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掌編小説 カウンターパンチ

落ち着いた雰囲気の店内からのぞくウィスキーの種類の豊富さがこの店のお酒へのこだわりをにじませていた

飛び込みで入ったにしては当たりの店だ

ツマミも定番のコーンスナックやナッツだけでなく、乾燥ホタテの貝柱も置いてある

フフフ…よくわかっているじゃないか

10年以上の熟成のバーボンにはホタテの貝柱がよく合う

ちょうど一杯目のバーボンを飲み干したときに、バーテンダーが私のアゴを右ストレートで打ち抜いた

手にはボクシンググローブがはめられていた

不意を突かれた私は床に転げ落ちた

即座にカウントがはじまる

ワン…ツー…スリー…フォー…ファイブ…シックス…セブン…エイト…

カウントエイトで立ち上がった私は

[いきなりなにをするんだ‼]

と言うと、バーテンダーは

[カウンターパンチです]

と言って微笑んだ

[カウンターでパンチをすることを断じてカウンターパンチとは呼ばない‼] 

と私が怒鳴ると、バーテンダーは

[あちらのお客様からです]

と言って微笑んだ

私は何がなんだかわからなかったがバーテンダーがあちらと言った方向を見た

私がよそ見をした、その瞬間にバーテンダーはボディーの連打を叩きこみ、私のガードを下にさげさせてガラ空きになった顔面に渾身の右ストレートを叩きこんだ

私は朦朧とした意識の中でその連打が確かに私が教えたものであることを感じとっていた

私はバーテンダーに

[…お前は、ストロング田中か…]

と言うと、バーテンダーは

[ようやく気づいたか]

と言った そして

[俺はお前のせいで人生が台無しになった だから、いつかお前に復讐しようと思って顔を整形して待ち構えていたんだ]

