願わくば、すべてのブスを抱いて眠りたい 〜シゲオ編〜 (掌編小説)
例えば、東でブスが悲しみに暮れていたら、俺はそっと寄り添い、ブスを抱いて眠りたい
例えば、西でブスが自分の境遇に怒り心頭になっていたら、俺はそっと寄り添い、ブスを抱いて眠りたい
例えば、南でブスが喜びにあふれていたら、俺は喜びを分かち合い、祝福し、ブスを抱いて眠りたい
例えば、北でブスが無表情だったら、俺も一緒に無の境地になり、ブスを抱いて眠りたい
俺の名前は 山田一郎
人呼んで ブスコマシ だ
えっ? なんだって? ブスの定義を知りたいって?
OK、いい質問だ
ブスとは…
自分で自分をブスだと思ってたり、自分を大切にできない人間のことだ
自分で自分を美人である とか思えたり、自分を大切にできる人間はそのポジティブなメンタルにより、恋愛、仕事、その他の人生において前向きな結果がでることが多い
しかし
自分をブスである とか 自分なんてどうなってもいい と考えてしまう人間は、そのネガティブな思考により、恋愛、仕事、その他の人生において後ろ向きな結果がでることが多い
だから、俺は、そんなブスを抱きたい
ブスを救いたい
ブスと眠りたい
ブスに撃たれて眠りたいぜ、OH YEAH
顔の作りなど関係ない
自分で自分を認めてあげられない、そんなブス達を今日も俺は抱く
俺に抱かれて心が晴れたブス達はもうブスじゃない
俺は女性が好きだが、男でもどうしても自分に自信が持てない、自分はブスだと自信を失っている人間がいたら、しょうがない、壁に手をついて歯を食いしばれ
うしろからでよければ俺が抱いてやる
さて今日、俺が抱くブスは、シゲオ(58才、男性)だ
シゲオには愛する妻がいる
妻とは幼馴染だった
生まれた家も近所で、お互いの両親が仲が良かった関係で、小さな頃からいつも妻と2人で遊んでいた
ただ単に家が近所だから遊んでいたのではなく、妻とは驚くほど気があった
普通は成長していくにつれて、男同士、女同士、の友達とのほうが仲良くなっていくと思うが、シゲオと妻はいくつになっても1番の親友だった
シゲオも妻もお互い、いつも一緒にいたくて、妻の女の子の友達のグループにシゲオがひとり加わるような形でいつも遊んでいた
最初は他の女の子達も違和感を感じていたようだったが、シゲオはすぐにグループに溶け込んで楽しく過ごしていた
シゲオと妻は幼稚園、小学校、中学校、高校、大学と同じ学校に進み、その中でごく自然にお互いに恋心を抱いて、交際へと発展していた
ドリームズ・カム・トゥルーの未来予想図IIを地で行くような2人の関係をまわりは羨み、自分達もその気になってブレーキランプを5回点滅してア・イ・シ・テ・ルのサインを送るような甘い交際の末に結婚をした
子宝にも恵まれ、その子供もひとり立ちをして家を出ていった58才の夏、シゲオは自分の中にずっと抱えてきた違和感に向き合った
今まで、妻との幸せを壊さぬように目を背けてきた自分自身の内面と向き合った
シゲオは子供の頃から、可愛いものが好きだった
だから、いつも可愛いらしい格好をしていた妻が羨ましかった
シゲオは妻がスカートを履いているのが羨ましかった
シゲオは妻が三つ編みをしているのが羨ましかった
シゲオは妻が成長期に胸が膨らんでいくのが羨ましかった
シゲオはウェディングドレスを着ている妻が羨ましかった
シゲオは結婚して子供が生まれて、妻と3人でショッピングモールにいったときに、自分は青いマークがついたトイレ🟦にいかなくてはならないのに、妻は赤いマークのトイレ🟥にいくことができるのが羨ましかった
自分でも気がつきながら、目を背けていた違和感に向きあい、はっきりと自覚した…
そう…シゲオは女の子だった
シゲオの中身は女の子だったのだ
だから、シゲオは女の子のグループに違和感なく溶け込めたのだった
シゲオは自分の内面が女の子だったことにはうすうす気がついていたのだが、今とは違ってそういうことをカミングアウトしにくい時代だったのと、妻に恋心を抱いていたことにより、自分が女の子だという確信が持てなかったので目を背けてきたのだった
子育ても終わり、定年も見えてきた58才の夏にシゲオはついに本当の自分と向き合った
徹底的に自分と向き合った結論は、自分は女の子ではあるが、妻を愛しているという結論だった
幼い頃から妻しか好きになったことのないシゲオは、妻以外では男性が好きなのか、女性が好きなのかはいくら考えてもわからなかった
向き合ってしまい、結論を出してしまったシゲオは、愛する妻にそのことを隠しておくことはできなかった
