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政策としての医療援助:応用医療人類学の萌芽

Medical Aid as an International Politics: The Beginnings of Applied Medical Anthropology

Anti-cholera Inocution in Caltutta in March 1894

Anti-cholera Inocution in Caltutta in March 1894, Simpson, W. J. (William John), Sir, 1855-1931.

池田光穂

3.  政策としての医療援助:Medical Aid as an International Politics

3.2  応用医療人類学の萌芽:The Beginnings of Applied Medical Anthropology

ロックフェラー財団や戦前の米国政 府のプロジェクトがあるにもかかわらず、医療人類学なるものの起源は第二次大戦後であるとみる見方が一 般的である。米国人類学会連合(American Anthropological Association)に属する医療人類学会(Society for Medical Anthropology)は1969年に医療人類学の起源についてふれ、それを「第二次大戦終了直後に互いに収斂することになる保健科学と人類学におけ る調査と応用のいくつかの系統」からなるとしている。もっともこの時期には医療人類学という用語はなく、この領域を国際公衆衛生 (international public health)と呼ぶことができる。欧米の人類学者たちは戦争終結以前から、世界的な規模での危機が乗り越えられ、戦争終結後の新しい世界秩序に人類学が 実践的な貢献をもたらすと信じていた。そのひとりハロウェルは、文化変容にともなう治療システムの受容・非受容について分析をおこなった。彼は第二次大戦 によって未開社会の西洋文化への順応と伝統文化へのゆり戻し(再順応)がともに大きく起こったことを指摘した。そしてそのような状況把握のための知識とし て人類学が応用されるとき、人間の新しい文化の創造が可能になるという(Hallowell 1945)。

しかし、大戦が終わった時点はそれはまだ理念にすぎなかった。そのようなことが具体的なかたちで可能になるのは、戦後になって実質的に医 療と食糧の国際援助が始まってからである。マーシャル・プラン(1948-51年)は、ヨーロッパの戦災復興として始まったが、やがて国際的な反共産主義 の一翼をにない、それがアジア・アフリカの旧植民地に波及するという世界規模化を遂げる。トルーマン大統領は早くも1949年には途上国援助のプランであ るポイント・フォー・プログラムを公表する。ポイント・フォー・プログラムでは、コミュニティ開発の計画に多くの人類学者が雇用された。1953年に登場 したソ連のフルシチョフもまた、それに対抗して平和共存の名の下に、米国に先を越されていた国際的な低開発国援助“競争”に参入することになる。両陣営に とっても援助されるものはイデオロギーにおける同盟者のことであり、同盟者であれば潜在的な援助の対象になったのである。

1940年代の初頭からラテンアメリカにおいて医療援助に着手し、1950年代には指導的な立場についたG・フォスターたちは、援助を図 式化する際に、その対象となる集団を「ターゲット」とよんでいた。彼らの計画は、保健センターを中心にしてターゲットとなる住民を西洋医療に向かわせよう とした。ターゲットはときにはクライエント、援助する主体はスポンサーと呼ばれた。また援助は軍事行動における作戦(operation)と表現されたり もした。人類学者たちはこの当時、次のような2つの考えに到達していた。まず第一に健康と病気は、医学的な現象であるだけでなく文化的社会的現象であるこ と。そして、第二に“発展途上国”への医療援助は、たんに工業国の保健サービスを移植するだけでは困難であるというものである。しかしながら人類学者が医 療援助に対しておこなった初期のコミットメントは、保健従事者たちに“なぜ医療援助がその土地や集団において困難な状況にぶつかったのか”という文化的な 解釈を与えることにあった。そして議論の多くはいまだ抽象的なことに費やされることが多かった。人類学者たちが自ら計画するのではなく、計画の相談者とし て利用されていたのだ。このようなかたちで参画した諸計画は、その10年後には早くも失敗したと評価された。つまり保健センターを中核とする活動が住民の あいだでは十分利用されていないと人類学者は報告した(Chambers 1985:19)。


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★ クレジット:「健康の開発」史——医療援助と応用人類 学、文学部論叢(地域科学編),第49号,pp.41-72, 熊本大学文学会,1996年2月

リ ンク

引用参考文献

クレジット:「健康の開発」史——医療援 助と応用人類 学、文学部論叢(地域科学編),第49号,pp.41-72, 熊本大学文学会,1996年2月

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