間当たり採算は特に注目しています。当社では『FX4クラウド』に搭載されている『MR設計ツール』を用いて、各部門の時間当たり採算をまとめた資料を作成し、経営判断に役立てています」(西川社長) 拠点別の損益にも着目している。同社は営業所の数が多いことから、各拠点の収益状況をタイムリーに把握できる体制を、小野税理士のサポートを受けながら構築。「業績を拠点別に管理することで、どこで価値が生まれているかが明らかになり、責任の所在と改善の方向性が明確になりました」と、西川社長は拠点別管理のいきさつと効果を語る。 このように、同社では会計データをこと細かく管理し、その実績にもとづいて意思決定を行う習慣が根づいている。しかし、こうした仕組みが一朝一夕で定着したわけではない。同社が長年抱えていた課題と西川社長の問題意識を起点に、会計事務所の綿密な支援を受けながら、月次決算体制を地道に構築してきたのである。 2.制服用ワッペンでトップシェア 創業は1955年。西川社長の父である源照氏が、福井県で立ち上げた西川織マーク工場が同社のルーツだ。創業以来、洋服用のタグやワッペン、ボタン、バッジといった縫製副資材の企画・製造・販売を手がけている。年商の約半分は学校制服メーカー向け商品で、なかでも学生服用ワッペンでは業界トップクラスのシェアを誇る。 洋服用のワッペン、ボタン、バッジなどの企画・製造・販売を手がける 「日本には中学校が約1万校、高校が約5,000校あり、そのうち約4,000校の制服で当社のワッペンが採用されています。創業の地は福井県坂井市ですが、2022年に瀬戸内海にほど近いこの場所に本社機能を移しました」 こう話す西川社長は、中国・北京に拠点を構える同社の合弁会社や、愛知県の化学品メーカーを経て、協同に入社。その後、すぐに上海の海外子会社に配属され、約7年間勤務したのち帰国した。09年に社長に就任。以来、17年にわたって経営のかじ取りを担ってきたが、その歩みは決して順風満帆なものではなかった。 「社長に就任した当時は会社が債務超過に陥っており、債務の処理と財務の健全化に向けた取り組みに追われていました」と西川社長は当時を振り返る。 3.税理士との二人三脚で再建 そんな西川社長の一挙手一投足を支えてきたのが小野税理士である。小野税理士が同社の税務顧問に就任したのは19年のこと。本社移転に先立って顧問契約が結ばれた背景には、当時、中国銀行から同社に出向していた藤井氏の提案があった。 「顧問税理士を選定するにあたり、真っ先に思い浮かんだのが小野先生の事務所でした。というのも、20年ほど前に支店長として中庄支店に着任した際、歴代の支店長から『困ったことがあれば小野眞一先生(先代所長)に相談しなさい』と引き継がれるほど、小野先生の事務所は中小企業に寄り添った支援を行うことで知られていたのです。この姿勢は、小野晃弘先生が事務所を承継された現在も変わっていません。このような経緯から、『小野先生の事務所であれば、当社の経営課題にも親身に対応してくださいます』と社長に進言しました」(藤井氏) 小野税理士が税務顧問に就任してほどなく、会計システムとして『FX4クラウド』を導入。さらに、月次で業績を締めるとともに、会計事務所を交えた業績報告会を毎月行う「月次決算体制」の構築に取り組んだ。 西川社長は言う。 「以前は決算書が完成してようやく自社の実態が把握できる状態でしたが、月次決算体制を確立して以降は、自社の課題把握と対策をタイムリーに行えるようになり、業績も着実に改善していきました。最近は売上高や利益ともに右肩上がりで成長しています」 続けて、長きにわたって同社の月次巡回監査を担当している大表康治氏(税理士法人シナジー)は言う。 「西川社長は月次決算だけでなく経営計画の策定も重視しており、決算月の1~2カ月前にあたる7~8月には、翌年度の予算を部門ごとに策定されています。前年の実績や業界の動向などを踏まえ、幹部社員と議論を重ねながら目標数値を定めておられます」 4.「月次決算は経営の基本」 「小野先生から月次決算体制の構築を提案されたとき、『これこそが経営の基本である』と気づかされました。私たちが厳しい時期を乗り越えることができたのは、税理士法人シナジーさんの支援があったからです。当社にとって会計事務所は『経営の羅針盤』であり、『経営変革のパートナー』です」 西川社長はこう断言する。 月次決算は経営の基本――。この考え方を会社全体に浸透させるべく、同社の経営理念、経営方針、従業員の心のあり方や行動基準などを手帳サイズにまとめた『SoBaNi BOOK』の中に「管理会計用語の説明」というページを設けている。 (右)同社の経営哲学を1冊にまとめた『SoBaNi BOOK』と『SoBaNi フィロソフィ』は毎年全社員に配布している そこには「売上高」「限界利益」「限界利益率」「時間当たり採算」など、主要な勘定科目や経営指標10個とその説明文が記されている。「会計の重要性をすべての社員に知ってもらいたい」という思いが垣間見える取り組みだ。 「"SoBaNi"とは当社のサービスブランドで、社員が経営理念、経営方針の実現に向け、どのように行動すべきかの指針です。その考え方を"仲間の『感謝』のそばに""お客様の『感動』のそばに""お客様と仲間の『信頼』のそばに"という三つの言葉で表現しています。これからも社員とその家族をはじめとするステークホルダーとともに、経営理念である『全社員の豊かさと充実した人生を追求し、社会から必要とされる存在であり続ける』を体現し続けられる会社づくりに取り組んでいきます」と西川社長は意気込む。 (取材協力・税理士法人シナジー/本誌・中井修平) 会社概要 名称 株式会社協同 業種 服飾資材企画・ 製造・ 販売業 創業 1955年 所在地 岡山県倉敷市児島下の町9丁目12番コ2号(岡山本社) 売上高 21億3,000万円 従業員数 108名 利用システム FX4クラウド URL https://www.kwl.co.jp/index.php 顧問税理士 税理士法人シナジー 代表社員 小野晃弘 岡山県倉敷市黒崎5番地1 URL: https://www.ono-tax.jp 掲載:『戦略経営者』2026年8月号 記事提供 戦略経営者  『戦略経営者』は、中堅・中小企業の経営者の皆さまの戦略思考と経営マインドを鼓舞し、応援する経営情報誌です。 「TKC全国会」に加盟する税理士・公認会計士の関与先企業の経営者を読者対象に、1986年9月に創刊されました。 発行部数13万超(2025年9月現在)。TKC会計人が現場で行う経営助言のノウハウをベースに、独自の切り口と徹底した取材で、真に有用な情報だけを厳選して提供しています。

2026.08.20

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