と言った

_____

私は以前ボクシングジムを経営していた

それも 噛ませ犬 専門のジムだ

噛ませ犬 とは 世界チャンピオンに駆け上がっていくような実力のあるボクサーにちょうどケガをさせない程度に抵抗して負けるようなボクサーの事だ

無論、噛ませ犬側にもメリットはある

万が一、実力のあるボクサーに勝ったら、そのボクサーが保持しているベルトやランキングが手に入る

しかし、現実にはそんな事は滅多に起こらなかった

しっかり実力のあるボクサーが勝つのが常だった

次第に噛ませ犬くらいの実力のボクサーは強いボクサーとは戦わなくなっていった

結果、ボクシング界は深刻な噛ませ犬不足におちいっていった

そんな 犬不足 に目をつけたのが私だった

私は商売として 噛ませ犬ボクサー を育て、大手のボクシングジムに営業をかけて、しっかりとした報酬をもらってしっかりと負けるシステムを構築した

もちろん、噛ませ犬としてしっかり負けてくれたボクサー達にも十分な報酬を支払っていた

そんな日々の中で出会ったのが ストロング田中だった

ストロング田中には才能があった

噛ませ犬ではなく、本気で世界を狙える才能があった

ボクシングを商売として捉えて、噛ませ犬を作っていた私の心の奥底に眠っていたボクシング愛をストロング田中は呼び起こしてしまった

私は噛ませ犬を育てる事業をやめて、ストロング田中を世界チャンピオンに育てる夢に心血を注ぐことを決めた

それをストロング田中に伝えると、本人は猛反対した

ストロング田中は世界チャンピオンを目指すという、一か八かのようなギャンブルをせずに、着実に噛ませ犬として稼ぎたいと言った

噛ませ犬として稼いだお金で将来は自分の バー を開きたいと田中は言った

私は必ず世界チャンピオンにしてみせるとストロング田中を説得して2人3脚で夢を目指した

噛ませ犬事業 とは違い、世界チャンピオンになるまでは普通のファイトマネーしか貰えないのでジムも田中も困窮を極めながら努力した

最初は乗り気ではなかった田中も、やはり根っこはボクシングを愛するファイターだった

技術、戦術、精神、私が教えられるものすべてを田中に徹底的に叩きこんだ

田中は苦しみながらも1つ、また1つと着実に世界への階段を駆け上っていった

田中は試合で追い詰められば追い詰めらるほど、私が教えた基本の戦略を忠実にこなした

自分が苦しいときは、相手も苦しい 
試合で苦しくなった時は派手なパンチはいらない

ボディ、ボディ、そして相手の意識を下に向けさせて、顔面へ右ストレート…

苦しくなればなるほど、田中は私が教えた原点を守り、勝ち抜いていった


それから数年が経ち、ついにストロング田中は世界戦へとたどりついた

世界戦は壮絶を極めた

お互いダウンを3回つづ奪い、精魂ともにつきようとしていた

次の攻防を制したもの、次にフィニッシュブローを当てたものが試合の勝者になる…誰もがそう予感した最後の攻防で田中は意識をほとんど失いながらも果敢に攻めた…

そう…もはや意識のない田中から繰り出された私との原点…

ボディ、ボディ、そして相手の意識を下に向けさせて、顔面へ右ストレート…
……
…………
……………
………………を打つと勝ってしまうから、ワザと空振りして相手のパンチを顔面に受ける…


ほとんど意識を失った田中がしぼりだした原点は、噛ませ犬としての練習だった…


田中…戻りすぎだ…田中…原点に戻りすぎだ…噛ませ犬時代の練習までさかのぼってどうするんだ、バカ…


世界戦を負けた後、田中はそのまま引退し、私はしばらく噛ませ犬事業を復活して小金が貯まってからジムをたたんだ
  
___

私は 田中に

[夢が叶って良かったな いい バー じゃねえか]

と言った すると田中は

[どこがいいバーだ  俺は高級なお酒を取り揃えたオシャレなバーが開きたかったんだ  だけど、お前が噛ませ犬をやめさせたせいで、資金が足りなくてこんな ハプニングバー しか開けなかったんだ]

と言った 私は

[たとえ ハプニングバー だとしてもお酒の種類は豊富にあるじゃないか]

と言うと、田中は

[あれは、ほとんど空ビンだ 置いてあるのは、お前の好きなバーボンだけだ ]

と言った 私はよく意味が理解できなかったが田中は続けた

[このあたりに ハプニングバー を出せば、根っからのスケベなお前は必ずくるだろう その時にお前の好きなバーボンがあればお前は油断する その油断している隙に復讐の右ストレートを叩きこもうと、俺は整形までしてお前を待ち構えていたんだ]

と言った 私はよく意味が理解できなかったが田中は続けた

[毎回、空のビンを見て、酒の種類が豊富だと思ったた他のお客さんがバーボン以外を注文した時に  あれは飾りなのでバーボン以外のお酒はおいてないんですよ そんなことより、店の奥で皆さん、スケベなことで盛り上がってますよ と言うのがどれだけ面倒くさかったか]

と言った 私はよく意味がわからなかったが田中は続けた

[それも今日で終わりだ 整形までして待っていた甲斐があった 俺は今日復讐を完結する]

と言った 私は田中と会話している時にだんだん昔の田中の顔を思い出してきていた

目の前の田中は昔の田中と比べて、まぶたが一重が二重になっていた それ以外は特に変わっていなかった

まじまじと顔を見ていた私に田中は

[さあ、お遊びはここまでだ、整形までして…]

と言ったところで私は我慢できずに言った

[お前、整形、整形って言ってるけど、目が二重になっただけじゃないか]

と言うと田中はワナワナと震えて

[ヒアルロン酸も注入してるから、シワやほうれい線もないでしょうが‼] 

と言った そして怒りに任せて狂ったように殴りかかってきた

私も応戦して壮絶な打ち合いになった

店内の他の客や従業員は、ハプニングバー なのでそういう性癖の2人だと思いながらニヤニヤしてその様子を見ていた

結果は私の勝利だった  

壮絶な打ち合いの最後の最後、ほぼ意識を失いかけた田中はワザと空振りをした

意識を失いかけた田中はやはり原点である 噛ませ犬 に戻ってしまった そこに私が カウンターパンチ をお見舞いしたのだった

整形した田中が顔を腫らしながら床に倒れている…

私は頭の中で

これが本当のダウンタイムだな


と思いながら店を出た



___________


Xを始めました

フォローやいいね的なことをしてくれたら、ウェルビーイングです

初心者なので、まずいことを書いたら訴えられるのではないかという恐怖でいっぱいなので、しばらくは練習としてウエスト減らし隊で書いていたような 体重の増減を書いてみます

オッサンのダイエットのつぶやきを誰が見るかって?

まあ、最初は練習だから温かい目で見てくれたら幸いです



あっ、あとXに私のなりすましがいます

noteと連携しているものが本物なのでよろしくお願いいたします

なんでこんな無名なのに、本物より先になりすましがXをやっているんだ🌊🌊🌊

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