どうすれば月2億円分のトークンを燃やせるのか
OpenClawの作者であるPeter SteinbergerがOpenAI API/Codexの利用で、30日間に約130万ドルを使ったという話が少し前に話題になりました。
正確には$1,305,088.81。
為替を1ドル155円と置けば、約2.02億円です。
token量は603B tokens。Bはbillionなので、約6,030億トークンです。
数字だけを見ると何をどうしたらそんなことになるのかと感じます。
人間が頑張ってチャット欄でAIに相談しながら作業するだけでは、この規模には届きません。
とてつもなくハードワーク・パラレルワーク・マイクロマネジメントによる限界も気になりますが、流石にこの数字は無理でしょう。
数字を作業量に直すと、かなり無茶さが見えてきます。
以下は報道されている合計値を雑に割っただけの計算です。
実際の料金体系やリクエストの中身を正確に再現するものではありません。
ただ、規模感を見るには十分おもしろい数字になります。
| 見方 | 報道値からの割り算 | 人間の作業に直すと |
|---|---|---|
| request数 | 7.6M requests / 30日 = 約25.3万 requests/日 | 8時間労働なら約8.8 requests/秒。チャット操作では無理 |
| token量 | 603B tokens / 30日 = 約20.1B tokens/日 | 1日100回投げる人なら、1回あたり約201M tokensが必要 |
| 平均token usage | 603B tokens / 7.6M requests = 約79k tokens/request | 内訳は外から分からない平均値 |
| 100 instances | 1 instanceあたり約2,533 requests/日 | 約34秒に1回なら、常時動くagentとしては現実的 |

request数だけで見ても、1人が1日100回AIに投げるなら約2,500人分です。
もちろん、ここでいうrequestはAPI/Codex側のリクエストで、人間の「1回お願いした」とは一致しません。
かなり雑な比較です。
しかし、平均すると1 requestあたり約79k tokens級の利用です。
これはどう考えても、AIとたくさん会話した人の話ではなく、AIが勝手に動き続ける仕事のパイプラインを作った人の話です。
同じ「AIを使っている」でも、チャット欄に毎度入力しているだけの人と、100個前後のCodex instancesを常時回している人では、もう別の競技と言うかゲームか何かです。
前者は、人間の手元の作業を速くするだけですが、後者は、人間が寝ている間にも進む仕事を作っています。
だから、月2億円という数字はAIを長時間触った人の延長線にはありません(たぶん、シンプルにハードワーカー揃いという可能性)
まずファクトチェックする
一次ソースは本人X、ただし複数報道と公開資料で確認できる範囲をもとに整理します。
| 項目 | 報道ベースの数字 |
|---|---|
| 期間 | 30日 |
| OpenAI spend | $1,305,088.81 |
| 円換算 | 約2.02億円($1 = 155円) |
| tokens | 603B tokens |
| requests | 7.6M requests |
| Codex instances | 約100 |
| チーム人数 | 約3人 |
| 指標 | ざっくり |
|---|---|
| 1日あたりのコスト | 約674万円 |
| 1日あたりのtokens | 約20.1B tokens |
| 1日あたりのrequests | 約253,000 requests |
| 1分あたりのrequests | 約176 requests |
| 1requestあたりの平均token usage | 約79,000 tokens |
| 1requestあたりのコスト | 約17セント |
| 1M tokensあたりの平均コスト | 約$2.16 |
1requestあたりのコストや1M tokensあたりの平均コストは、合計値を割っただけの参考値です。
100体のCodex instancesは何をしていたのか
報道によれば、Steinbergerのチームは約100のCodex instancesをクラウドで動かしていました。
用途は、PRレビュー、セキュリティホール検出、GitHub Issueの重複排除、修正作成、ベンチマーク監視、会議内容からのPR作成などです。
| 指標 | 1 instanceあたりの月間平均 |
|---|---|
| 月間コスト | 約200万円 |
| 月間tokens | 約6.03B tokens |
| 月間requests | 約76,000 requests |
| 1日あたりrequests | 約2,533 requests |
| 1時間あたりrequests | 約105 requests |
| 1requestあたりの間隔 | 約34秒に1回 |
| 1時間あたりのコスト | 約2,800円 |
報道値をそのまま置くと、約100のCodex instancesが、30日で603B tokens / 7.6M requestsを処理しています。
1 instanceあたりに均すと、月6.03B tokens、月76,000 requests。
1日あたり約2,533 requests、約34秒に1回です。
月あたり約200万円、1時間あたり約2,800円の流路が100本ある、と見ると少し分かりやすいかもしれません。
当たり前ですが、実際には均等ではありません。
それでも、平均すれば、100個前後のCodex instancesが約34秒に1回ずつ仕事を回す状態です。
トークン消費を分解する
「How Do AI Agents Spend Your Money」論文では、agentic coding taskの平均token usageが約4.17M tokensとされています。
603B tokensをこの数字で割ると、約14.5万 agentic coding tasks/月です。
1日あたり約4,800 tasks、1分あたり約3.3 tasks。
もちろん、これはPeterの実際のタスク数ではなく、この論文のagentic coding taskに寄せた換算です。
また、4.17M tokens/taskという値も、一般的なAIエージェント作業すべての平均ではなく、特定のagentic coding benchmark上での平均値です。
なので、ここでは「agentic codingっぽい単位に無理やり換算するとどれくらいか」くらいの雑な見方です。
ですが、エージェント作業の流量として見たら数字が近づいてきました。
では、そこまでAIを使える人は何が違うのか
これだけのトークン消費を生み出す起点は、結局のところ人です。
ただし、その人が直接トークンを消費するわけではありません。
トークンを消費し続ける仕組みを作ることです。