シゲオはすべてを妻に告白して、ありのままのシゲオを受け入れてもらうために、もう1度プロポーズすることを決めた
言葉では上手く伝える自信がなかったので、シゲオは手紙を書いた
これまでの感謝、そしてこれからもずっと ア・イ・シ・テ・ル ことを…
妻が買い物にいっている間に、シゲオはこの日のために用意しておいた純白のウェディングドレスに身を包んだ
帰宅した妻はウェディングドレス姿のシゲオを見て
「イヤー‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼」
と叫んだ
シゲオが何を言おうとしても妻は叫び続けて拒絶した
受け入れてもらえなかった
失意のどん底に落ちたシゲオは、目の前が真っ暗になり、フラフラと当てもなくさまよい、気がつくとウェディングドレス姿でビルの屋上にいた
もう、消えてしまおう…
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俺は屋上の転落防止用の柵を登ろうとしているシゲオの体をお姫様抱っこの形で腕に包みこんだ
「なにするんだ」
「おいおい、それはこっちのセリフだよ、アンタ、こんな屋上でなにしてるんだよ」
「いいから、私のことはほっといてくれたまえ、もう私には生きる希望はないんだよ‼ そもそも君は誰なんだ⁈」
「俺かい? 俺の名は山田一郎 人は俺をブスコマシと呼ぶ アンタのような心がブスになっている人間をコマシて生きてる男さ」
「誰だか知らんが、私をほっといてくれたまえ‼私はもう生きる希望がないんだ」
「生きる希望がない? じゃあなんでアンタの心臓はさっきからドキドキしてるんだよ⁈ 初めて着たウェディングドレス姿でお姫様抱っこされて、アンタ、ちょっと、ときめいちゃってるんじゃないのかい⁈」
「そ、そんなことないもん…」
俺は腕の中でお姫様抱っこをされながら頬を染めているシゲオのベールをめくって優しくキスをした
「なあ、シゲオ、どうせ生きる希望がないならば、死ぬのは明日にして、俺とひと晩ともにしてみないか?」
シゲオはゆっくりと頷いた
ウェディングドレス姿のシゲオをお姫様抱っこしながら、リッツ・カールトンのスウィートに向かおうとした俺に誰かが叫んだ
「待って‼ シゲオを連れていかないで‼」
シゲオの妻だった
「アンタはシゲオを拒絶したんじゃなかったのかい?拒絶したなら俺がシゲオをコマシても関係ないだろ?」
「拒絶なんてしてない‼ 私はずっと昔からシゲオの中身が女の子なのは気がついていた‼ だから、いつかシゲオが私のもとから去っていってしまうかもしれないって、ずっと不安だったの…だから、今日、シゲオのウェディングドレス姿を見て、ついにシゲオが去っていってしまう日がきたと思ったの…でも…シゲオの手紙を読んで、これからも私をア・イ・シ・テ・ルと言ってくれたから、私の未来予想図には今も昔もずっとシゲオがいることを伝えたくて探してたの‼」
シゲオは涙を流しながら妻の言葉を聞いていた
そして小声で
「ごめんね、ブスコマシ、あなたのことは忘れないよ でもあなた、タクシーにも乗らないでずっとお姫様抱っこで大通りを歩いてたのは、妻が私を見つけるまで待っててくれてたんでしょ? ありがとう、生まれて初めて妻以外の人にドキドキしたよ」
と言って俺の腕をすり抜けて、妻のもとに戻っていった
《やれやれ、今回はブスをコマさないですんだな》と思いながら、ブスコマシは帰りの車でブレーキランプを8回点滅させた
シ・ア・ワ・セ・ヲ・イ・ノ・ル
(完)
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この掌編小説を読んだ方は、暇な時に
ジャングルスマイル というグループの
おなじ星
という曲をユーチューブ等で聞いてくれたら嬉しいです
その曲にでてくる
《たとえあなたが女に生まれていたとしても、私の心は必ずこの場所たどりついてるわ》
という歌詞がとても好きなのです
しかし、私はユーチューブを貼り付けません
申し訳ありませんが、SNS初心者の私は貼り付けて良いかのかどうかわからないのです、押忍🌊🌊🌊
(追記) SNS初心者の私のかわりにくいたろうさんが、リンクを貼ってくれました😄
この記事のくいたろうさんのコメントから、ジャングルスマイルの おなじ星 という曲に飛べます😄
とてもいい曲なので聞いてくれたら嬉しいです🌊🌊🌊
ブスコマシはシリーズ物です
良ければ、しっかりブスをコマしている回のブスコマシも読んでみてください