Agentic前提だと、生産性の評価軸は「自分でどれだけ手を動かせるか」から、「自分の判断や設計をどれだけエージェントに増幅させられるか」「どこまで任せられる形に切れるか」のほうが効いてきます。
- 自分のワークフローを言語化し、エージェントに渡せる粒度まで言語化する。
- 成功条件、停止条件、検証方法を先に置いて、AIが動くループを設計する
- 並列で走る複数タスクの状態を頭の中で持ちながら、失敗したときにはプロンプトだけでなく流路そのものを直す
Loop Engineeringという言葉で呼ばれているものも、この感覚に近いです。
また新しい〇〇Engineeringか、という気持ちはありますが、ここで見たいのは、人間がループの中で毎回作業するのか、それとも、ループの外側で入口、検証、停止条件を見るのか。
この違いです。
Human in the loopというより、Human on the loop。
プロンプトを頑張るだけでは、月2億円の世界には行けません。
行くべきなのかは分かりませんが、少なくともたくさんチャットするだけでは届かない。
トークンを燃やすことに価値があるかはさておき、自分の仕事を、他人に任せるようにAIへ渡せる人は希少です。
そういう人が1人いると、本人の労働時間に比例しないトークン消費が会社の中に生まれます。
一度ワークフローになると、夜や週末にも動きます。
燃やせることと、価値に変えることは別
ただし、Agentic Workflow は簡単に無駄遣いできます。
先ほどの論文では、同じタスクでも token usageが最大30倍ブレるとされています。
しかも、コストが高い(トークン消費が多い)実行ほど精度が上がるわけではない。
むしろ高コストなrunでは、同じファイルの再閲覧や再編集が増えており、深く考えているのではなく、迷って同じ場所を何度も見ているだけ、ということもあります。

tokenmaxxingも、雑に言えば「とにかくAIを使い倒して、token消費量そのものを活用度や生産性っぽく扱う」わけですがそれ自体を目的にすると、ただ無駄の可能性も高いです。
とてもとてもわかりやすくはありますけどね。
使えば勝ち、の次は管理対象になり、AIコストは、人件費や広告費と同じように投資判断の対象になっていくのは自明の結末でしょう。
とはいえ、個人レベルで考えたらこのレベルでtokenmaxxingができる人は多くありません。
個人的には1回tokenmaxxingしてみる派です。
おわりに
月2億円のトークン消費は、AIをたくさん触った人の数字ではないというのを改めて実感しました。
AIに作業を深く委任できる人が叩き出す数字です。
2億という数字自体はさておき、どのツールを使ったかより、人間がループのどこに立っているか
毎回入力する側なのか、それとも、外側から仕事の入口と検証を見て、勝手に回るパイプラインを増やす側なのか
それによる違いを感じるには十分でした。
手でプロンプトを書くだけではなく、仕事をトークン消費に変換できる人になってみたいですね。
今回は以上です!
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